図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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あちこちで花火大会の看板を見かけます。
毎週末、どこかかしこで『どどーん』と花火が空を彩るんだ…きれいだ。
お盆に親戚が集まると、手に持つ花火を山ほどやった記憶があります。
懐かしい。
花火を見る、玄折です。
ふたりの関係はどうなんだろう。
ただ、昔からの付き合い…というだけ以外にもあって…
な雰囲気の含みを持たせてみました。
『錦冠菊』
玄折 内乱~危機 ねえ、覚えてる?
毎週末、どこかかしこで『どどーん』と花火が空を彩るんだ…きれいだ。
お盆に親戚が集まると、手に持つ花火を山ほどやった記憶があります。
懐かしい。
花火を見る、玄折です。
ふたりの関係はどうなんだろう。
ただ、昔からの付き合い…というだけ以外にもあって…
な雰囲気の含みを持たせてみました。
『錦冠菊』
玄折 内乱~危機 ねえ、覚えてる?
どどーん。
サッシの窓ガラスがゆれる。
バラバラバラバラ…
先ほどの衝撃とは比べ物にならないほどささやかに、空から何かが降る音がする。
折口はふと顔を上げて時計を確認した。
花火大会のチラシでは、もうすでに始まってだいぶ経つ時刻だが、夕刻の雷雨のせいだろうか。
開始が遅れたらしく、先ほどの花火が、花火大会開始の号砲だったらしい。
花火の打ち上げ会場から、一駅ほど離れた場所に折口の住まいはあった。
就職してから、何度か引越ししたが、この場所が一番長くなった。
最初は賃貸だったここも、数年前にマンションのオーナーから買い上げの話が来て、
忙しくて使う暇のなかった貯金を叩いて、買ってしまった。
駅から歩いて10分。
駅を降りると、商店街のアーケード。
ちょっと下町の雰囲気の残る場所だ。
あとひとつ、気に入った理由があった。
窓から花火が見えるのだ。
まったく全景を望めるわけではなかったが、それでも大きな尺玉は、建物の上方でその姿を見ることができた。
「よかった、雨が上がって…」
読みかけの雑誌をラグに投げ出して、折口は窓際に立った。
空が明るくなる。
一瞬遅れて、どどーん、と音が響く。
花火の種類によっては、バラバラバラ、と細かな砂の落ちる音がした。
最初の尺玉が上がったときだった。
玄関のチャイムが鳴った。
折口は小走りに玄関へと走った。
かちゃりと、ドアを開ければ、そこには玄田が立っていた。
いきなり開いた重い扉に驚きつつ、その扉を押さえる。
「おい、鍵くらい掛けろ。女の一人暮らしだぞ」
「あら、玄田君しか来ないわよ」
折口がそう軽口を返すと、玄田は眉間に皺を寄せた。
「だって、メールくれたじゃない?」
折口はポケットに入れてあった携帯を開いて、玄田から受け取ったメールを見せた。
そこには、最寄駅に到着した旨が記載されていた。
玄田が折口の部屋を訪ねるときには、いつもこうして、駅からメールを入れていたから、
より正確の到着時間が予測できたのだ。
「無用心に変わりはない」
一言呟いて、玄田は折口から視線をそらせた。
折口は一本取ったと、微笑んだ。
「あら?雨、また降り出したの?」
玄関に立つ玄田の手には、かさが一本。
ただ、かさの先に水溜りはない。
玄関のドアから体半分外に出して、折口は空をのぞいた。
どどーん。
一瞬の明るさの後に音の振動がやってきた。
「いや、基地を出るときに降り始めてな」
「こっちも、すごい雷雨だったのよ。おかげで花火大会、30分遅れみたい」
折口は慣れた様子で、玄田からかさを受け取り、玄田を部屋に通した。
玄田も慣れたそぶりで、靴を脱ぎ、リビングへと入った。
「いくら俺からメールが入ったからといって、玄関の鍵は掛っとけ」
リビングに入るなり、玄田の怒声が落ちる。
折口は慣れているといわんばかりに、どこ吹く風で、玄田からジャケットを受け取った。
「だって、玄田君が駅から何分かかるかなんて、わかりきってるもの」
自信を持って折口に言われると、玄田は返す言葉を失い、黙り込んだ。
ねっ、と折口に肩を叩かれ、玄田は口をへの字に結んだ。
「ねえ、座って。前半の部、始まったばかりだから」
折口に勧められて、リビングのラグに胡坐をかく。
ローテーブルの上には、次々に小鉢や小皿に盛られた、肴が並べられていった。
キッチンから折口が「ビールにする?」と聞いてきた。
すると、思い出したように、玄田は立ち上がって、紙袋をそのままキッチンへと運んだ。
「土産だ」
折口が紙袋を受け取って、中をのぞくと、丁寧に保冷財で包まれた包みがひとつ。
「なに?」
「笠原が、お前が好きだと言っていた、タルトだ」
折口はその袋を大切に受け取ると、「嬉しい」と一言微笑んだ。
玄田がスイーツの店に一人で入った場面を想像して、折口はさらに深く微笑んだ。
玄田が一人でその手の店に入ることは、ほとんどないからだ。
玄田がタルトを買ったきっかけは奥多摩訓練帰りの車内での笠原の発言だった。
「甘いもの、食べたーい。ケーキ、ケーキ…」
隣に座った堂上に宥めすかされ、手塚に呆れられつつ、笠原は「食べたい」と叫んでいた。
奥多摩訓練場の周辺には、店がない。
