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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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秋になると図書館に行きたくなります。
本の匂いとほの明るい館内の雰囲気に包まれたくなります。
文字を追いかけるのもいいんですが、絵本を眺めるのもいいですよね。
絵本の開架棚はギャラリー。
ただ眺めるてるだけなのに、すごく幸せな気分になれます。

そんな図書館のひとコマ……かな?


『Sleeping Beauty』
堂郁   内乱~恋の障害後   王子様ぁ……



武蔵野第一図書館のロビーが優しい夕焼け色に染まる。

日がずいぶんと長くなった。
夕日が図書館の大きな窓から、長く長く差し込んでくる。
影が面白いように伸びていく。

そして、あっという間に夕闇が迫ってきた。


「柴崎、笠原を見なかったか?」


閉館時間が近づき、カウンター業務をしつつ、一日の業務の閉めを始めた柴崎は堂上に声をかけられた。


「いいえ。笠原、館内警備だったんですか?」

「いや。今日は午後から業務部の応援に貸し出した」

「貸し出したって、くすっ。ネコの手ですか?あの子」

「異様に子供受けするんで、重宝がられてるんだ」

「そうですね。男の子相手に身体張って遊べるし、女の子相手のこまごましたことも好きだし」


苦笑する堂上に柴崎も苦笑を返す。
郁の面倒見のよさは業務部でも有名で、児童イベントにちょくちょく借り出されていた。
特殊部隊が特殊部隊としての業務に専念せずに済んでいる、落ち着いた今日この頃だからできることだが。


「イベントはとっくに終わってますよ。児童室もさっき担当者が施錠してます」


柴崎はカウンター後ろの館内インフォメーションを振り返り、堂上に告げた。
堂上は「まったく、アイツは」と呟いて、柴崎に軽く礼をして児童室の方向へ歩いていった。
堂上の後姿をくすくす笑いながら柴崎は見送った。


「『まったく』って、その言葉そのまま、堂上教官、あなたに返してあげますわ」


こうして、堂上が郁を探すことは珍しくない。
特殊部隊初の女性隊員ということで見えない軋轢に巻き込まれ、一人悩み、その結果人気のない場所にもぐりこむことが今までに数回。
その度にこうして堂上が探し回った。
「今日の業務日誌を提出してないからな」と言い訳しながら。


「過保護過ぎるんじゃありません?教官どの」


見えなくなった堂上の背中に柴崎はもう一度苦笑を送った。


カウンターに行く前に一度覗いた児童室を堂上はもう一度覗いた。
入り口は施錠されて、ドアには『CLOSE』のプレートが下げてあった。
児童室の灯りは消され、そこだけすっかり夜の闇に包まれていた。

大きくため息を吐いて、堂上は児童室から続く開架の列を一列ずつ見回り始めた。
児童イベントに借り出されたとき、持ち出されたまま放置された児童書を片付けることがあるからだ。
書庫業務で分類され収められているべき場所に入っていない本に奔走されることを経験しているからか、郁は本を開架棚に戻すときにその他の本の点検も怠らない。
他の図書館員より時間がかかるのも仕方ない。

児童書の背の低い開架棚と一般書の背の高い開架棚の間の曲がり角を曲がる。
ほんのわずか、灯りのない場所になる。
閉館時間になると徐々に点灯箇所を減らして、館内にいる利用者に退館を促す。


「どこへ行きやがった」


一人ごちて、堂上は背の低い児童書の開架棚をもう一度見回した。


「すー、すー」


と、どこからか風のような息のような、なにかが聞えた。
空調の音とは違う。
窓を見れば、そこはしっかり閉められている。

とすると、これは?

