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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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別冊Ⅱのネタばれ、SS です。
未読の方は特にお気をつけください。

『engaging smile』
手柴 別冊Ⅱ後  どれにする?


図書館戦争は別冊Ⅱをもって完結、という扱いをさせていただきました。
なので、今回の SS は『二次創作ガイドラインの「完結作品から既出エピソード」の二次創作』
として扱わせていただきました。
ご理解くださいませ。



結婚して、住まいは同じ敷地内にある官舎に移った。
通勤時間が多少長くなったことと、残業時間が極端に減ったこと以外、特に変ったことはない。


…でも、ない。
毎朝、家を一緒に出て、わずかな通勤距離を一緒に歩く。
それは、デートとは違って、ドキドキした高揚感はない。
落ち着いた安心感に満たされて、同じ道を並んで歩く。


結婚するということは、こんな些細なことで幸せになるということなのだと、
柴崎は隣を歩く夫を見上げて微笑んだ。


「ん?どうした?」


妻の視線を感じて、手塚はわずかにその視線を下げた。

歩くたびにゆれる黒髪。
細い肩と小さな手。

出会った頃は、もっと大きく、しっかり見えた。
けれど、本当は華奢で頼りなく、抱き上げてしまいたくなる。


手塚はひとり、「俺も相当重症だ」、と呟いた。


「なによお、一人でにやついて」


横腹に刺さる肘鉄は相変わらずの強さで、一瞬痛みが走った。


「なんでもない…って、お前だって、俺のこと見てただろ、なんだよ」


お返しとばかりに、上官譲りの頭拳骨をそっと落として、手塚は訊ねた。


「あたしも、なんでもない」


結婚したからといって、今までの自分が変るわけではない。
お互い、自分の気持ちを正直に相手に伝えることにはかなり抵抗を感じる。
その性格が結婚と同時に変ることなど、想像しがたいことだった。

無言のまま、通用口に近づいた。


思い出したように柴崎が口を開いた。


「そうだ、広報課から連絡ひとつ。図書館広報の写真、今週中に提出だって」

「お前のとこにも行ったのか。俺のとこにも、来てた」

「スナップでいいからって」

「俺は写真は載せない、って断ったぞ」

「それが、どうしてもって広報の子に泣きつかれちゃって…だめ?光」


下からそっと覗き込まれるような上目遣いをされて、手塚は思わずうなってしまった。


最愛の妻に「お願い」されて、否、といえる夫が、この図書隊に何人いるだろう…
少なくとも、特殊部隊には存在しない。


「わかった。今夜、一緒に選ぼう」


渋々、手塚は了承の返事を返した。



武蔵野第一図書館には、図書館機関紙とは別に、図書館員、図書隊員向けの広報誌がある。
三ヶ月ごとの季刊で、館員隊員向けのイベントの報告や広告、各種手続きの案内、職員の慶弔事が主な記事である。
個人情報の問題はあるものの、結婚に関して言えば、職員のほぼ全員が写真付で報告されていた。

写真は本人たちの意思が最優先されるのだが、業務部のマドンナと特殊部隊のルーキーの結婚となれば、まわりが放っておくわけもなく、ありとあらゆるルートで、写真付の報告を要求されていたのだ。
入隊してすでに数年を経過して、未だルーキーと呼ばれるには恥ずかしい手塚だったが…



帰宅して、夕食を済ませると、手塚は、結婚式の写真をひっぱりだした。

お決まりの、台紙に収まった、集合写真とふたりの写真。
式場カメラマンが撮りまくった、写真がアルバムに三冊。
友人たちが好意で撮り、お祝いの言葉と一緒に届けてくれた、スナップがダンボール一箱。

