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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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海の日をいかがお過ごしでいらっしゃいますか?

今年はないんですね、しょぼん……
アニメ版『時をかける少女』
ここ2年、夏休み突入記念のように「時かけ」を見てました。
これを見て「夏休み~♪」と思ったんだけど、今年は…くすん;;

郁ちゃん、好きだと思うんだよね、この映画(アニメ版ね)。
真琴とキャラかぶると思うんですよね。
キャラ読みの郁ちゃんなら、ずっぽりはまってくれると思うんですが…

そんなわけで、堂上さんと一緒に『時かけ』を見る郁ちゃんです。
内容的に映画のネタバレをしていますので、未見の方はご注意ください。

『時をかける』
堂郁  新婚時代  夏の入り口


リビングのテーブルの上には、保冷水筒とボックスティッシュ。
時計はまだ、8 時 30 分ちょっと過ぎ。
調光タイプのライトは、いつもより一段明るさを落として映画館モードになっている。

カレンダーには大きな花丸。
土曜日の赤とマジックの赤が重なって、とっても見にくい。

でも、それをつけたときの郁の笑顔は、晴れやかでかわいらしかった。

「まあ、日付がわからなくなるほど、俺もぼけちゃいないから、な」

独り言を呟いて、堂上はソファに腰を下ろした。



「よかった~間に合った~」


ぱたぱたと台所から郁が駆けてくる。
お城のように広い部屋ではないが、それでも走らずにはいられない状況、というわけだ。

時計の針は、秒針が一周したら、ちょうど9時を指す。
テレビのスイッチはすでにオンになっている。
もちろんチャンネルは間違っていない。

郁はソファに座る堂上の足の間のラグに腰を下ろした。
ちょうど堂上のひざの上に郁の頭の高さが重なる。
結婚してから、テレビを見るときの郁の定位置だ。


「今年も見れるね」


郁が堂上の顔を見上げた。
堂上は無言で郁の頭をぐりぐりと撫で回した。


テレビでの映画の放映は、実際の映画の時間以上に時間がかかる。
前後のコマーシャル、映画案内、間のコマーシャル。
時間ごとにスポンサーが変わるから、そのたびにコマーシャルの時間が取られる。
コマーシャルが入る度に、つながってきた話が途切れるのだから、映画館でないならいっそ DVD で見ればいいのに、と堂上は思う。

けれど、郁はテレビでも見たいという。
一気に見るのも好きだけど、一息吐きながら見るのも好きなのだという。


DVD は持っている。
それも、初回限定版を。

今夜の映画を見るのも、これで何度目になるだろう……
堂上はぼんやりとそんなことを思いながら、始まったオープニングクレジットに目を向けた。



堂上がこの映画を初めて見たのは、図書隊寮の共有スペースだった。
福利厚生の一環で、共有スペースに新しい大型テレビが配置されたときだ。
シアター仕様のスピーカーも同時に新しく設置された。

寮の各部屋にも、それぞれテレビは持ち込まれているが、その大きさからか寮生が集まっていた。
画面には、アニメーションが映っていた。
聞けば、今日放映されている映画番組だという。
DVD 機能も搭載されているのだから、それを見ればいいと口にすると、担当者がチューニングなども含めて確認したいから、テレビ番組にしたのだと答えた。

映画の好みは、どちらかというと、ハードボイルドアクション系の堂上は、興味はないと立ち去ろうとした。
けれどそのとき、小さな歓声を聞いた。
それは、ロビーのソファの隅に座った郁の声だった。

きらきらと画面に釘付けの表情に、堂上が釘付けになった。
訓練中も時々見かける、郁の素直な笑顔だった。
映画より郁のくるくる変わる表情が気になって、結局堂上も共同ロビーのソファに腰をかけたのだった。


それから、数年たって、堂上と郁は付き合うようになった。
そして、この映画を毎年一緒に見るようになったのだ。


時間を跳躍する能力を持った未来人と今を生きる少女の話。
時間を遡る能力を偶然身にした少女は、その能力を奔放に使う。
それはまるで、幼い頃、時間は無限にあると思っていた頃のようだ。
徐々に、その時間が無限ではなく限りあるものだと感じ始める。
そして「別れ」も。


