図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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雨上がりの晴天の空の美しいこと!
そして、この時期ならではの山の美しいこと!
緑のにおいのする空気を肺いっぱいに深呼吸しました。
文学忌とは「作家の命日をその雅号やペンネーム、代表作などにちなんで、その文学的な業績を偲ぶ日」ということで、すぐに思い浮かぶのは太宰治の「桜桃忌(おうとうき)」かと思いますが、5月29日は与謝野晶子の「白桜忌(はくおうき)」です。
あの時代に自分の心をまっすぐな言葉で詠んだ詩人。
生き方も自分の心にまっすぐだった女性。
与謝野晶子のみだれ髪をいくつか読むうちにふと思い浮かんだ緒形さんと加代子さんのお話です。
『白桜(しろざくら)』
緒加代 ウェイティング・ハピネスの頃 今の心境よ。
そして、この時期ならではの山の美しいこと!
緑のにおいのする空気を肺いっぱいに深呼吸しました。
文学忌とは「作家の命日をその雅号やペンネーム、代表作などにちなんで、その文学的な業績を偲ぶ日」ということで、すぐに思い浮かぶのは太宰治の「桜桃忌(おうとうき)」かと思いますが、5月29日は与謝野晶子の「白桜忌(はくおうき)」です。
あの時代に自分の心をまっすぐな言葉で詠んだ詩人。
生き方も自分の心にまっすぐだった女性。
与謝野晶子のみだれ髪をいくつか読むうちにふと思い浮かんだ緒形さんと加代子さんのお話です。
『白桜(しろざくら)』
緒加代 ウェイティング・ハピネスの頃 今の心境よ。
不順な天候が続いた春もようやく終わりを告げ、輝く夏へと季節は移ろい始めた。
昨日の雨がうそのような晴天の日曜日。
緒形は今シーズン初の夏用ジャケットを羽織って、図書隊の寮を出た。
緒形がずっと思い続けていた竹内加代子との再会は、加代子からの奇襲で実現した。
緒形の動揺など想定内と、加代子に押し切られるように、二人の交際は再開した。
加代子は作家としての活動が軌道に乗ってからも、ずっと地銀勤めを続けている。
だから、日中のデートは緒形も公休の日曜日と決まっていた。
待ち合わせ場所は、加代子の使う駅近くの喫茶店だ。
若い恋人たちのように戸外で待ち合わせをするには、ふたりとも少々抵抗があったからだ。
その喫茶店はいまどきの店作りで、天気のよい日はオープンカフェになっていた。
緒形は待ち合わせ時刻より幾分早めにその喫茶店に着き、本を開きつつコーヒーを飲んで加代子を待つ。
それが、常だった。
「お待たせしました」
テラスのテーブルに細かな影が映った。
見上げれば、日傘を差した加代子が微笑んでいた。
ゆっくり日傘を畳んで、加代子が緒形の向かいに座った。
優雅に店員に飲み物を注文すると、緒形の手元に視線を落とした。
「ずいぶん古い本ね」
掛けられた薄茶の書店のブックカバーは擦り切れていて、古さと読み込まれている事実を伝える。
「この時期になると読みたくなる。季節物かな」
「そういう本ってあるわ。その時期の景色と本の中身が一緒に記憶されてる感じで」
「ああ、そんな感じだ」
店員が加代子の前にカップを静かに置いていく。
加代子は一口飲んで、頬杖をついた。
「明也が本を読んでる顔、好き」
突然の告白に、緒形は驚いて顔を上げた。
「ふふふ。まん丸お目目の明也だ~」
加代子は幼い子供のような揶揄の表情を浮かべた。
緒形は決まり悪そうな顔でコーヒーを一口啜ると、本を顔の正面に持ってきて加代子の視線から逃れた。
「私の本もそんな風に読んでもらえてるのかしら?」
「ここまで年季が入るまでにはもうちょっとかかるだろうがな」
「大切にしてもらえてるといいなあ」
「もらえてるよ、きっと」
「うん」
緒形は静かに本を閉じてテーブルに置いた。
空いた手をそっと伸ばして、加代子の手の上に置く。
小さな加代子の手をすっぽり包むように、優しく包み込んだ。
「明也の手、あったかいね」
「加代子の手が冷たすぎるんだ」
「女性は冷え性が多いのよ」
時間にしたら、極わずかな時間だっただろう。
けれど、ふたりにとっては、長く幸せな時間が過ぎた。
「五月も終わりね」
「そうだな」
「白桜忌ね」
白桜忌・・・与謝野晶子の命日だ。
その名は、晶子没後に出された最後の歌集「白櫻集」に因むとか、晶子の戒名(白桜院鳳翔晶輝大姉)に因むとか言われている。
情熱に生きた女性の歌は今もなお読みつがれている。
「くろ髪の千すじの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもいみだるる」
ふいに加代子が口ずさむ。
それは、晶子の歌集「みだれ髪」の歌のひとつだった。
「明也に手を握られてたら、ちょっとそんな気持ちだわ」
悪戯っぽく加代子は緒形に微笑みかけた。
専門でないにしても、それなりに文学を理解する緒形は、加代子の微笑みの意味を理解して、どきりとした。
このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られてしまう。
けれど、衝動のまま行動するには、緒形の年が邪魔をする。
冷めたコーヒーを飲み干すと、緒形はゆっくり立ち上がった。
「久しぶりの外出だ。どこへ行こうか?」
緒形の心模様を読み取ることに長けた女性は、納得するように首を何度か縦に振り、立ち上がる。
「そうね。神田の古書店めぐりなんて、どうかしら?」
「天気がいいから、歩くのも苦じゃないしな」
「そうね、ふふふ」
伝票を持ち、レジに向かう緒形の後姿を眺めながら、加代子はぽつんと呟く。
「あーあ、『やわ肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君』だわ。そこが明也なんだけどね」
強い日差しの中に日傘を差し出す。
くるくる回す日傘からは、木漏れ日のように陽がくるくる回った。
fin.
あとがき
なんだか急に緒形さんが書きたくなって書きました。
再開した緒形さんと加代子さんのお付き合いのイニシアティブは加代子さんががっちり握っていると思います。
緒形さんは過去の後悔と年齢を結構気にしてると思うんですが。
恋愛って年齢じゃないとは思いつつ、今自分の年で「うふふ~あはは~♪」はできないなあ。
年齢のストッパーが強いんですよ。
いちゃいちゃしない玄田隊長と折口さんみたいなお付き合いならできそうだけど。
でも、加代子さんっていちゃいちゃしちゃいそうなイメージもありますが。
SSの中に登場した二首の意味は探していただければ。
歌の解釈って、ひとそれぞれで、感じ方もひとそれぞれだと思いますので。
感想などお待ちしています。
読んでくださってありがとうございます。
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プロフィール
HN:
亜生(あおい)
性別:
女性
自己紹介:
関東の片田舎に住む。
典型的 O 型人間。
せっかちなのにのんびりや。
好物はハチミツと梅酒。
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