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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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先日、緒形祭~O-Fes ! で開催されたお茶会にお邪魔しました。
オガゼーと明也副隊長を愛してきました!
その時にハロウィンの話をちらりとさせていただきました。
遊んでいただいたお礼にそれを SS にしておーふぇすに投稿させていただきました。

ハロウィンネタなので、こちらでも up します。


『Halloween』
緒形   別冊Ⅱ~回想   覚えていたんだな。忘れられるわけがないが。



「Trick or treat.」


クラッカーの派手な音とともに、特殊部隊事務室へと入ってきたのは、特殊部隊紅一点の笠原郁と業務部高嶺の花の柴崎麻子だった。
男ばかりの色のない事務室が急に華やぐ。

笠原は、黒猫なのだろう。
耳つきのカチューシャと手袋を着用している。
柴崎は、魔女だろう。
先の尖った黒い帽子と黒いマント。
手にはステッキを持っている。

カレンダーを見れば、今日明日と『ハロウィン会』とある。
図書館で開催している読み聞かせの会のイベントだ。

ハロウィンといえば仮装がつきもの。
お祭好きには見逃せないイベントらしく、近頃は読み聞かせの対象の幼児だけでなく、その親たちも趣向を凝らした仮装でやってくる。

そうなると、楽しいイベントに問題が生じる。
警備の問題だ。

ハロウィンの仮装は、おばけや魔女が多く、雰囲気が怪しくなる。
イベントに参加する親子の素性はわかっているが、どこで誰が紛れ込むかわからない。
今日明日の警備はいつも以上に、厳戒態勢を敷くことになっていた。
あまりの物々しさでは、参加する子供が脅えてしまうため、イベントが行われる児童室の中は、仮装した隊員が行い、その外は、防衛部と特殊部隊でがっちり守る。

笠原は児童室の中の警備に就くため、仮装しているのだ。


「ちょっと、手塚、あんた、まだ用意してないの?」


柴崎がステッキをちょいちょい振って、手塚を小突く。
手塚も笠原と一緒に、児童室内警備の予定だ。
手塚の机の上には、長い耳のついたカチューシャと白い手袋。
それにふわふわした丸い白い物体もある。


「あんたが遅いから、迎えに来てみれば、まったく…早くして」


手塚に魔法をかけるように、柴崎がくるりとステッキで輪を描く。
しぶしぶといった体で手塚が机上のものを身に着けた。


「手塚、かわいい~♪」


きゃあと口元を覆って笠原が悲鳴を上げた。
見れば、そこには、ウサギが一匹。


「忘れ物」


柴崎がふわふわした丸い物体を手塚の腰に貼り付けた。
しっぽか。


「笠原、なんでお前が黒猫で、俺がウサギなんだよ」

「うーん、気分?」


答えたのは、柴崎で、この仮装が彼女が用意したものだとすぐにわかる。


「笠原、あんた、なんでスカート履かないの!せっかくミニスカ用意したのに」


柴崎の容赦ない追求に笠原は一歩ずつじりじりと下がった。


「だって、堂上教官が怒るんだもん」

「あんたがいいなら、教官は関係ないでしょ」

「えええ、だってやだよ。堂上教官、後が怖いんだよ」

「パワハラで訴えてやる」


ぎゃあぎゃあとひとしきり騒ぐと、柴崎がつかつかと俺の机に向かって歩いてきた。
何事かと、顔を上げると、誰もが溶けると噂される極上の笑顔で、一式が差し出された。


「なんだ?」

「副隊長の仮装ですわ」


そんな話聞いてないぞ。

俺の不審な表情を瞬時に読み取った柴崎は、有無を言わさずに俺の手に一式を乗せた。


「玄田隊長が参加する予定でしたのに、ご都合が悪いそうで、代わりに緒形副隊長を遣してくださるとご連絡をいただきましたので」


朝礼の時の玄田隊長の不敵な微笑みを思い出して、俺は頭を抱えた。
確かに、今日は他館図書隊との打ち合わせがあった。
それは、年間予定で決まっていることで、ハロウィンイベントより前から入っていた予定だ。
それを隊長は…
いい加減、丸投げするのも注意しないといけない、と心のメモに書きとめた。


