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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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星空が大好きです。
田舎で育ったし、今もど田舎に住んでいるので、晴れた夜空は吸い込まれそうなほど深くて、星が瞬いています。

そんな今日は、ペルセウス座流星群の極大日です。
7月の下旬~盆明けくらいまでが流星群の時期で、極大日の前後はとにかく流星がよく見えます。
ペルセウス座流星群の流星は明るいことでも有名です。
また、流星痕もよく観測されます。
北東の空を上るペルセウス座頭部周辺が輻射点(星が飛び出すところ)です。
明るい流星が多いので、多少曇っていても、雲の向こうを駆ける流星が見えることもあります。
ぜひ、ご覧になってくださいね。

『Perseids』
堂郁 別冊Ⅰ  たくさんあって、大変なんです!



「おい、堂上。頼む、代わってくれ」


ここ数日、夏季休業のシフトから、特殊部隊は班を超えた編成で、業務にあたっている。
日頃、家族にいろいろと負担を強いている特殊部隊だから、盆正月くらいは、それぞれの家庭の事情を考えて休暇をとらせようという、上層部の采配だ。

若手の堂上班は、まだ家庭がないため、玄田の采配により、都合よくあちこちの班に貸し出されていた。

いつもと異なる相手とバディを組む。
それはそれで、ほどよい緊張感を生み、各自が自分の業務を見直したり、警備の不備を見つけるのに役立つ。


ところが、郁が他班の隊員と組んだ日には、昼を過ぎ午後の休憩を迎える頃になると、郁とバディを組んだ隊員から、交代希望の一報が堂上のもとに入るのだった。

郁のバディを代わってくれと…


今日も、一報が入った。


「堂上、頼む、笠原のバディ、代わってくれ」


一報入れたのは、芳賀班隊員。
今風の考えのできる、若い隊員とは気の合う隊員だ。


インカムを通じて、堂上は返答を返す。


「何かしましたか?あいつ」

「いや、何もしてない。何もしてない…でも、、頼む、代わってくれ」


体調不調も警備の不備も、なにも堂上のもとに報告は挙がっていない。
それなのに…

続くということ、それには必ず理由があるはず。


「休憩に入りますので、総務部前の休憩所で、落ち合いましょう」


堂上は今日のバディの小牧と一緒に、総務部へと急いだ。


総務部前の休憩所では、芳賀班の隊員と郁が、紙コップの飲み物を飲んでいた。
微笑ましく見える、休憩風景だ。

郁が小声で呟くと、それを聞いた芳賀班隊員がくすりと笑いをこぼす。
その笑みを受けて、郁はまた呟く。
芳賀班隊員は、腹を抱えて、必死に笑いを堪え始める。
郁は「ひどいですぅ」と口を尖らせて、抗議している。

恋人である堂上には、ちょっとやきもちを焼きたくなる光景だった。


「遅れました」


一礼して、合流する。
休憩という名目なので、堂上も小牧も、自販機で、飲み物を購入した。


「笠原、何した」


開口一番、堂上は郁に訊ねた。


「何もしてませんよお。ねえ、先輩」


郁は口を尖らせて、芳賀班隊員に助けを求める。
助けを求められた芳賀班隊員は、目じりにたまった涙を払って、大きく頷く。


「ねっ、何もしてませんって」


ますます膨れる郁を除けて、堂上は芳賀班隊員にもう一度訊ねた。
すると、芳賀班隊員は、真剣な顔つきになって、堂上にこういった。


「頼む、代わってくれ。俺が仕事にならん」

「はっ?」

「だから、俺が仕事ができないから、堂上、代わってくれ」

「わけを教えてください。ここ数日、続いているのに、誰もその理由を言ってくれないんです」


芳賀班隊員は、郁の顔を覗き込み、続いて堂上の顔を見て、しばらく思案していた。

言うべきか言わずにおくべきか…

明らかに、迷いの表情を浮かべていた。


「あのな……『生麦生米生卵』、は許す」

「はあ」


突然出てきた、早口言葉に、堂上は抜けた返事を返した。
郁は既に真っ赤になって俯きはじめていた。
察しのよすぎる小牧は、上戸の準備完了といった風情で、一歩下がって状況の行方を見つめていた。


