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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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青空にほんわり浮かぶ満開の桜はどこか清々しくて可憐な感じですが、暗闇にぽっかり浮かぶ桜は妖艶な雰囲気を隠しています。
桜って、一日の中で何度もその表情を変えます。
太陽の光に揺れる桜も好きだけど、夜桜も美しいです。

それに、真昼間のお花見ってなんとなく健全にしなくちゃいけない気がして、とても酒をかっ食らうなんてできません。
その点、夜桜の花見はちびりちびりでもごくごくでもお酒が欲しくなります。
特殊部隊の花見は……きっと夜だよね、笑。


『fairy of the night cherry blossoms』
堂郁   戦争~内乱   その香りを抱きしめる。


夜風が運ぶ湿った山の香りに桜の香りが混じる。
昼間はさらさらと乾いた春の香りに感じた香りも、しっとり濡れている。

まるで、お前のようだな。

堂上は腕の中で小さな寝息を立てる郁に、そう呟いた。



今夜は、奥多摩演習最終日恒例の打ち上げだ。
ちょうど季節は春。
奥多摩にも遅い春がやってきて、演習場を取り巻く桜はちょうど満開。
花も見ごろだった。
花より団子の特殊部隊の飲み会ではあるが、あるならばそれに越したことはないと今夜の打ち上げは演習場にシートを敷いて「お花見」と呼ぶにはいささか騒がしすぎる打ち上げとなった。

どんなに騒いでも、どんなに羽目を外しても、注意するもののいないこの地での飲み会では、面白いように酒が進み、面白いように隊員がつぶれていく。
つぶれてしまえば、後始末など考えなくていい。
だからとあっさりつぶれてしまう隊員も多い。
しかし、堂上のようにいくら飲んでもなかなかつぶれることのできないものは、結局つぶれた者から飲み会の後始末まで、すべてをこなさなければならなくなる。

残るのはいつもと変わらぬメンバーで。
文句を言っても始まらない、といい時間で、さっさと片づけを始めた。

暖かくなったとはいえ、奥多摩の夜は冷える。
天気のよい日などは遅霜の心配もある。
飲んで火照った体にはシートの上にコロンと転がって眠るのは気持ちのいいことだが、明日は奥多摩を撤収して帰還しなければならない。
体調を崩されては、今夜同様自分たちが働かねばならなくなる。
堂上たちは、つぶれた隊員を担ぎ上げては宿舎に運んだ。

人間の次は、散乱したごみの始末だ。
これまた手馴れた手順で、あっという間に演習場は元通りになった。


「お疲れ。いやあ、やっぱり奥多摩の打ち上げはすごいね」


堂上同様につぶれることのない小牧が最後に残ったごみ袋の口を縛った。


「まったく。たまには、羽目を外さずに飲めんのか、うちの連中は」

「無理だよ、堂上。武蔵野ではここまでやったら、非難ごうごう、苦情の嵐だよ。これでも、俺たち図書隊は模範市民だからね」

「ちくしょう、この次は俺もつぶれてやる!」

「そりゃ無理だよ。お前がつぶれたら、どうすんの?」


にやり笑って、小牧は顎で演習場の端を指した。


「あれが最後だから。堂上、よろしく」


そういうと、小牧はさっさと宿舎へと向かった。
その背中に苦笑して、堂上は慌てて演習場の隅へと駆け寄った。

小牧に「あれ」と指された演習場の端には、郁がいた。
隅の桜の古木に寄りかかって、夜空を見上げていた。

相変わらず堂上の厳しい酒量規制を受けて、缶チューハイ一本で頬を桜色に染めた郁は、手伝いの邪魔だと言われ拗ねていたのだ。
つぶれていないとはいえ他人を介抱できるほどの状態ではない。
さっさと部屋に戻ればいいものを、なまじ意識があるために素直に従わない郁を、かと言って他のヤツに任せられず、この場所に追いやったのは、誰でもない堂上だ。
つぶれた隊員を介抱しながら、常に堂上の視線はここに向いていたのだ。

満開の桜の下で、夜風にはらはらと舞い落ちる花びらを郁はただ眺めていた。


「おい、起きているか?」

「おきてますよーだ」


べーと舌を出して、郁が返事を返した。
しかし、次の瞬間にはくるりと表情を変えて、桜の古木をふわり見上げた。


「きれいですね。毎年毎年、こんなにきれいに咲いてるんですね」

「この演習場で一番古い桜らしい」

「そうなんですか」


郁は、桜の幹をいとおしげに撫でてはらはら舞い落ちる花びらに手を伸ばす。
一陣の風に遊ばれて、その花びらが郁の手をすり抜ける。
酔った身体はその瞬間バランスを崩して倒れそうになった。
堂上が慌てて郁の身体を抱き寄せた。

アルコールでほんのり色づいた頬。
夜風の遊ばれて乱れる髪。
そして、あたりを包む桜の香り。

昼間に見せる爽やかな春の香りと同じはずなのに、夜桜の香りは濃厚だ。
重さすら異なるのではなかろうかと思えてくるほど、夜の香りは重い。

その香りに包まれて、郁は堂上の肩越しに夜桜を仰ぎ見た。
わずかな身じろぎで、ふわりと郁の香りが夜の香りに混ざる。
堂上は深く息を吸い込んで、郁と同じように夜桜を仰ぎ見た。


「教官、来年も一緒に桜見ましょうね」


桜を見つめたまま、郁は囁いた。


「ああ」


堂上が頷くと、こてんと肩に郁の頭が落ちてきた。


「来年も見に来られるように、励めよ」


郁の頭をぽんとした。

いつものように「はい」という返事を待っていると、堂上の耳に返ってきたのは「すーすー」という小さな寝息だった。
冷えていた身体を堂上に包まれて暖かくなり、急に眠りに落ちたのだろう。


「まったく、お前ってやつは……」


堂上は苦笑いして、郁の頭をもう一度ぽんとした。


fin.


あとがき
春です!桜です!
日本人の DNA  のなせる業なのか、桜はどうしたって愛でたくなります。
切花になりにくいからかな?
咲き始めも、満開も、舞い散るさまも、どの桜も同じなのに違って見えてすてきです。

きっと奥多摩の演習場のまわりにも桜が植えられていそうだな、と思って書きました。
公共の場には桜がつき物じゃないですか、笑。
でもって、この時期に演習訓練していそうだなって思って。
新人くんが入隊する前の、隊員の自己啓発ってことで。

で、お決まりのように最終日の夜は打ち上げです。
訓練に行くときは、荷物に宴会用の酒つまみが一山用意されてます。
豪快な打ち上げで、郁ちゃんもお酒たくさん飲みたいなあって思ってるんだけど、堂上さんは許しません。
なので、ほろ酔いでふらふらするんですよ。
「いいわよ、あたし一人で夜桜見物するから」とか拗ねてそうです。

設定時期ですが、堂上さんが必死で鍵かけてる時代です。
郁ちゃんはまだ教官としてしか見てない。
堂上さん、いろいろな表情を見せる郁ちゃんに試されてます、笑。

久しぶりに書いたら、郁ちゃんも堂上さんも原作とかけ離れたキャラになってしまいました。
オンリーでいろいろな方とお話させていただいて、いろいろなキャラ像をうかがったせいだと思う。

読んでくださってありがとうございました。
感想などお待ちしています。
今年はどんなお花見をされましたか?

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