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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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暑中お見舞い申し上げます。
どうかみなさまお身体労わられて、楽しい夏をお過ごしくださいませ。


関東も梅雨が明けました。
待ってましたと言わんばかりの夏の太陽がぎらぎら輝っています。
なっつっだああああ!

こう暑くなると、制服、特に第一ボタンまできっかりかけていなければいけない職場は大変です。
クールビズが推奨されても、なかなか、ノーネクタイ、開襟ってわけにはいかないところもあります。
図書隊もきっとその部類だと思います。

そんなある日をチラ見してみました。


『本日の最高気温』
堂郁  別冊Ⅰ  今日の最高気温は何度だ?




梅雨が明けた。
待ってましたとばかりに、夏の太陽が勢いを増す。
その陽で、なにもかも焼き尽くさんとばかりに。


よろよろと、郁は特殊部隊事務室の扉を開けた。
そして、自分の机に着くなり、いすにのけぞった。


「あっつう…」


自分の息の熱さに、声を発したことさえ、後悔する。
机の上においてあったうちわで、熱い空気をぱたぱたと扇いだ。


「笠原、それ止めろ。暑い空気をかき回してるだけだろ」


隣の席に座る、手塚から、盛大なクレームが起きる。
むっと、郁が隣を見れば、手塚もやはりいすにのびていた。



ここ数日の連暑のため、電力不足が予想されたその日、図書館では使用電力低減措置が取られた。

図書館および、図書館利用者が立ち入る場所の設定温度、1 度アップ。
書庫および、資料室の設定温度は変更なし。
各部署事務室はできる限り、空調の使用を停止。

使用電力の多い、近隣の工場では、午後の操業を短縮するところもあった。
図書館の対応は、公共機関としては、妥当な線だった。


ここで、苦行を強いられたのは、特殊部隊だ。
業務中は、ほとんどの隊員が、訓練か巡回に出かけているため、事務室の人口密度は極端に少ない。
昼休みなどに戻ってくるものもいるが、それでも、他部署に比べると、それは少ない部類に入る。
したがって、総務部の判断で、その日の特殊部隊事務室の空調は、ストップされてしまったのだ。



窓を全開にして、風を通す。
幸い、風が窓から入り込んでくる。

しかし…


今日はその風も暑いのだ。
じりじりと熱された空気が、さわさわと事務室に入り込んでくる。
一瞬、風が身体に触る心地よさを感じ、続いて暑さにうんざりするのだ。


郁はいっそのことお昼を摂ったまま、食堂に居座ろうかと思った。
しかし、食堂はもともと設定温度が高いし、時間差で食事を取る業務部員のために席も空けなければならない。
そう長居できる雰囲気ではない。

ならば、図書館に…

甘かった。

夏休みに入って、来館者はうなぎのぼりに増えている。
しかも、この連暑で、涼を求めて、二割増の来館数だ。
図書隊員がうろうろするのは、憚られた。


しかたなく、郁はよろよろと特殊部隊の事務室に戻ってきたのだった。
来しなに、売店で凍ったミネラルウォーターを買った。
しかし、それもあっという間に溶けて、のどを潤して汗へと変わった。


「あっつぅ」


何度目かのため息をこぼす。
手塚の視線が鋭く刺さったような気がしたが、今は身体を動かすことすら億劫になっていた。


「クールビズ推奨じゃねえのかよ、図書隊は…」


特殊部隊隊員のひとりが呟いた。
ゆっくりそちらを見ると、首に巻きついたタイを引っ張っていた。


「確かに、このタイ、きついよな」


特殊部隊の制服は、タイ付だ。

手塚がタイに指をかけて、くいと引っ張った。
ノットが緩む。
そのまま指を制服の第一ボタンに滑らせて、ボタンを外した。


「それ服務違反…」


クレームのついたうちわを一向に止める気配のない郁は、手塚を指差す。
自分は、とうの昔に、タイのノットも第一ボタンも外しているというのに。


「今は、休憩時間。業務外時間だから、許される…っていうか、お前だって一緒だろう」


いつもなら強固に反論するのに、この暑さで気力をなくした手塚は力弱げな反論を向けてきた。


「だってえ…あと少し、このままでいいじゃん…ふー」


ふたりで時計を見て、大きなため息を吐いた。





と、突然、郁が悲鳴を上げて立ち上がった。


「ひゃあああああああ」


うつろな目をしていた事務室にいた隊員たちがいっせいに郁に視線を向けた。


郁の両頬にはペットボトルが張り付いていた。
そのペットボトルを持っているのは…堂上だ。
堂上が郁の後ろに立ち、その頬にペットボトルをしっかと貼り付けていた。


悲鳴の後、郁がなんと叫ぶのか、気になる特殊部隊事務室は、しんとした。
そして、満を持して発せられたのは

「きっもち、い~い」

だった。

ペットボトルを持つ堂上の手に自分の手を重ねて、さらにペットボトルを頬に押し付ける。
目じりを下げて、至福の笑顔で叫んだ。


「ひゃああああ!冷たくって気持ちいいですぅ」


郁が悲鳴を上げるだろうことは予想していたものの、まさかそのまま自分の手ごと頬に押し付けられるとは思っていなかった堂上は焦った。
郁と恋仲になったことは、周知の事実となっている。
公私の区別はしているつもりだが、時々素で出てしまう細かなことには、目をつぶってもらっている。
だからといって、休憩時間とはいえ、このような光景を特殊部隊の面々に見られるのは、正直閉口する。