テーブルに乗せた、写真の量を見て、はやくも投げやりになりそうな自分を必死に叱咤する手塚だった。


「お待たせ…なに、これ」


台所の片付けを終えて、リビングに戻ってきた柴崎は開口一番、こういった。


「なに、これ、って、結婚式の写真」

「うわあ、こんなにあったのね」

「ああ、山ほどに」


ぺらぺらと、数枚の写真を捲った。


真っ白なウェディングドレスを着て、微笑む柴崎。
親友の涙に釣られて、ぐっと堪える顔。

数ヶ月前の情景が色鮮やかに甦る。
どの写真の柴崎も、手塚はすべて、鮮明に覚えている。


「結婚報告ってことだから、二人写ってないといけないんだろ」

「うん、そうね。あたしひとりじゃ、どこのブライダルショップの宣伝って思われちゃう」

「お前…いくらなんでもそれはないだろう」

「あら?この写真、衣装のサンプルに使いたいって、言われたわよ」


A ラインのドレス。
トレーンを美しく引いた後姿。

確かに、サンプルによく見る構図だ。


「ふざけてないで、探せよ、麻子」


後姿でも、誰が他の男に見せるものか。
手塚は、さっさと、使用外の写真は除ける作業に入った。


柴崎は、手塚のやきもちを敏感に感じ取って、くすくす笑いをこぼした。


ぽかん。


上官譲りで、手も早いのね。


軽く頭に落とされた拳骨に柴崎はさらに笑みを深くした。


「これはどうだ?」


手塚が差し出したのは、式が終わって教会から出た、ふたりの写真だ。

ベールを上げて、柴崎がわずかに下を向いている。
手塚は正面をきりりと見つめている。


「いや、あたしの顔、笑ってないから。それに、光の唇、あたしのグロスで光ってるから、やあ」


確かに、誓いの口付の後だから、柴崎は神妙な顔つきだし、手塚の唇もわずかに光っている。


「まあ、式の直後の写真だからな…」


妙に納得して、手塚はその写真を使用外の山に置いた。


「ねえ、これは」


柴崎が差し出したのは、披露宴前のわずかな時間に、郁が撮った写真だった。

特殊部隊の面々がやってきて、数枚一緒に写真に納まった。
堂上と郁が交代でカメラマンをやった。


やれ、腕を組めの、やれ、肩を抱けの、あれこれポーズの注文をされて、辟易したことを思い出した。


そのうちの一枚を柴崎が差し出したのだ。


それは、「一応ふたりのも撮っておいてあげなよ」、という小牧のひとことで撮影された一枚だった。


親友に向けられた、幸せ最高潮の笑顔の新婦と、上官たちの祝辞に緊張を隠せない新郎のはにかんだ笑顔。
おそらく、図書館勤務中には見られない、ふたりの笑顔だった。


「却下」


手塚は一言でその写真も使用外の山へと分けた。


「お前のこんな笑顔、もったいなくて、出せるか」


独り言のような呟きに、柴崎の手がそっと手塚に重ねられた。


「うん。あたしもこんなあんたの顔、もったいなくて、出せない」


柴崎の体重を感じたかと思うと、静かに柴崎の唇が手塚のそれに重ねられた。


「あたし、こんな顔して笑えるんだね」


手塚の胸に頭をおいて、柴崎は呟いた。


「そうだな、お前のこんな笑顔、あんまり見てこなかったな」


手塚は、胸に置かれた柴崎の髪をゆっくり梳いた。
さらさらと指の間から零れ落ちる髪を、掬っては落とし、落としては掬った。


「これからは、いっぱい笑わせてやるよ」


手塚は柴崎の頭のてっぺんに口付を落としてそう言った。


「うん、大事にして。いっぱい笑わせて」


重ねた手を互いに握り締めた。




結局、広報課に提出する写真は、一番無難な、二人が並んですこし畏まった写真になった。
笑顔の写真は、必ずどちらかがいちゃもんをつけて、却下されたからだ。



それから、しばらくして、図書館広報誌が配布になった。
慶弔記事の一番目立つ場所に、今までで一番大きなサイズで、手塚夫妻の写真が掲載されていた。

それを見た図書館員隊員たちから、大きなため息が吐かれたことは、伝説になったらしい。


fin.


あとがき
別冊Ⅱネタばれ全開、手柴 SS です。
ひとまず、図書館戦争はこれで、完結の扱いをさせていただくということで、別冊Ⅱの近日未来です。

いつもは、あとがきで、つらつらとその作品の背景や解釈を書くんですが、今回は何もありません。
ただ、手塚にも柴崎にも幸せになって欲しいと願うだけです。

読んでくださってありがとうございました。
感想などお聞かせいただけたら幸いです。

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