図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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秋の入り口です。
すっかり涼しくなってしまって、うっかりすると寒くすら感じます。
自分の体温で精一杯だった夏がうそのように、人肌のぬくもりが恋しい。
そんな秋の一夜の風景。
『Warmth of back』
堂郁 新婚時代 貴方を背中に感じる。
すっかり涼しくなってしまって、うっかりすると寒くすら感じます。
自分の体温で精一杯だった夏がうそのように、人肌のぬくもりが恋しい。
そんな秋の一夜の風景。
『Warmth of back』
堂郁 新婚時代 貴方を背中に感じる。
「うわあ、すずし~い」
風呂から上がった郁は、窓辺へと近づいた。
窓から入り込む風は、さらさらと、身体にこもった熱を冷ましていく。
郁はそのまま、ぺたんと床に座った。
肩にはバスタオルをかけたまま。
髪からしずくがぽたりとたれる。
よく乾いたタオルは、その滴を音もなく吸い取っていった。
晴れれば、昼間は夏の暑さを思い出させるのに十分な気温になる。
今日も真夏日にこそならなかったが、暑かった。
動くとじっとりと汗ばんだ。
それがうそのように、今は涼しい。
纏わりつく空気が、さらさらと、身体をすり抜けていく。
その代わり、どこか心細い。
身体に纏わりつくものがなくて、ぽつんと自分ひとりいるようで。
窓から夜空を見上げれば、ぽっかりと月が浮かんでいた。
「…く、おい。郁」
名を呼ばれて、ふと我に帰る。
声がした頭上を見上げると、堂上が心配そうに郁を見つめていた。
「そんなところにいつまで座っている気だ」
教官時代からずっと変らない真摯なまなざし。
いつも心配ばかりかけて、何度この目に見つめられたかわからない。
そして、それは結婚してからも変らない。
「風が気持ちよかったから」
「気持ちいいを通り越して、すっかり冷え切ってる」
肩にかけたバスタオルは、郁の髪から落ちた滴で濡れ、冷たくなっていた。
風呂上りには、じわりにじんだ汗もすっかり引いている。
さわりと、郁の頬を掠めていく風は、時々鋭いエッジを見せ始めていた。
「ほんとだ…昼間はあんなに暑かったのに、夜はこんなに涼しいんだね」
「秋だな」
「うん」
風を頬に受けていた郁は不意に背中にぬくもりを感じた。
よく知っている、ぬくもりだ。
ゆっくりと背中へと体重をあずける。
まるで、郁の身体に誂えたように、背中のぬくもりは柔らかに郁を包み込んだ。
「風邪、引くぞ」
堂上は両の手を郁の胸の前で組んで、少し力を込めた。
きゅっと肩を押し込まれるように、郁の身体が更に包み込まれる。
そのぬくもりに郁は目を閉じて浸った。
「気持ちいい、篤さん」
「そうか、それはよかった」
―― うん、お風呂みたいで、秋風みたいで。
―― なんだそれ?あったかくて、すずしくて、ってか?
