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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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オンラインアンソロの本日の更新は『弁当戦争』です。
詳細は、オンラインアンソロでご覧くださいませね。
どなたのお弁当も見事!おいしそう!らしいものばかりです。

私も参加させていただいきました。
2作ほど…
で、本当はもう一作参加予定だったんですが、送付が遅れてしまったのでそのままになってしまいました。
なので、勝手にここで『弁当戦争~番外編』と銘打って、協賛参加させていただきまっす!

せっかくなので、SS つけちゃいました。

『ちゃんと食えよ』
手柴  新婚時代  ちゃんと食えよ。



ごろん、と寝返りを打つ。
カーテンの隙間から差し込む日の光に、時間を感じる。

ぼんやりした視界。
ぼんやりした思考。
ぼんやりした感覚。


柴崎はゆっくりと起き上がった。


****


忙しかった。
とにかく忙しかった。
秋の読書週間の準備でただでさえ忙しいところに、情報部の仕事も立て込んでいた。
読書週間の準備は、業務部の誰かに頼んでしまえばなんとかなるが、情報部の仕事はそうはいかない。
柴崎本人のみがアクセスできる秘密裏な情報を扱っているからだ。

季節は、夏から秋へと移ろいでいく。
残暑かと思っていると、朝晩の冷え込みは深秋のもので、油断するとすぐに体調を崩してしまう。

忙しかった柴崎が油断したのは、仕方のないことだろう。
湯上りに小さな咳をしたかと思ったら、次の朝にはごほごほと深い咳へと変っていた。
微熱だった熱も、その日の夜には、高熱になった。


「ごめんね…なんとか仕事はしてきたんだけど…」


調子の悪そうな、真っ青な顔をして業務をしていた柴崎が、今は真っ赤な顔で荒い息をしている。
覗き込んだ手塚は、自分のほうが苦しげな表情を浮かべた。


「無理するからだ。今日だって、休めって言っただろ」

「それはだめ。あたしでなきゃだめだったから」


情報部の仕事のことは手塚にも秘密だ。
たとえ夫婦であっても、仕事は仕事と割り切っている。
手塚もそのことを承知しているから、それ以上は言わなかった。


「俺、あしたから奥多摩演習でいないんだぞ。その間…」

「大丈夫よ。薬飲んだし、あしたは休むから」

「なにが大丈夫なんだよ。そんな熱い体してて」


いつもならば、手塚の言葉にその十倍も返すだろう柴崎も、ただ苦しそうな息をして微笑んでいた。
手塚は、柴崎のおでこに貼った冷却シートに自分の手を重ねた。
柴崎はその手に、熱で熱くほてった自分の手を重ねた。


「ごめんね。あした、お弁当持ちだったんだよね」

「平気だ。コンビニででも買うから」

「ごめんね。作ってあげるって約束してたのに」

「こんな状態で作られたら、返って迷惑だ」

「ひどっ!迷惑だなんて、よく言えたわね」

「作って、熱上がって倒れても、俺いないんだぞ。そこんとこ、よく考えろ」

「…そうね、光、いないんだもんね…」

「そんなこと考えないで、寝ろ。寝て、早くよくなれ。でないと、俺が困る」

「うん、わかった」


静かに柴崎は目を瞑ると、そのまま眠りに落ちていった。


****


ダブルベッドの反対側に手を伸ばす。
いつもならあるぬくもりが、今日はない。


「もう出かけたんだ」


奥多摩演習の出発は、通勤渋滞を避けるために朝が早い。
時計の針は、まだ出勤時間には早い時刻を指していた。

薬の効果か、多少昨夜よりは熱が下がっている。
ふらつく足元で、ゆっくりとリビングに入った。

テーブルには柴崎の弁当箱があった。
弁当箱の上にはメモが一枚。
見慣れた文字が、律儀に並んでいた。


『麻子へ
おはよう。熱は下がったか?
今日は休むと言っていたけど、ちゃんと休めよ。
俺の弁当を作るついでに麻子の分も作りました。
大学芋は堂上家からの差し入れ。笠原の自信作だそうだ。
あとは冷凍庫を漁った。
ちゃんと食えよ。俺も食うから』


弁当箱のふたをそっと外す。
おかずをひとつひとつ見た。

手塚が好きなえびグラタン。
作ったときに、弁当用に小さなカップに入れて冷凍しておいたもの。

ミートボール。
これも作ったときに、小分けしておいたもの。

チキンナゲット。
たぶん、夕べの晩御飯。
もしかしたら、柴崎も食べられるかもしれないと、取っておいてくれた分かもしれない。

堂上家の大学芋。
笠原の実家から新いもが届いたのだろう。
郁が張り切って作る様子が思い浮かんだ。

青菜ごはん。
手塚は嫌いな梅干が乗っている。
きっと手塚のご飯には乗っていない。


「まあまあ、うまいんじゃない」


呟いて、柴崎はあることを思い出した。
高校時代、兄のことで気を病んだ手塚の母が体調を崩し、家のこと一切合財を手塚がやっていたことを。
食事の仕度もやったと聞いたことがあった。


「そっか。あいつ、できたんだよね」


ぽろぽろと涙が出た。
嬉しいのか、切ないのか。
感情なのか、熱のせいなのか。

ぼんやりする頭で、柴崎は手塚が作ってくれた弁当を見つめた。
ぽろぽろと止まらない涙を拭いて、柴崎はぽつりと呟いた。


「あたし、きっと嬉しいんだわ」


柴崎はメモをぎゅっと抱きしめた。





あとがき
↑のお弁当、右が麻子さん、左が手塚のです。
手塚光作です。

手塚はきっと器用に家事をこなせると思います。
弁当だって…たぶん。
風邪ひいて具合が悪い人にこのお弁当を「食え」っていうのはどうかと思ったんですが、放っておくと麻子さん、なにも食べないんじゃないかって心配だったんだと思います。
自分が作ればイヤでも食べるんじゃないかって。
愛情こもってます、たっぷりと。

体調が悪いとき、特に熱があるときの思考回路って、涙もろい方向に振れませんか?
なんでもないことにぽろぽろと泣いてしまいませんか?
元気な麻子さんだったら嘲笑しちゃうようなことでも、すごっく感動します。
でもそんなこと、手塚には絶対に教えない。

ひとつだけお詫びを。
えびグラタンは既製品です。冷凍食品です。ごめんなさい~!

ぜひぜひオンラインアンソロの弁当戦争へも行かれてくださいね。
おなかがくるるって鳴いちゃうくらいおいしそうですから!

楽しんでいただけたらすごく嬉しいです。
感想などお待ちいたします。
読んでくださりありがとうございました。

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無題
きゃー!!
手塚の愛情弁当だー!!
すごく素敵ですねー。
確かに、柴崎は一人で体調悪いと食べなさそうです・・。
お弁当は手塚の優しさがあふれてる上においしそうですvv
ご飯に梅干しのくだりもすごく素敵でしたvv
なんだかお腹空いてきました(爆)
おいしいお話ごちそうさまでした~vv
EDIT
at : 2008/10/11(Sat) 14:10:26
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プロフィール
HN:
亜生(あおい)
性別:
女性
自己紹介:
関東の片田舎に住む。
典型的 O 型人間。
せっかちなのにのんびりや。
好物はハチミツと梅酒。

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