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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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読書の秋です。
いろいろなジャンルに挑戦したいと思うのですが、ついつい短めのものに走ってしまいます。
読み始めて一気に完結まで読みきれる話でないと、途中で止められないから、笑。
熱中すると寝食を忘れるので、そうすると家族が干上がってしまいますからね。

そんな素敵な読書の秋を『ひび』の日々乃さんが描いてらして、配布されてたので頂いちゃいました。
「読書週間」


日々乃さん、素敵な画をありがとうございます。
お持ち帰りはご遠慮ください。

この絵を見て描きたくなった秋のひとコマです。
書いているうちに、なんだか方向修正が効かなくなってしまって、自分でもアレ~?な感じになってしまいました。
あれ?変だよ、という感想は心の奥に仕舞っておいてくださいませ。


『童話談義』
同期三人組  内乱ころ  童話は奥が深い。


秋だ。
「○○な秋」にはさまざまあれど、やはり図書館は「読書の秋」に落ち着く。
武蔵野第一図書館でも、読書の秋に因んだ催しものを開催している。

通常は、週に一日の読み聞かせ会も週三回の開催となった。
回数が増えれば、それだけ読み手が必要になる。
こういった場合に体よく貸し出されるのが、各部署配属の新人たちだ。

業務部は催し物主催ということで、全員が参加することになっている。
特殊部隊からは、新人と呼ぶには薹が立ちすぎている、手塚と郁が参加することになった。


終業後、読み聞かせの絵本を物色しに、手塚と郁は絵本コーナーに向かった。
読み聞かせでは、絶大な支持を得ている柴崎が一緒に絵本を選んでくれることになっていた。


「手塚、どんなのにする?」

「短いの」


手塚はその答え通りに、先ほどから、薄い絵本ばかりを手に取っている。
郁はというと、絵色がやさしく文字の少ないものを手にしていた。


「お前だって、あんまり読みたくないだろう、絵本」

「まあね。練習したって、突っかかるんだよねー」

「感情を込める台詞なんてごめんだ」


あれこれ手に取るのだが、ピンと心の琴線に触れるものがない。
そこへ、柴崎がやってきた。


「お待たせ。候補は挙がったの?」


オーバーアクションのふたりを見て、柴崎は「そんなことだろうと思ってたけど」と軽く笑った。

柴崎がまず手にしたのは、「さんびきのこぶた」だった。


「知ってる。三人兄弟の豚とオオカミの話でしょ」

「そうなんだけど…あら、これは原作版ね」

「原作版って、そんなにいろいろなパターンがあるのか?」


柴崎は絵本を捲っては、ほら、とふたりに見せる。


「三匹の子豚が、それぞれ家を立てて、最終的には末っ子子豚がオオカミをやっつけてめでたしって話なんだけど。これは原作版だから、一番上の兄さん豚と二番目の兄さん豚はオオカミに食べられちゃうのよ。最後にオオカミも鍋で煮られて末っ子のおなかに納まってめでたしってなるの」

「へえ、生き残るのは、末っ子だけなんだ」

「シビアだな」

「でしょう」


そもそも、童話の中の登場人物は、人間の感情や試練などの象徴とされていて、その登場人物が死ぬのは、それを克服することなのだという。
だから、三匹の子豚では上の兄さん豚が食べられてしまわなければならないのだという。


「この子豚見てると、図書隊と良化隊みたいだね」


郁がページを捲りながら呟く。


オオカミは良化隊だね。
一番上の兄さんは政府だよ。
メディア良化法なんて法案通しちゃったんだから。
二番目の兄さんは書店かな。
頑張って良化隊から本を守ってくれる書店もあるけど無理があるもんね。
ちび子豚は図書隊だね。
オオカミから絶対に本を守る。
いいなあ、最後にオオカミ食べちゃうんだよ。
良化隊、食べちゃえたら、いいよねえ。


