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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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秋風ノート (主催:三菱榧さま)に参加、投稿したものです。

お題で SS を書くなんて、久しぶりなので、感覚が微妙です。
なんだかくすぐったい気がする。

『どんな顔で迎えようか』
手柴  別冊Ⅱ後  どんな顔をすればいいのよ。



「どんな顔で迎えようか」/図書館戦争(別冊Ⅱ後)/手塚×柴崎



結婚して、初めて公休がずれた。
図書館の休みに連動して公休となる業務部と、独自のシフトで公休が決まる特殊部隊。
それは結婚する前からわかっていたことだ。

いつも通りに起床して、朝食を一緒に取る。
違うのは、自分だけエプロン姿のまま見送ること。

「いってらっしゃい」
「ああ、行って来る」
「気をつけて」
「ああ、気をつける」

お決まりのように、軽く唇が合わせられる。
いつもなら、その後も隣にあるぬくもりが、今日はじゃあと手を上げて、離れていった。
ふっとそよいだ髪に、麻子はわずかに身震いした。
それが、ひとりになったことなのだと理解するまでに、しばしその場に立ち竦んだ。

「やだ、あたしったら。今までだって、ひとりだったこともあるじゃない」

呟いて、麻子は玄関の扉を閉めた。

さほど広くない部屋の掃除にかかる時間など高が知れている。
天気もよかったから、大物の洗濯もした。
窓拭きもした。

「あら、まだこんな時間…時計、狂ってるのかしらね」

結婚祝いにもらった電波時計を首をかしげて眺める。

太陽はその高度を上げて、燦燦と光を降り注ぐ。
部屋の中には、暖められた空気がゆらゆらと入り込み、心地よい空間を作り出していた。

「やっとお昼なのね。ひとりだと、時間が経つのがやけに長いわ」

一人分の昼食をテーブルに並べて、食べ始める。
夕べの残り物とお気に入りの漬物。
汁物はインスタントで済ませる。
主婦の昼食など、どこの家庭もこの程度のものだろう。

「さっさと食べて、午後は優雅に本でも読もうかしら」

誰に言うとはなしに呟いて、箸を持った。

ところが。

なかなか箸が口に届かない。
幼い頃から行儀が悪いと叱られた「迷い箸」になってしまう。
しまいには「食いつき箸」になってしまった。

食べたくないのだ。
もともと麻子の食は細い。
結婚して、手塚と食卓を囲むようになって、だいぶ食べるようになったと思う。
手塚がさりげなく麻子に食べるように勧めるからだ。
その手塚が今はいない。
それだけで、麻子の食は今まで通りに戻ってしまっていた。

「あーあ、これ、食べちゃわないとだめになっちゃうわよね…」

夕べの残り物を突いて、麻子はようやく箸を口へと運んだ。

なんとか昼食を片付けて、干してあった布団や洗濯物を取り込んだ。
おひさまの香りが部屋に満ちる。

布団を寝室に運び、リネンとともにベッドメイクをする。
そして、その上に揃いのパジャマを置いた。

「ひとりってこんなにつまらなかったかしら」

ぽすっとベッドに身体を投げ出して、呟く。
おひさまの香りの向こうに、手塚の香りを見つけて、麻子はそっと枕を抱きしめた。


ぶるっ。

身震いして、麻子は起き上がった。
いつの間にか眠ってしまったらしい。
窓から暖かな太陽の光は消えて、夕暮れの冷たい空気が入り込んでいた。

「あたし寝ちゃったのね」

ベッドの皺を直し、立ち上がったとき、ちょうどドレッサーに映る自分の姿が見えた。
そのとき、遠くで基地の終業チャイムが鳴った。
ぱっと基地の方向を向き、再びドレッサーへと視線を戻した。

麻子は驚いた。
先ほどまでの表情と、今鏡に映っている自分の表情が違うのだ。
チャイムを聞いて、手塚が帰ってくるとわかった途端、自然に笑みがこぼれていた。
自分で見てもわかるほど、喜びに満ちた笑顔だった。

「やだ、あたし…どんな顔で迎えよう…いったい、どんな顔したらいいのよ」

鏡の前で、誰もが見惚れると言われた笑みをする。
どんなときでもにっこりと微笑む、無敵の笑顔を、だ。

「違うわ。こんな顔じゃ、迎えられない」

いろいろな角度で、いろいろな微笑を作るが、どれもこれも嘘っぽくて気に入らなかった。
だんだん、いらついて、怒ったりあかんべーをしたりしてみた。

「ああん、光が帰ってきちゃう」

たんたんたん…
聞き覚えのある足音が近づいてくる。

麻子は玄関へと走った。

足音が止まると同時に、麻子は鍵を開けた。
扉のノブに手を掛けると、それは同時にくるりと回った。

「ただいま」

息を切らせながら、笑顔の手塚が立っていた。

「おかえりなさい」

麻子は、その首に飛びついた。
手塚は笑って、麻子の身体をぎゅっと抱きしめた。



fin.


◆ お題、カップリング、後書き ◆
「どんな顔で迎えようか」/図書館戦争(別冊Ⅱ後)/手塚×柴崎


別冊Ⅱ後、手柴結婚直後です。
お題の「どんな顔で迎えようか」は「どんな顔で迎えよう…」と変えさせていただいています。


結婚して嬉しいことはたくさんあるけれど、一番嬉しいのは「ただいま」と言って「おかえりなさい」と返ってくることだと思います。
手塚も柴崎も寮生活で、同室者がいる暮らしをしてたから、今までも「ただいま」と「おかえり」はあったんですよね。
でも、愛しい人と共に暮らす我が家での「ただいま」と「おかえり」って特別だと思います。

結婚して、柴崎は手塚のことをもっともっと好きになっていくと思います。
自分では気付かないほどに。
昼間ひとりでいて手塚の存在を求めている自分に気付かなくて、手塚が帰ってくるとわかったら嬉しくて仕方がない。
そんな自分の表情を見て、慌てちゃう。どうしよう、どんな顔で迎えたらいいの?って。


柴崎が乙女で、イメージを壊してしまっていたらすみません。
柴崎のことを麻子と呼ぶのが妙に恥ずかしくて、書いている間中赤面していた亜生でした。

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