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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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手柴祭 まずはお題1「キス」です。


『Kiss』
手柴   別冊Ⅰ   甘いの?苦いの?



充電器の上で携帯がメールの着信を知らせる。
手塚は携帯を取り上げて、そのメールを確認した。
時刻は 夜 9 時過ぎ。
気に入らない奴だったら、即効削除だ。

メール送信者は柴崎麻子。
件名は「コンビニ」だ。
本文は件名に続くように「行きたい」。


「はいはい」


手塚はジャケットを羽織り、ロビーで柴崎を待った。

笠原が堂上と付き合うようになってしばらくしたころ、堂上が笠原がコンビニに出かけるときに常に付き合うようになった。
笠原一人のときもあれば、柴崎込みのときもあった。
そのうち、柴崎が手塚にお願いしてきた。

自分が一人で出かけようとすると、笠原が必ず付いてくる。
「女の子が夜一人じゃ危ないから」と。
そうすると必然的に堂上もついてくることになる。


「ほら、あたしお邪魔虫になっちゃうじゃない?あたしの用事なのに、笠原に堂上教官も一緒なんて……」


悪くてねえ。

そう続くとばかり思っていたら。


「うっとうしいったらありゃしない」


思わず噴出してしまった。
柴崎らしい。

それからは柴崎が一人でコンビニまで出かけるときには付き合って一緒に出かけるようになった。
お願いのときに愁傷さがうそのように、毎度メールで呼び出される手塚だった。


「お待たせ」


柴崎がロビーに現れると、その場にいる男たちの態度が急変する。
寮のロビーでだらしなくくつろいでいたものの背筋が伸びたり、げたげた下品な笑い声を上げていたものがニヒルな表情を取り繕ったり。

近頃頓に激しいロビーの変化に手塚はただ苦笑を浮かべていた。


「なによ?」


玄関を一歩出ると、明るさが数段落ち、表情も近くにいるものにしかわからなくなる。
それを狙いすまして、柴崎からつんけんとした問いが飛んできた。


「いやあ、相変わらずだな~と思っただけだ」

「そう?いつもとおりだけど?」

「そう思ってるお前がすごい」

「お褒めに預かり至極光栄」

「さようで」


掛け合い漫才のような言葉の応酬をして、気づけば基地の敷地を出ていた。
すっと手塚が車道側に立ち、そっと柴崎の腕に自分の腕を沿わせた。
腕を組むことはしない。
けれど、寄り添い歩くことで誰もふたりの間を通り抜けることはできないようにガードしていた。


「今日はそっちのコンビニじゃないの」


一つ目の交差点で、いつも利用するコンビニに行こうと直進しかけた手塚の腕を柴崎はくいと引き、右へと曲がった。
いつものコンビニよりは遠いが、この先にも一軒コンビニがあった。


「酒か?」

「ご名答」


柴崎は自室に酒を置いていない。
同室の笠原は柴崎に付き合えるほど酒に強くない。
だから、めったに部屋で飲むことはしない。
呑みたくなった時に酒を買う。
ただし、寮の共同ロビーで買うことはしない。
柴崎の嗜好に敏感な男性隊員たちに情報を与えたくないからだ。
なにかあったときには、こうして酒を求めに外出する。


「これから呑むのかよ?」

「うーん、わかんない」

「呑みたいから買いに行くんだろう?」

「うん、まあそうなんだけどね」


歯切れの悪い返事。
特殊部隊まで聞こえてくる業務上のトラブルはない。
となると、原因は?