耳を澄まし、堂上は音のする方向へゆっくりと進んだ。
先ほどとは逆順に開架棚を回る。


「すー、すー」


暗闇の足元からその音は聞えていた。

児童イベントで使ったのだろう、大きな絵本を抱えて、郁はすやすや眠っていた。
その寝顔は、穏やかで幸せそうな微笑を浮かべていた。


「まったく、お前は……」


郁が抱えていた絵本をそっと抜き取ろうと堂上が手を伸ばしたとき、ずるりと郁の身体が傾がった。
開架棚に不安定にもたれていたからだろう。
スローモーションでもたれたままの格好でずるりと郁の身体が動く。

慌てて、堂上は床と郁の身体の間に身体を滑り込ませた。
郁の頭は床と仲良くなる前に堂上の肩にこつんと乗った。


「おうじさまぁ……」


衝撃で目覚めた郁は、堂上に微笑んだ。
それは、夢見る乙女、と言っていい微笑だった。
抱えた絵本はお姫様物語。
堂上はちょっとくすぐったい妙な気分になった。

と、普通ならばこれで目が覚めるだろう。
いくら疲れているとはいえ、業務中なのだから。

しかし、だ。
郁はもう一度「おうじさまぁ」と甘い声を堂上の耳元で囁いて沈没したのだ。
一瞬甘い雰囲気に気分を良くした堂上だったが、さすがにこのままではいられなかった。
閉館時間を過ぎると、シャッターが閉まり居残り申告のない者は退館の際に面倒な手続きを取らなければならない。


「おい、起きろ。笠原、起きろ。閉館時間だ」


肩にもたれた郁の耳元で優しくそう囁くのだが、郁は幸せそうに微笑んだまま一向に起きる気配はない。
頭の座りがよくないのだろうか、郁は堂上の肩に頭を擦るようにしてくる。
そして「すー、すー」と寝息を立てていた。

かつ、かつ、かつ。

閉館の見回りだろうか、足音が近づいてくる。
堂上は慌てて立ち上がった。
自然、郁の身体は支えを失い、床に激突した。


「いったー」


ごちん、と派手な音を立てて床に転がった郁はこれまた大きな声を上げた。


「あほう。そんなところで寝こけるからだ」


腰に手を当てて郁の頭上に堂上の罵声が降り落ちた。
その声ですっきり目が覚めた郁は立ち上がろうとして、再びこけた。
変な座り方で眠っていたせいで、足がしびれていたのだ。
バランスを崩して郁が転びかける。
すかさず堂上がそれを抱きとめた。


「あああ。はーんちょお、そういうことはさあ、外でしようねえ」


足音の主は、戻ってこない班長と班員を探しに来た小牧だった。
ちょうど堂上が郁を見つけるのと同時に二人を見つけていたのだが、気配を殺してじっと成り行きを見ていたのだ。
毎日いろいろやらかしてくれるふたりを眺めているのが楽しいのだ。


「お前、質悪っ」


堂上が吐き捨てるように言う。
小牧は「ははは」と笑って、郁が落とした絵本を拾い棚へと片付けた。


「お姫様の目も覚めたことだし、戻るとしようか」


小牧の台詞に郁は真っ赤になって小さく「すみません」と頭を下げた。
堂上はぽんとその頭に手を乗せた。

特殊部隊事務室へ向かう二人の背中を、小牧は肩を震わせて見ていた。
いつの日かふたりが本当に王子様とお姫様にならんことを祈って。


fin.

あとがき
弓さんの2巻、INDEX 7 の寝顔がこのお話のすべてです。
「王子様」ときたら「お姫様」に登場していただかないとなあ、と思って書き始めたんです。
ふと思ったタイトルのお話。
邦訳でいろいろなパターンがあるんですが、王子様お姫様の王道です。
王子様のキスでお姫様が目覚めるってのです。
すごく素敵なタイトルだったんですが、コメディになってしまいました、あれ?
弓さんの2巻を読んだせいだと思うのだけれど……
でも、王子様が出てくるから、いいよね、笑。

柴崎も小牧もふたりの恋の行く末を見て楽しんでます。
応援はしてるんだよ。
でも、楽しんでるんです。
だから、小牧さん、出歯かめになっちゃってるんです。

読んでくださりありがとうございました。
感想お待ちしています。

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関東の片田舎に住む。
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