「『かえるぴょこぴょこ』が『びょこびょこ』でも『ぴょろぴょろ』でも許す」

「はあ…」


だんだん悲愴になる芳賀班隊員の顔を堂上はいぶかしんで見た。
そして、我慢に我慢を重ねたといった表情になった芳賀班隊員は、最後の一言を発した。


「でもなあ、『手を繋いで歩けますように』だけは勘弁してくれ~」

「はあああ」


堂上は自分でも素っ頓狂な声だったと思った。
それだけ、芳賀班隊員の一言はインパクトがあった。

郁は真っ赤になって、小さくうずくまってしまう。
小牧は背を向けて、くつくつと上戸全開になっている。


「だからなあ、堂上。こいつ、駄々漏れなんだよ。お前とああしたいこうしたいってのが」


芳賀班隊員は、苦笑しながら、郁の頭を小突いた。
郁は口をへの字に曲げて、見上げていた。


「笠原…お前…」


堂上は空いた口がふさがらない。

いくら駄々漏れとはいえ、業務中になにやってんだ、お前は…

無言の言葉が通じたのだろうか。
郁がゆっくり立ち上がって、俯いたまま、口を開いた。


「あの…練習してたんです」

「そんなもん、部屋でやれ」

「いや、だから、部屋で練習してたんですよ。そしたら、柴崎に却下されて…」


渋々、郁が理由を語り出した。




ことの始まりは、図書館の夏休み予定行事表を張り出したときだった。

背の高い郁は、ポスターなどを貼るときに、重宝されるらしく、タイミングを狙ったように業務部に声をかけられる。
そのときも、ちょうど掲示板を通りかかったときに、運悪く声をかけられた。

頼まれたのは、夏休み中に数回行われる、星空観測会のポスター。
周囲に高い建物がなく、緑が多いために、灯も少ない。
図書館の庭は都会にしては珍しく、星空の観測に向いているのだという。


「夏休みの自由研究だね~」


郁が手際よくポスターを貼った。
ピンを渡すのは、柴崎だ。


「そうでもないのよ。自由研究目当ての子供より、大人の参加者が多いのよ、星空観測会」

「へえ、珍しい。お祭りでもないし、花火もないのに?」


不思議そうに郁が聞き返すと、柴崎は笑みを浮かべて答えた。


「そうなのよ。ちょうど、星空観測会の頃、流星群の時期で、流れ星が山ほど見られるんですって」


みんなロマンチックなのね~。


にやにやと柴崎が郁に微笑みかけた。


「ほら、流れ星が消えるまでに、願い事三回唱えたら、願い事が叶うっていうのあるじゃない?」

「うん、あるある。あたしも、よくお願い事したよ。『テストでいい点取れますように』とかさ」


うんうん、と郁が大きく頷いた。
くすくす、と柴崎が笑う。


「あらあら、かわいいお願いだこと。ほら、夏だし、ちょっとロマンチックに『君とずっと一緒にいられますように』なんて願い事して、夏の思い出~ってのらしいわよ、集まる大半の大人は」

「ええ、不純~」

「そこで『不純』って言い切っちゃうあんたは、天然記念物だけどね」

「からかうな」

「まあまあ。だから、毎年盛況らしいわよ。星空観測会」

「ふーん…」

「あんたも、お願い事してみたら?『堂上教官と一緒になれますように』とか?」

「…ば、ばか」


真っ赤に俯いてしまった郁の肩をぽんぽんと叩いて、柴崎はそのまま業務へと戻っていった。

残された郁は、ぶつぶつ言いながらも、「お願い事してもいいかも?」とふと思ったのだ。

思ったら、即行動。

郁の最大の長所にして最大の欠点を持って、郁はその日から、願い事と唱える練習を始めたのだ。
どうせやるなら、きちんと三回唱えて、万が一にも叶ったら、うれしいもん、と。

しかし、これには弊害があった。
願い事を三回唱えるのに郁の滑舌が付いていかなかったのだ。

帰寮して部屋で、唱えてみる。
一回目は順調。
二回目も、ほぼ順調。
しかし、三回目にコケるのだ。

なんど試みても、三回目でコケる。

そこで、柴崎が早口言葉の練習を提案してきたのだ。


郁はそれに従った、というわけだった。




しかし、弊害が発生した。


業務中、心の中で唱えていたはずの早口言葉が、声になって出てしまうのだ。
郁本人にその自覚はない。

真剣に業務に向き合っているのに、心の中には「生麦生米生卵」が浮かんでくるのだ。
そして、それはなぜか声となっていた。


変則バディで、郁と組んだ特殊部隊隊員たちは、なんとかそれに耐えようとした。
早口言葉だけなら、まだ耐えられた。

しかし、するりと発せられる、乙女のお願いには耐えられなかった。


堂上と郁が付き合っていることは、暗黙の了解だから、それをとやかく言う連中ではない。
堂上とあんなことがしたい、こんな風にしたい、と郁が思っても、それにいちゃもんをつける連中でもない。