「ずびっ」と堂上の足元で音がした。

「ああ、あの場面か……」
と堂上はティッシュボックスに手を伸ばした。
毎年毎年、郁が涙を堪え切れずにこぼすシーンだ。
ストーリーはもちろん、台詞だって一言一句覚えていて、それでも毎年泣くのだ。
そんな郁の感受性に堂上は呆れるのを通り越して、感動すら覚えていた。

手を伸ばしてティッシュを掴もうとしたら、それは郁の手だった。
自分より体温の高い、ほっそりとした指に触れた。
郁は鼻を「ずびっ」と啜って「ごめん」と謝った。
「いや、すまん」と堂上は掴んだ手をそのままに返事を返した。
郁がもう一度「ずびっ」と鼻を啜ると、堂上は空いたほうの手でティッシュを取って渡した。
「ありまと」とあやふやな発音が返り、ティッシュは郁の鼻を覆った。

その後、何度も「ずびっ」を繰り返して、ラストシーンを迎える。
静かに流れるシーンに短い台詞が耳に残る。
郁は主人公たちの台詞ひとつひとつに頷いている。
お決まりのように郁が呟く。


「逢えるかな?」


逢えるかもしれない。
逢えないかも知れない。
それは誰にもわからない。


「どうだろうな」

「逢えるといいな」


こてんと堂上の膝に頭を乗せて、そっと郁が目を閉じる。
堂上は郁の頭にそっと手を乗せてぐりぐり撫でた。

「甘酸っぱい青春のひとコマ」と片付けてしまうには、堂上もまだいくらか若かった。
一瞬の出会いが人にどれだけの感情を残すかは、いやというほど知っている。
その瞬間には絡まったそれぞれの人生がその後で再び絡むことの奇跡も。

あの時出会った少女と自分の人生が一本の道になろうとは、思ってみなかった。
再び出会うことを思いもしなかった。
郁にしても、本当に自分と出会うことなど思ってもいなかっただろう。
ただ憧れて夢の中の偶像を追いかけていただけなのだろう。

けれど、こうして出会うことができた。


「あたし、足には自信あるから、すぐに走っていけると思うんだよね」


くすりと笑いながら、郁が下から堂上を見上げてきた。


「お前なら、何もかもすっ飛ばして走ってきそうだな」

「そうだよ、全力疾走するもん」

「なら、逢えるだろう」


こくんと郁は頷いた。


「未来で篤さんが待っててくれるから」

「ああ、待ってる」


郁が堂上の太腿に頬を摺り寄せる。
温かな郁の体温を感じて、堂上はひとつ大きくため息を吐いた。
そして、郁の両脇に手を差し入れて、郁の身体を引き上げて抱きしめた。


「だから、逢えるさ、きっと」


fin.

あとがき

正化 31 年=平成 31 年、として計算すると。
郁ちゃんは平成 9 年生まれ。
堂上さんは平成 4 年生まれ。小牧さんは早生まれで平成 5 年生まれ。
時かけアニメは 平成 18 年公開だから、このとき郁ちゃん9 歳、堂上さん 14 歳。
2008年、シネプレックス水戸では、二周年記念で短期間ですが名作アニメ劇場版上映を行いました。
とすると、公開時に見てなくても、郁ちゃんが映画館で時かけに出会うきっかけはあったかもしれない。
堂上さんは静佳さんを連れて(両親の代理で静佳さんの保護者)行ったかも知れない。
映画館で時かけに出会えなかったとしても、毎年夏休みに入る日の夜に放映されてれば見れるよ。
毎年恒例になるといいなあ。トトロみたいに。

堂上さんはきっと甘酸っぱい気持ちで見るんだと思います。

理科室の黒板に書かれた
Time waits for no one.
↑(゜Д゜)ハァ?

書いたのは千昭だと思ってるんだけどな。
「時は誰も待たない」と直訳。
「待ってられない未来がある。」(映画のキャッチコピー)と意訳できないこともない。

一番好きな場面は、真琴と千昭と功介の三人が赤い傘差してる後姿。
あの身長差と歩き方(三人の足の進め方)がストライクです。

実はこの SS は去年の夏休み突入に書き出したものです。
途中まで書いて、結局夏が終わってしまって。
最初は郁ちゃん視線だったのに、いつの間にか堂上さん視線になってしまって、収拾がつかなくなったのです。
うまく軌道修正できたかな?

読んでくださってありがとうございました。
感想お待ちしています。イチオシシーンも教えてくださいね。

素敵な楽しい夏をお過ごしくださいませ。
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