「図書隊の夢ね」


柴崎も手塚もそっと頷く。

次に柴崎が手にしたのは「こびとのくつや」だった。
すると、手塚がいやそうな表情を浮かべた。


「手塚、どうしたの?」

「俺、その話、読んでると腹が立つんだ」

「あら、もう読んだの?」

「ああ。俺もストーリーを知っていたから、簡単だと思って見た。ところが、近くによく似たのがいて、読んでてむかむかきて、やめた」


手塚の冷たい視線に郁がぎょっとした顔をする。


「ちょっと、あたし、あんたになんかした?」

「よく読んでみろ」


どれどれと、郁は柴崎から絵本を受け取ってぱらぱらと読んでみた。


貧乏な靴屋に残されたのは一足分の皮。
次の朝、その皮は見事な靴へと変身していた。
その見事な靴はその日に売れ、そのお金で新しい皮を買うことができた。
次の朝、再び皮は見事な靴に。
こうして、貧乏な靴屋はお金持ちになった。
いったい誰が靴を作っているのだろうと、ある晩こっそり靴屋が覗くと、そこには小人が。
靴屋は、小人たちに服と靴を作ってあげて、仲よく暮らした。


「そうだよ、そんな話だよ」

「いい話よねえ」


ほんわりした顔で郁が言うと、手塚はぷいと横を向いた。


「この靴屋って、お前そっくりだよな」

「ちょっと待て。それはどういう意味だ」

「お前が『困った』となる。そうすると、堂上教官や小牧教官、特殊部隊の先輩がわらわらと手助けしてくれて、めでたしめでたしじゃないか」

「いや、堂上教官、ちびだけど、小人じゃないし」

「突っ込むところはそこか」


手塚のあまりの剣幕に郁は一歩後ろに下がった。


「俺が困ることなんてめったにないから、俺には経験ないけどな。お前見てると、この話見てるみたいなんだよ」

「ああ、手塚にも小人さんがいて欲しいってことね。あらやだ、あたしが小人さんになってあげるのにー」


にやにや笑う柴崎に手塚は思いっきりガンを飛ばした。


「あらあ、背丈だってちょうど小人さんよお」


手塚の横に立って、柴崎は自分の頭に手のひらを当てる。
手塚の胸少し上にその手のひらはとんとぶつかった。
手塚の顔にさっと朱が走り、一歩後ろに下がる。
柴崎は、ふふふと極上の微笑みを浮かべた。


「ああもういい。とにかく、この話は読んでるとむかついてきて、とてもじゃないが穏やかに読み聞かせできそうにないから却下だ」


勝てないと端からわかっていても、やはり勝てないとわかると、手塚は猛烈に悔しがった。
明確な理由を見つける前に、さっさと戦線離脱した。


「どうしよう……決まらないよ」


焦り始める郁は絵本棚の本を片っ端から引っ張り出した。


シンデレラ
いばら姫
眠り姫
人魚姫
白雪姫
親指姫


「うわあ、お姫さまばっかり」

「プリンセス志向は根強いからね」

「そうらしいね」

「女の子は『たいてい』お姫様が大好きよ」

「ああ、でもあたしだめー」


郁は引っ張り出した絵本の棚を丁寧に整頓して大げさに空を仰いだ。


「だって、この手のお姫様はみんな、王子様が来るのを待つんだよ。運命に従って生きていくんだよ。自分で自分の人生切り開くこともしないで」


王子様を追いかけて、郁が図書隊に入隊したのは、有名な話だ。
それを実証するかのような台詞に、手塚と柴崎は笑いをかみ殺した。


「なに、その顔は」


ふたりの笑いを堪える必死な形相に、郁が頬を膨らませた。


「ほんと、笠原の言いそうなことだと思ったのよ。あんたがお姫様だったら、じっと待ってることなんかしないで、王子様探しちゃうんでしょうね」

「最強の姫ってキャッチフレーズでもつきそうだな」


笑いを堪えきれなくなった柴崎が堰を切ったように笑い出した。
つられて手塚も噴出す。
そんなふたりを見て、郁はますます頬を膨らませた。


「ちょおっと、ふたりとも失礼だぞ」


上戸の止まらないふたりをそのままにして、郁は隣の棚を物色し始めた。
そして、一冊の本で手を止めた。


しんせつなともだち


幼い頃、郁がよく母親に読み聞かせてもらった絵本だ。

雪の中、こうさぎが食べるものを探しに出かける。
そして、カブをふたつ見つける。
ひとつ食べて、もうひとつをろばに届ける。
ところがろばもたべるものを見つけに出かけていて留守だった。
こうさぎは、カブをろばの家において帰る。
帰ってきたろばは、サツマイモを見つけてきていた。
部屋の中にあるカブを見て、ろばはそのカブをヤギに届ける。
そうやって、カブはヤギからこじかへ、こじかからうさぎへと届けられ、結局こうさぎの元へ戻ってくるという話だ。