しかし。
しかし。
しかし、だ。


乙女の願い事を言葉で聴かされるとなると、話は別だ。


わかっていても、こそばゆく、痒いのだ。
無意識の郁が、この次に発する言葉がなんなのか、気になるのだ。


耐えられん。


それで、ここ数日、郁とバディを組んだ特殊部隊隊員からは、堂上に助けを求める一報があったのだ。



状況を理解した堂上は、郁の頭に盛大に拳骨を落とした。


「ばっかもん。案件は脳まで持って行け、と常々言っているだろう。それをお前ってヤツは…」

「や、でも、そんなこと言われたって、わざとじゃないし、自覚ないし、あたし、知りませんよ~」


半べそになり、拳骨を落とされた頭を擦りながら、郁は抗議した。
小牧は、ひっくり返らんばかりの上戸を爆発させていた。


「ああ、もう、何言っても足りん。ああ、もう、お前ってヤツは…」

「すいません」


しゅんとする郁の頭をぽんとした。


まったく、どうしてお前はこんなにかわいいんだ。


堂上は数回、郁の頭をぽんぽんすると、芳賀班隊員に交代を告げた。
芳賀班隊員は、あからさまにほっとして、上戸が止まらない小牧の腕を引っ立てて、警備へと戻っていった。


「ちょっと待ってくださ…俺と笠原が交代するって言おうとしたのに…」

先輩の気遣いに気付かないほど朴念仁でもない堂上は、芳賀班隊員の背中に一礼をした。


「おい、笠原、よーく聞け。お前の願い事は叶えてやるから、これから終業までは、一切早口言葉も願い事も口に出すな。いいな。出すなよ」


郁の頭をぐりぐり押して、堂上は念を押した。
郁はこくこくと頷いて、えへへと笑った。





ペルセウス座流星群、極大日の夜、堂上は郁をドライブに誘った。
市街地から少し離れた、小高い丘の上に車を止めて、ふたりで夜空を眺めた。



しゃらら、しゃらり。

音を立てて、星が降る。
長く、短く、星屑を散らして、星が走る。



流星が現れるたびに、郁は両の手を胸の上で組み、願い事を口にする。
その願い事を全部叶えてやると、星が流れるたびに堂上は誓った。






その夜願った願い事は…
それからずっと叶えられることを、まだふたりは知らない。




fin.



あとがき

ペルセウス座流星群にちなんだ SS に仕立ててみました。
ペルセ(と略します)は、本当に観測しがいのある流星群です。
お願い事も山ほど唱えられます。

星に願いを、なんて乙女過ぎると思うんですが、夜空はひとをロマンチックにしてくれるので、
ノープロブレムです。
郁は思いついたことを端から唱えていけばいいと思います。
で、堂上教官はそれをひとつひとつメモっていけばいいと思います。
となりで、手でも握ってて、ひとつ星が流れるごとに、ぎゅっとすればいいと思います。

読んでくださってありがとうございます。
あなたの願い事も叶いますように。
今夜、星が流れますように。

感想をお聞かせいただけたら、嬉しいです。

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こんにちは。聖です。郁ちゃんかわいいー。こんな後輩から脳内タダ漏れの案件を聞かされる周りの隊員は気の毒ですね。素敵な堂郁流星SSご馳走さまでした。
ひじり URL EDIT
at : 2008/08/13(Wed) 23:35:15
田舎の星空大好きです
こんにちはw
郁ちゃんがとてつもなくかわいいですw
難しいことは分からない私ですが星空を眺めるのは好きです。
私の住んでいるところも田舎なのですが残念ながら星はそんなによく見えません。
だから昔、天文台を訪れたときはとても感動いたしました。
星の数が多くとてもきれいだったのを今でもよく覚えています。
亜生さんのお住みの場所では星空がよく見えるのですね。
うらやましいです。
『Perseids』を拝見させていただいてまた天文台に行きたくなりましたw
とてもロマンのあるステキなお話をありがとうございましたw
ハピパラ EDIT
at : 2008/08/14(Thu) 17:46:48
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亜生(あおい)
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関東の片田舎に住む。
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