「笠原と手塚が仮装するなら、いっそ堂上班全員仮装すればいいだろう」


仏頂面で立つ、堂上と小牧を指差す。
柴崎はちらりとふたりに視線を走らせて、すぐに俺に戻す。


「それが、おふたりともだめなんですよ。小牧教官、お風邪らしくて、児童室に入っていただくのには問題があります。堂上教官は…その…」


柴崎が言いよどむと、堂上がつかつかとやってきた。


「いらん気を使うな。緒形副隊長、この衣装、自分には丈が長いので、遠慮します」


そうか、とも、長くてもいいだろう、とも言えずに、俺は仕方なく仮装一式を受け取った。
広げてみると、それは、黒い長いマントと眼帯だった。
ご丁寧にサーベルもある。
これは、海賊か。

マントをぱさりと羽織る。
決して背の低い部類ではない俺のくるぶしまで覆い隠す。
これでは、堂上が辞退するわけだとひとり納得した。


「あと、これもお願いいたしますね」


にっこり微笑んだ柴崎が差し出したのは、黒い大きな布袋。
がさごそ音がする。


「子供たちに配るお菓子です。中身は確認済みです」


口を緩めて中を覗くと、小さな小袋がたくさん入っていた。


「では、副隊長、よろしくお願いいたします」


一礼して、柴崎は笠原と手塚を従えて、事務室を出て行った。
俺は、書きかけの書類をまとめ、机の上を片付けた。

とん、と机を叩かれて、顔を上げると、トムスマイルの進藤がいた。


「ご苦労だね~緒形キャプテン」


机の上に置かれたまま、まだ装着していない眼帯をいじっている。


「いっそお前がやればいい」


眼帯を取り上げて、無理やり進藤の手の上に乗せてやる。
進藤はにやにやしたまま、乗せられた眼帯をそのまま眺める。


「いやあ、隊長ご指名だし、業務部じきじきのご依頼じゃ、俺がのこのこ出て行くわけにはいかん」


その言い方。
やりたいって言ってるようなもんだぞ。

俺の気持ちを先読みしたのか、進藤が眼帯を俺に装着した。


「俺は明日、うちに帰ったら、まんまお前さんと同じ格好になるわけよ。遠慮しとく」


子煩悩な進藤は、子供が喜びそうなイベントは必ず家でやる。
常に危険と隣り合わせだから、いつ何があってもいいように、な。とイタズラな笑顔で笑う。
それは、改めて確認することでも口にすることでもない。

だから俺はあっさり、そうか、と返答した。


事務室を出て、児童室へと向かう。
途中で、はたと気付く。
児童室の直前で着替えればよかった話じゃないのか。

歩く俺に先ほどから館内の視線が痛いほど感じられる。
悪意のある視線ではないから、単純に好奇心の視線らしい。
中には、羨ましげに見てくる館員もいる。

鏡の横を通ったときに見た自分の姿に、自分でも内心驚いた。
顔が半分隠れて、身体もすっぽりマントに覆われているから、見てくれはいいのだ。
俺の場合、左頬の傷が海賊らしさをアップさせている。

そして、もう仕舞いこんだはずの記憶がふわりと甦ってきた。


* * * * *


あれは、大学三年生の秋だった。

所属ゼミの准教授から、ボランティアの依頼があった。
近くの幼稚園のイベント参加だった。
准教授が研究協力を依頼している幼稚園らしく、参加者にはその月のレポート免除という嬉しい特典がついていた。
レポートを免除してもらったところで、そう成績には関係ないし、レポートをまとめることに大して面倒を感じていない俺は、最初から参加する気持ちはなかった。
しかし、昨今の学生気質なのか、参加者は准教授が希望する人数集まらなかった。
そうなると、まじめにゼミに出席しているものに声がかかる。
俺も加代子も、しぶしぶイベント参加組に入れられてしまった。

