忍者ブログ
図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
2024-041 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
prev 03 next 05
149  148  146  145  132  144  140  136  131  134  118 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

体調のご心配をいただきまして、ありがとうございます。
ぼちぼちゆっくりですが、復調してます。
こんなに寒かったっけ?と思いつつ、暖房を我慢して震えてます。
どこまでも貧乏性な自分に苦笑です。

夜のお散歩でお邪魔してしまう某所で、お話していたものを書いてみました。
ぷぷぷ、と笑ってくだされば嬉しいです。
なんだか人が変ったような気がしても、それは気のせいということにしておいてくださいね。


『Combat Without a Code』
手塚兄弟  別冊Ⅱ後   楽しいねえ。


メールチェックをする手塚が渋い顔をした。
メール送信者に、兄の名があったからだ。

手塚が柴崎と結婚するとき、兄の慧とは一応仲直りはした。
お互い、というか、一方的に手塚にはまだ大きなわだかまりが残っているのだが、兄慧はそんなことは気にせず、今までの不仲を取り戻さんばかりの勢いで、手塚に近づいてきた。

結婚当初は、メールや電話だったが、近頃は違う。
新居へ直接会いに来るのだ。

手塚と柴崎は、図書基地敷地内にある図書隊の官舎に新居を構えた。
家賃も安いし、職場にも近い。
そして、なにより、友人知人が多いから、実家の離れた柴崎には特に安心できた。

そこへ、兄慧はやってくるのだ。
当麻事件でマスメディアに出たため、図書隊で慧のことを知らぬものはほとんどいない。
「未来企画」の手塚慧が関東図書基地を訪ねるということだけで、なにかあったのかと思わざるを得ないのだ。
慧が通用門に現れると、警衛たちに緊張が走る。

それなのに、兄慧はやってくる。
マスメディアに登場したときと同じように、ぴしっとスーツを着て、有名どころの袋を提げてやってくるのだ。

質が悪いことに、慧からの連絡は事後承諾だ。
基地に到着する直前にメールしてくるのだ。
勤務に重なっているなら断ることもできる。
それなのに、今まで一度も重なったことがない。
柴崎の勤務とも重なったことはない。

どう考えても、関東図書基地内に、未来企画参加者がいるとしか考えられない。
考えられないが、誰なのか突き詰めることは、要らぬことと手塚は割り切っていた。

手塚は深いため息を吐くと、柴崎に兄が来ることを知らせるメールを送った。
返事はすぐに来て、手塚はもう一度深いため息を吐くことになった。

『うん。さっき連絡をもらったわ。今日はおいしいお肉を持ってきてくれるって。すき焼きよ』

お前、そんなもんに釣られるな。

手塚は柴崎には直接いえない言葉を心の中で叫んだ。



帰宅したのは、柴崎のほうが先だった。
テーブルの上には、すでにすき焼き鍋が用意されていた。

部屋着に着替えたころ、チャイムが鳴った。
エプロン姿で、来客を迎えに出ようとした柴崎を制して、手塚は玄関のチェーンを外した。
ドアを開けると、にこやかに微笑む慧が立っていた。


「よかった。光が帰ってて」

「来るって言ったから」

「ああ。柴崎さんだけだったら、廊下で待ってようと思ったんだよ」

「そうか」


こういう細かいところは兄だと、手塚は思った。
ずけずけと踏み込んでくることはしない。
だから、強く拒絶することもできないのだ。


「あがってもいいかな?それとも、もうちょっと待ったほうがいいのかな」

「なんで、待つんだよ」

「ほら、柴崎さんが着替え中だったら、悪いだろう。ああ、光、柴崎さんの着替え手伝うんなら、もうちょっと外で待ってるけど?」

「なんで俺がアイツの着替えを手伝うんだよ、このクソ兄貴」


ああ、うるさい、入れ

手塚は慧の手を引いて、ドアを閉めた。
慧の肩が小刻みに揺れるところを見ると、今の会話は完全に揶揄れたのだろう。
手塚は、歩幅を大きく取って、慧を部屋の中へ通した。


「お邪魔します」


礼儀正しく挨拶をして、慧は柴崎に手土産を渡した。
袋を覗き込んだ柴崎は「きゃっ」と黄色い声を上げて、いそいそと食事の準備に取り掛かった。


「お前、うちに顔出してないのか?」


台所へ向かう柴崎の後姿を見ながら、慧が手塚に尋ねた。
手塚は不機嫌な顔で答える。


「二ヶ月くらい前に行ったきりかな」

「そうか……父さんが『母さんが寂しがってる』と言っていた」

「父さんに会ったのか?」

「ああ。顔出してやれ」

「お前に言われたくない」


慧が穏やかに話しても、手塚の紋切り口調で返すから、会話が続かない。
それでも、以前よりはずっとずっと自然に言葉が出るようになった手塚だった。


慧の持参した肉は有名生肉店のもので、それも店頭には並ばない世間では『まぼろしの牛肉』と呼ばれているものだった。
それを手に入れることができる人脈を慧が持っていることを暗に示していた。
業界を超える人脈。
それはメディア良化法の今後を考えていくうえで、メリットになるのだろう。
改めて手塚は兄の暗躍を思った。