給食のおばちゃんが作ったり持ってきてくれる甘味が、唯一だ。
男ばかりだったころには、あまり気にも留めなかった甘味が、笠原が入隊してからは、目に付いた。
「おい、そんなに甘いものばっかり食って…」
と呆れると、笠原は微笑んで「別腹でーす」と答える。
班長の堂上もしまいには、「こいつの前世はカブトムシですから」と答える。
「カドヤのフルーツタルトが食べたーい」
カドヤというのは、角に店があることから店名がつけられた、もとパンやの洋菓子店だ。
丁寧な仕事と甘さ控えたローカロリーが受けて、図書隊の女性に人気がある。
来客用の使い物にもよく利用されていた。
「おい、笠原、なんでまた、カドヤなんだ?」
他にも有名店はあるだろうに…
何気なく聞いた玄田に、笠原は目を閉じてうっとりしながら答えた。
「あそこのフルーツタルトって、その場で作るんですよ。季節のフルーツをカスタードクリームをたっぷり盛った上に飾ってくれるんです。今なら、マンゴーやブドウ、ブルーベリー、モモ、とにかくたくさんの種類が乗るんですよ。小ぶりだから、その気になればひとりでも食べれちゃうし。さっぱりしててコクがあって…おいしいんです」
「おい、よだれ」
堂上にからかわれて、笠原は一気に茹で上がる。
「いつだったか、折口さんとご一緒したときに食べたんですよね。折口さんはショコラタルトもおいしいよっておっしゃってて…」
いつだったかな~と首をひねりつつ、笠原は再び甘味話題へと入っていった。
玄田が車内の話をかいつまんで説明すると、折口は、ああ、と頷いた。
夏の初め、手土産に持参した覚えがある。
お持たせは、たいてい笠原がお茶と一緒に振舞ってくれるから、自分の好みで手土産を選んだ気がする。
「お前、昔っから好きだな、チョコのヤツ」
玄田は懐かしげに呟いた。
折口は嬉しそうに、覚えててくれたんだ、と呟いた。
どどーん。
しゃらしゃらしゃら…
尺玉があがる。
窓いっぱいに、キラキラした彩が広がって、消えていく。
「お前のことなら、なんでも、覚えている」
低く玄田が言う。
それは、大切なものを扱う手の優しさに似ていた。
手のひらで包む温かさに似ていた。
折口は小さく頷いた。
玄田はゆっくりと、隣に座る折口の肩を抱き寄せた。
「お前のことは、なんだって覚えている。忘れろといっても無理だ」
抱き寄せた肩をさらに力を込めて抱きしめる。
折口はそのまま、玄田の胸に倒れこむように抱きしめられた。
「うん…あなたのことも、覚えてる。忘れるなんてできないほどに」
どどーん。
ぱらぱらぱらぱら…
夜空が原色に変わる。
そして、その一瞬後、夜空は何もなかったように藍へと戻った。
「不思議ね。いいことも、悪いことも、なにもかも覚えてるなんて。
あの花火みたいに、どれもキラキラ光って、あっと言う間のことだったのに」
玄田は「ああ」と頷いた。
「きっと、あの花火たちみたいに、印象が強すぎたのね」
くすりと笑い、折口は玄田の顔を下から見上げた。
玄田と出会った頃と変わらぬ、勝気な瞳で、真っ直ぐに玄田を見つめた。
「お前の印象は強烈だったからなあ」
お返しといわんばかりに、玄田も言い返す。
ただ、その瞳は、図書隊特殊部隊の前線に立つときの鋭さは影を潜め、やわらかかった。
お互いに、微笑んで、そのまま花火を見た。
お互いの鼓動を感じながら。
その年の花火大会の最後は、大きな大きな錦冠菊だった。
金色の星がゆっくり夜空を滑り降りていく。
消え際の光露が一際輝きを添えた。
fin.
あとがき
初玄折です。
うーん…微妙です(書いた本人が言うのもなんなんですが)。
玄田と折口は、紆余曲折あって、還暦まで独身だったら一緒になりましょ、ってなったと思うんです。
その紆余曲折がなんなのか、とても気になります。
が、なんとなくわかるんです。友人にもよく似たケースがありますので。
やりたいことがあって、自立してて、寄り添えないんじゃなくて、寄り添わない。
「結婚」という形式にとらわれたくない、というのは、体のいいいいわけなのだとは、友人の談。
玄田は命の危険と隣り合わせ、稲嶺司令を間近で見てきたから、残されたものの切なさを知っている。
折口も図書隊の危険性も、玄田の性格も知ってて、黙ってる。
それでも、お互い思う気持ちって溢れるから、時々こうして会ってるといいなと思います。
ヤマもオチもなく、ただふたりで花火見てる話になってしまいました。
難しかった、玄折は。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
タイトルの『錦冠菊』は花火玉の名前です。「しだれ柳」の別名で知られた、花火です。
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プロフィール
HN:
亜生(あおい)
性別:
女性
自己紹介:
関東の片田舎に住む。
典型的 O 型人間。
せっかちなのにのんびりや。
好物はハチミツと梅酒。
典型的 O 型人間。
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好物はハチミツと梅酒。
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