笠原か。

柴崎がどこか情緒不安定になるときは、決まって笠原のことが絡んでいる。
今回もそう遠くなく笠原絡みのことだろう。

コンビニで酒をいくつか見繕い、帰路につく。
コンビニの袋は当然のように手塚の手にぶら下がっていた。


「今、笠原、部屋にいないのよ」

「外泊か?」

「ううん。敷地内にはいる」

「む?どういうことだ?」


柴崎は無言で路地の奥を指差した。
そこでは、背の違う二人の人間がひとつの影を成していた。
かすかな喘ぎ声が聞こえた。

手塚は納得する。

暗がりの多い基地敷地内では、場所に苦労しないと聞いたことがある。
寮には独身者しかいないから、誰もがその状況に理解を示す。
そっとしておいてくれる。


「さっき堂上教官から笠原にメールが来て、あの子ジャージの上にダウン羽織って『ちょっと行ってくるね』ですって。この寒空にね~」


……一人残されて寂しくなった……


とは死んでも言わないのが柴崎だ。
自棄(やけ)酒に走るつもりだったのだろう。


「温めあってるかしら?」


ぽつりと呟いて、手塚の腕にするりと腕を回した。


「キスって甘いのかしら?」


唐突な問いに手塚は戸惑う。
口付けの経験がないとは言わない。
けれど正直、自分から求めて口づけを交わしたのは、当麻事件のときの柴崎だけだ。

始まりは柴崎からの突然の口付け。
自分からは携帯電話の交換の担保という口実。

その唇の感触を手塚は今も忘れていない。


「手塚のキスは甘かった?」


誰とのとは決して聞かない。
手塚の恋愛遍歴が偏っていることは柴崎には見透かされている。
いまさら取り繕っても仕方ない。


「強いて言えば歯磨き粉」


爆笑が返されると思っていた。
だから手塚はねえ、と。
ところが。


「あたしは苦かった」


全部を聞かされたわけではないが、柴崎の恋愛遍歴も自分と似たり寄ったりの決して幸福なものではなかったことに、手塚は気づいていた。
ハニートラップも平気と強がるし、自分に向かう男たちの手玉の取り方もピカ一。
でも、自分の気持ちに素直になることはない。
奥底にしまいこんで、大切に真綿で包みこんでいる。

だから、こうして時折ポツリと零れる素直な気持ちを手塚もそっと優しく包み込む。
手塚は自分の腕にまわされた細い腕にぎゅっと力を込めた。


「笠原はきっと蕩けるほど甘いキスしてるわよね」


自嘲の笑いをこぼして、柴崎は「さっ、帰りましょう」と歩を進めた。
しばらく歩くと、手塚の腕にまわされた腕がさらりと解かれた。
正面から図書隊員が歩いてきたのだ。
面識はなく、こちらがあちらを知らなくても、柴崎と手塚を知らない図書隊員はおそらくいない。
一緒につるむことが多いことは知られているから困らない。
しかし、腕を組むほどの仲と思われることを今は避けたい。

無言でふたり並んで歩く。
基地直前の交差点で信号待ち。
対向の青信号が柴崎の頬を青く照らす。

冷たく見えて、実は見せている。
誰よりも優しくてあたたかい。
それを自分だけが知っているという自負。

頼りなげに横断歩道の手前で立つ柴崎の頭にぽんと手を乗せた。
尊敬してやまない上司が同僚を励ますときにいつもする行動だ。


「十分甘かった」


手の下の頭が小さく頷く。


「あたしもよ」


信号が青信号に変わった。
歩き出すと同時に、柴崎は手塚の手にぶら下がったコンビニの袋を奪い取った。
柴崎的には、今まで手塚に預けていた荷物を受け取った体だ。
そして振り向かず、小走りに基地警衛の前を通り過ぎ、寮の玄関へと走っていった。

残された手塚は、ただじっと柴崎の後姿を見つめていた。
手持ち無沙汰になった手をジャケットのポケットに突っ込み、空を見上げた。
ひとつ大きく吐いたため息は、白く天へと上っていった。




fin.

あとがき
手塚と柴崎が大好きな方々がお題に沿って、自分の大好きな手柴の話を繰り広げる『手柴祭』
せっかくお誘いいただいたのと、久しぶりにお題で書いてみたかったので、こっそり参加させていただくことにしました。
おそらく読者さんもみなさん手柴スキーさんでしょうから、ちょっとドキドキです。

柴崎も手塚も当麻事件の時の口付け(ここはあえて、キスとは言わないで欲しいので)をとっても大切にしていると思います。
付き合ってても、結婚しても、そのことを二人とも口には出しません。
お互いにだって秘密事項。
恋愛の螺旋がまだゆるくて、絡み合った一瞬だったから。
だんだん螺旋はきつく絡んで、一本になるんですけど、この時期はまだゆるゆる。
恋愛ベタな柴崎と手塚には衝撃的だったと推測。

そんな口付けを書いてみました。
感想お待ちしています。
もしかして、斜め上方向に向かってしまったかしらと戦々恐々としています。
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