男子は仮装、女子はお菓子配り、と役割分担してイベントは終了した。
俺の仮装は、吸血鬼ドラキュラ。
マントを羽織り、口に牙をつけ、髪はオールバック。
なまじ上背があるだけに、迫力があったらしい。
泣き出してしまう子が続出。
負けん気の男の子は戦いを挑んでくる。
まともに相手をするわけにもいかず、俺は室内をランニングする破目になった。

幼稚園の先生方からは、近年まれに見る本格的なハロウィンだったと、褒められた。
一緒に参加した連中は、仮装したまま飲み会へと出かけていった。
俺には仮装のまま街を練り歩く度胸など持ち合わせがなく、ゼミ室へ持ち帰る物を預かって大学へと歩いた。

俺の隣を加代子が歩く。
イベントのことを楽しげに話す加代子の言葉に、時折言葉を挟みながら、大半は頷いて歩いた。

加代子の手には、大きなかぼちゃ、ジャックランタン。
お土産に、と頂いたものだ。
灯したろうそくの灯がゆらゆら揺れる。

夕暮れの闇にゆらゆら揺れる影。
光の世界でも、闇の世界でもない、不思議な時間。
ふとイタズラ心が湧き上がった。


「Trick or treat.」


園児たちの真似をして、隣を歩く加代子に投げかける。
加代子は楽しそうに俺を見上げた。


「お菓子は全部配ってしまったわ」


くすくすと笑って、提げたかごを逆さにして見せた。

そんなことはわかっている。
わかっていて、投げかけた言葉だ。


「なら、悪戯か」


マントを翻して、加代子を懐に抱きこむ。
そこはすでに大学の構内で、時間も時間だ。
人気などない。
かすかに悲鳴を上げた加代子をしっかりと抱きしめる。
そして、耳元でささやいた。


「Trick or treat.」


加代子は自分から俺に抱きつくと、マントの隙間から顔を出した。


「お菓子じゃないけど、甘いわよ」


顔を上に向け、俺の首に腕を回すと、一瞬力を込める。
ゆっくり俺が顔を近づけ、加代子の唇が近づく。


誰がいるわけでも、誰かが見ているわけでもないのに、俺は加代子をすっぽりマントで隠した。
暗闇の中で、俺は加代子の唇を食んだ。
それはまるで、吸血鬼が人の生気を吸うようだった。


* * * * *


そんなことを思い出すなんてな、と自嘲する。
忘れたわけではない。
記憶の奥に閉じ込めて、思い出さないようにと心に鍵を掛けたのだ。

思い出された思い出は、ただ甘い。

甘い思いに浸った俺を現実に引き戻したのは、笠原だった。


「副隊長~早く来てくださいよ~」


その手には、ジャックランタン。
ゆらゆら揺れる灯の向こうに、彼女の笑顔が浮かんだ。


「Trick or treat.」


盛大に叫んで、俺は児童室のドアを開けた。



fin.



あとがき
緒形祭~O-Fes ! に捧げた SS です。
こちらで開催されたお茶会でちらりと出した「ハロウィン」ネタです。

緒形さん三年生(原作では三回生とあるんだけどこれは関西の呼び方じゃないかな。関東の大学だったら三年生というよね、と思って関東風にしました)の秋を回想の巻。
いろいろ捏造があるのは見逃してください。

図書館の児童室ではハロウィンイベントもあるんじゃないかなと思って。
郁ちゃんの仮装は、耳&手袋&ミニスカ&ニーソックスでしたが、ミニスカは堂上教官の却下を食らってます。
ミニスカはしっぽつきだったのに~
柴崎はシャッターチャンスを逃したと、後から堂上さんに迫ると思います。

他にも、ハロウィン仮装はいろいろあって、それぞれのキャラにお似合いのものがありそうです。
「こんなのどう?」ってご意見もお聞かせくださいね。

笑っていただけたかな?
感想お待ちしています。
読んでくださりありがとうございました!
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