郁が幸せな笑みを浮かべ、自分の手に自分の手を重ねてくれている事実は、非常に嬉しい。
しかし、それを見られているのは、悔しい。



「笠原さん、それくらいにしてやって。班長、動けなくて困ってる」


その状況を打破してくれたのは、小牧だった。
その声に、郁ははっとして、自分の状況を確認した。

そして、真っ赤になって、あわてて堂上の手から手を離した。
瞬間、寂しげな表情を浮かべて。
堂上も同じ表情を浮かべていた。


「これ、持っとけ」


堂上はぐいと、先ほどまで郁の頬に張り付かせていたペットボトルを郁に渡した。
郁はうつむいたまま、「はい」と受け取った。




手の空いた堂上は、小牧と一緒に、事務室にいる特殊部隊隊員に、台車で運んできたペットボトルを配り始めた。


続く連暑で、各地では毎日熱中症のニュースが流れている。
図書館敷地内では、幸い熱中症に罹る人はいなかったが、いつ出ても不思議ではない。
そこへ持ってきての今日の使用電力低減措置だ。

万が一を考えて、午後の警備、巡回の隊員には、ミネラルウォーターの携行が言い渡された。

熱中症になったら、とにかく水が必要になる。
身体を冷やすことにも使える。
水分補給もできる。
ミネラルウォーターは万能なのだ。


次々に特殊部隊隊員が、ミネラルウォーターを受け取っていく。
小牧が郁にも、二本のボトルを渡した。


「あたし、持ってますけど」


郁は堂上からもらったミネラルウォーターを小牧に見せた。
すると、小牧はくっと笑いをかみ殺した。


「それは、笠原さん用なんだよ」

「えっ?」


郁は驚いて、ボトルを配る堂上を見た。


「たぶん、今日のこの気温だと、笠原さんバテてるだろうからって、売店に寄ったんだよ」


そういえば…


昨日、郁のバディは堂上だった。
要警備者が館外をうろついたおかげで、一日のほとんどが館外巡回になった。

そして、バテたのだ。
館内の冷房と館外の高温、この温度差にやられた。


「スポーツやってたから、対処法とってたんですけど。ちょっと睡眠不足もあって…」


言い訳がましく郁はいろいろ理由を並べた。
それを小牧は楽しそうに聞いていた。


「体力もあるし、訓練もしてる。でもね、心配なんだよ。過保護な班長だから。まあ、わかってやって」


郁は小さく頷いて、堂上をもう一度見つめた。
郁の視線に気がついた堂上は、郁に視線を向けると、一瞬微笑んで、いつもの仏頂面に戻った。




「おい、今日の最高気温、何度だと思う?」

「そうだな…たぶん、更新してると思うぞ」

「だよな。昨日は昨日で見せ付けられて、今日は今日で、あんなで…」


特殊部隊の面々が、郁と堂上を見て、ぶつぶつと言い始めた。

ここ数日、暑いのは、気温だけではない。
郁と堂上がふたり揃っただけで、事務室の気温がぱーんと上昇するのだ。


部下を心配する上官。

そう見れば見えなくもない光景なのだが、実情を知っているものにとっては、熱くて目も当てられない光景なのだ。

微笑ましく見守ってやりたい。
しかし、こう暑くては、許せるものも許せなくなってしまう。

苦虫をつぶした表情で、特殊部隊隊員たちは堂上と郁を見つめた。


「すいませんね。うちの班長、過保護で」


小牧が苦笑する。
手塚も事務室の柱にかかる温度計を見て、苦笑した。





その日、関東地方では、その夏の最高気温を記録した。



fin.


あとがき
夏本番です。
やはり夏は夏らしく暑いほうが好きです。
たとえ、夏バテしたとしても。

熱中症については、みなさん一度ご確認ください。
自覚症状がない方が多いそうです。
水分補給と冷却が大切。戸外活動の際は特にお気をつけください。

以前勤めていた会社では、電力不足で、空調ダウンを何度も経験しました。
工場も併設の事業所だったので、ラインを止めるわけにはいかないし、研究部門も空調ダウンできない、究極の選択で、開発のフロアの空調がカットされました。
窓全開でも、暑いんです。
熱風が吹き込んでくる。
人間の高温耐久試験でしたね。

そして、暑さを倍増させてる、堂郁です。
本人たちは公私の区別をきっちりしていても、天然系ですから、漏れるんですよ。
タスクフォースでは、それを温かく見守るんですが、こう暑いと、それも限界があって…なお話でした。
でも、本人たちには決して言わない。
「仕方ねえよ」って苦笑浮かべて見ていてくれる、心優しい集団です。

読んでくださいましてありがとうございました。
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関東の片田舎に住む。
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