食事中は柴崎がふたりの橋渡しをすることで、和やかに過ごすことができた。
新婚家庭を訪れた、弟思いの兄、の図だ。
時折挟み込まれる手塚の幼い頃の話に、柴崎の興味の矛先は向き、その向きを修正するのに手塚が四苦八苦する。
それを見ている慧が笑う。
今度は相手を兄慧に替えて、手塚が応戦する。

柴崎はふと、穏やかだったころの手塚家の食卓を思った。


食後のデザートにと、柴崎がラ・フランスを剥いた。
日本梨に比べると、色と形の悪さが目立つが、その味はとろりと濃厚だった。


「光、お前、これが食べられるようになったんだな」


兄慧が感慨深げに呟いた。
手塚の顔色がさっと変った。
なにかあると踏んだ柴崎が兄慧に続きを促した。


「あら、あたし初めて知ったわ。光、洋ナシ、苦手だったの?」

「そうなんだよ、柴崎さん。光はねえ、小さいころ、洋ナシが食べられなかったんだよ」

「あたしたちが小さいころも洋ナシってそんなにマイナーな果物じゃありませんでしたよね」

「ちょっと高級な部類ではあったけど、八百屋で売ってたよ」

「そうですよね。ねえ、光、どうして食べられなかったの?」

ねえ、と兄と嫁の両方から見詰められて、手塚はぐっと言葉に詰まった。

ここで答えないと、兄慧が答える。
何を言い出すかわからない。
でも、自分からは言いたくない。

手塚が自問自答している間に、あっさりと兄慧が答えた。


「ほら洋ナシって『ヨウナシ』だろう。食べると自分も『ヨウナシ』になるみたいでイヤだって泣いたんだよ、こいつ」

「そうなんですか。ねえ、光、ほんと?泣いたの?」


またもや、両側から顔を覗き込まれて、手塚は下を向いてしまった。


「茗荷を食うとものを忘れるっていう話あるだろう。それと似てんだよ『ヨウナシ』は」


ぽつりとこぼして、手塚はいきなり顔を上げた。


「あああ、うるさいうるさい。このバカ兄貴。そんな話すんなら、もう来んな」


真っ赤になって抗議する手塚の肩をぽんとして、兄慧はまあまあと微笑んだ。

少しずつふたりの距離が近づくことを柴崎は嬉しく感じた。

だから。
この次に兄慧がここに来るときには、光の幼い頃のアルバムを持ってきてもらおうとひそかに思っていた。
自分の欲求が大きいことは内緒にして。


この日から、しばらくして、手塚は柴崎と一緒に実家を訪ねた。
母が食べきれないほどの料理を作って待っていた。
忙しくて一緒に食卓を囲うことも少なかった父も一緒だった。

ここに兄がいたら……
一瞬手塚はそう思った自分に苦笑した。


しばらくして、兄慧のところに手塚から荷物が届けられた。
中身は『洋ナシ』だった。
メッセージカードには一言『お前がようなしなんだ』と書かれていた。

慧はくすりと微笑んで、いつでも持っていけるようにと用意したアルバムを見た。


fin.

あとがき
『ASTER』の夾ちゃんが、茶会のとき中座して「洋ナシ」を剥いてきたという話題から発生したお話です。
「手塚が兄に『ようなし』って洋ナシを送ったらいい」という話だったと思います(ログ残してないからうろ覚えだけど)で、手塚に子供が生まれたら、兄からはパパイヤが送られてくるんだよ。と続きました。
名付けて『仁義なき戦い』、笑。タイトルはそれの英訳です。

基地内の官舎を訪ねるのは大変だよなと思いました。
だって、警衛さんのとこを通らなきゃ入れないよね。
未来企画の手塚慧がそこを通るんだよ、一大ニュースになるよ。
それでも、お兄さんはかわいい弟に逢いに行くと思います。

くすりと笑っていただけたら嬉しいです。
読んでくださってありがとうございました。

PR
管理人のみ閲覧可
NAME
TITLE
MAIL
URL
COMMENT
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS
TRACKBACK URL 
絶賛応援中
『図書館戦争』公式サイト
プロフィール
HN:
亜生(あおい)
性別:
女性
自己紹介:
関東の片田舎に住む。
典型的 O 型人間。
せっかちなのにのんびりや。
好物はハチミツと梅酒。

カウンタ
メールフォーム
おすすめ
図書館戦争

図書館戦争文庫版

(コミックス)1
図書館戦争
LOVE & WAR




(コミックス)2
図書館戦争spitfire!

(CD、DVD)1
DJCD 関東図書基地広報課 第壱巻   第弐巻

DVD 図書館戦争
(CD DVD)2
実写版DVD

サントラ
(有川先生の本)1
(有川先生の本)2
(有川先生の本)3
(有川先生の本)4
(有川先生の本)5
ブログ内検索
"亜生(あおい)" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.
忍者ブログ [PR]