人が人を思いやる優しい心に溢れた話が郁は大好きだった。


「あたし、これにする」


郁はにっこり微笑んだ。
柴崎は郁の様子に安心したように息を吐き、手塚に向いた。


「で、あんたは?」

「腹がいっぱいで、もう食えない心境」


気弱な手塚の言葉に柴崎はくすりと笑った。

手塚は先ほどからずっと絵本を眺めては中身を見ているのだが、正直どれもこれも同じに見えて仕方ないのだ。
話の筋が簡単で理解しやすい。
いいことと悪いことが明確になっている。

けれど。
そこで止まってしまうのだ。
深読みしようという意識が働かない。


「いいんじゃないの、それで。そこから何かを感じ取って学んでくれなんて、あたしもおこがましくて言えないもの」

「そんなものか」

「そんなものよ」


少し寂しげな柴崎の表情に手塚は複雑な気分だった。
読み聞かせの奥深さを知った手塚だった。


「ねえ、手塚。そんなに悩んでるなら、いっそこれなんか読んでみない?」


柴崎が差し出したのは、手塚も何度か手にしたことのある絵本だった。


100万回生きたねこ
100万回も死んで生き返ったねこの話。
たんたんと進む話の結末は、悲しくもあり優しくもある。


「どっちかっていうと、大人向けなのよ、この絵本の内容は。まあ、読み聞かせのお母様対応ってことで、よろしくね」


柴崎は意味深な微笑みを手塚に送った。

そうなのだ。
読み聞かせは幼児対象イベントとなっている。
当然、聞くのは幼い子供たちだ。
その幼い子供たちは一人で図書館に来るわけではなく、必ず親、特に母親と一緒に来館する。
この母親たちがネックなのだ。
読み聞かせを聞く子供たちの後ろで、おしゃべりの花を咲かせる。
時にその声は、読み聞かせの妨げになり、図書館員が注意することになる。
それでも、止めないのが近頃の主流だ。

ところが、そのおしゃべりが止むときがあった。
それは、比較的若い男性館員が読み聞かせを行ったときだった。
幼い子供は、どちらかというと女性館員を好む。
ところが、母親たちには男性館員のほうが受けがよい。


聡い柴崎は、すでにそれを見込んで、特殊部隊からの応援員を手塚にしてくれるよう、裏手配をしていたのだ。
知らないのは、手塚本人だけだ。

ぱらぱらと絵本をめくって内容を確認した手塚は、そんな裏があるとは気付かずに「まあ、いいんじゃないか」とその本を読み聞かせることにした。


読み聞かせのイベントは大盛況で終了した。
郁の読んだ「しんせつなともだち」を聞いたこどもたちの間では、友達に自分の大切なものを渡していく遊びが流行った。
手塚の読み聞かせの回は、しんと静まり返っていて、ただ手塚の淡々と読む声が児童室に響いていたという。
真剣に聞き入る母親たちの後ろで、柴崎がうっとり手塚を眺めていたことなど、誰も知らない。



fin.


あとがき
大好きな絵本があります。
幼い時の記憶は、絵本のたった1ページの絵だけだったりします。
大人になってから好きになった絵本もあります。
絵本はすごく贅沢な読み物だと思います。
目で楽しんで、耳で楽しめる。もちろん、声でなくても脳内で世界が広がります。

手塚は、どちらかというと絵本は苦手部類だと思います。
でも「業務」だから仕方ないとがんばります。
郁ちゃんは絵本は大好きだと思います。
読むのは苦手だけど。
時々キャラ読みしちゃって、子供たちに「郁ちゃん、その台詞、違ってるー」って突っ込まれてるよ、きっと。
柴崎は100万回生きたねこが大好きだと思います。
100万回生きたねこみたいに、最初は誰も好きにならないわ、と思ってる。
でも、最後は白いねこに逢えることを願ってる。
ちょっとロマンしてみました。

みなさんのお好きな絵本のお話も聞かせてくださいね。
読んでくださってありがとうございました。
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