―― そう。気持ちいいの。
うっとりと、郁が頭をこてんと堂上に預けようとしたときだった。
いきなり、背中のぬくもりが消えて、郁はころんと床に転がった。
慌てて目を開けて、状況把握をする。
視界は、90 度転回していた。
天井が見える。
「あれ?」
郁は、自分がこうなった経緯を考えた。
ぼんやりと月が見えていたはずなのに…
すると、視界が再びくるりと回った。
「あれ?」
きょろきょろすると、視線も高い。
耳元でくすくすと笑い声がした。
郁は、堂上に抱き上げられていたのだ。
俗に呼ばれる、お姫様抱っこで。
肩から、濡れたバスタオルがするりと落ちた。
濡れていても、布一枚があるとないとでは、温かさが違う。
首筋にひやりとする秋の空気を感じて、郁はわずかに身じろいだ。
そのわずかな動きを感じたのだろう。
堂上は開いた郁の首筋に唇を近づけて、ふぅと息を吹きかけた。
「うわっ、篤さん、なにするの?」
「ちょい、動くなよ。落ちるぞ」
「落とすなー」
堂上の首に腕を回して、郁はしがみついた。
それに気をよくした堂上はしばらく郁の首筋から離れなかった。
秋の気配を感じた先日の公休、ふたりでホームセンターに出かけていって、ラグを買った。
秋冬向けの、毛足の長いラグだ。
それまでは床にぺたんと座ってソファにもたれることの多かった郁が、このラグが来てからはこのラグの上がお気に入りの場所になっていた。
ゆっくりと、郁はラグの上に下ろされた。
堂上に首筋を煽られた郁は、放心状態で、座った。
ほんの少しの間の後、堂上は新しいタオルを持ってきて、郁の髪を拭きはじめた。
丁寧に水分をタオルへ移していく。
郁が自分で拭くよりも、ずっとずっとやさしい。
あらかたタオルドライが終わると、ドライヤーで乾かし始める。
それも、郁がするよりずっとずっと丁寧にだ。
手櫛で、髪をやさしく梳いていく。
「いかがでしょうか?おくさま」
ふざけて堂上が声をかける。
郁は髪に手をやって、振り返って微笑んだ。
「うわあ、ふわっふわっ。篤さん、上手」
にこにこと本当に嬉しそうに髪をいじった。
「お前の乾かし方が雑なんだ。訓練の後のシャワーで時間がないときは仕方ないが、家にいて時間のあるときくらい、時間かけて手入れしてやれ。お前の髪、きれいなんだぞ」
郁がいじって乱れた髪を堂上は手櫛で丁寧に直していった。
ふと、郁は背中に再びぬくもりを感じて、ゆっくりと背中を傾けた。
予測していたように、背中のぬくもりは郁の体重を全部受け取って、身体を柔らかに包み込んでくれた。
そして、やはり、両腕を郁の胸の前で組んだ。
「なんかね、極楽って感じ」
「そうか?」
「うん、しあわせって感じ」
「そうだな。お前をこの腕の中に抱きしめられて、幸せだな」
「背中にじわーって篤さんの体温を感じるの、好き」
「俺にはわからん感覚かもな」
「あたしも背中から篤さんのこと抱いてあげようか?」
「いやいらん」
「ええ、気持ちいいのに~」
「それよりは…」
堂上の腕の中で、郁はくるりと向きを変えられた。
正面に堂上の、ほんの少し照れくさそうな顔があった。
「こうして、正面から抱き合いたいな」
虚を衝かれた郁の唇に堂上が唇を近づけた。
ゆっくりと重なり合う唇は、温かかった。
暖かなラグの上で、郁は秋風が身体の上を走っていくのを感じた。
それは、さらさらと、ふたりの熱を冷ましてくれるようだった。
fin.
あとがき
秋のお話を書くのは好きです。
たぶん、季節の中で一番秋が好きだから、だと思います。
秋の入り口は、人肌が恋しくなります。
触れた瞬間にふわりと伝わるあのぬくもりが。
とはいうものの、単に堂郁べったべた甘甘な話が欲しかっただけです。
堂上さん、郁ちゃんを目いっぱい甘えさせてます。
今日の堂上さんは寡黙だったので、部屋の中には、秋の虫の音が響いていたかと思います。
これが饒舌な堂上さんだったら、言葉攻めになってるよ…爆
構図的に、後ろから抱きしめる(抱きしめられる)の、好きです。
いや、羽交い絞めじゃないよ。
ゆるゆるに抱きしめて、抱きしめられてるほうが頭をこてんと抱きしめたほうの胸にあずけて。
抱きしめてるほうが抱きしめてる首筋に顔を埋めるのも好き。
そんな秋の一夜のお話でした。
読んでくださってありがとうございました。
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プロフィール
HN:
亜生(あおい)
性別:
女性
自己紹介:
関東の片田舎に住む。
典型的 O 型人間。
せっかちなのにのんびりや。
好物はハチミツと梅酒。
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