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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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ふと、静かだなって思うときってありませんか?
こんなに静かだったかなと。
あたりを見回せば、いつもいる人がいなかったり、いつも動いている機械が止まっていたり。
気づかなければ、なにも感じなかったのに、気づいてしまうと、その静けさが妙に居心地悪くて落ち着かなくなってしまう。

そんな午後のお話です。


『 Brief silence 』
堂上  郁図書隊一年目を想定。  気づかなかったけど…



静かだ。
ひどく静かだ。


堂上は机の上に山積みにされた書類を片付けながら、事務室をぐるりと見回した。
すぐ横の机では、やはり山積みの書類を涼しげな顔をして崩していく友人。

時折、キャビネットに資料を探しに出かけたり、コピーを取りに席を立つ、隊員はいる。

が、しかし。

静かだ。


「ん?堂上、問題?」

書類を片手に持ったままでいたためか、隣の友人から心配の声が掛けられる。


「いや、問題はない。ただ…」

「ただ?」

「静か過ぎて、妙に落ち着かん」


途端に、友人の上戸が入り、がたがたと机が揺れた。
静か過ぎる事務室に、その上戸は響き、事務室にいた隊員の注目を浴びることとなった。


「小牧、どうした?」


片付けた書類を持った先輩隊員が近づいてきた。
小牧は上戸が入ったまま、返事をしようにも、声が出ない。
仕方なく堂上が返事を返した。


「妙に静かで落ち着かないと言ったら、このとおりで」


すると、堂上の返事を聞いて、先輩隊員も笑い出した。


「そりゃそうだろう。笠原がいないんだから」



そうか、この静かさは、笠原がいないせいだったのか。



堂上は一人納得して、ふと視線を主のいない机に移した。

そうだ、あいつがいないから静かなんだ。
書類を片付けていても、資料を作成していても、なんだかんだといつも賑やかだ。
賑やかと言っても、むやみやたら騒いでいて仕事をしていないのではない。
仕事をしていて、これがわからん、あれが足りない、そういった類の賑やかさだ。


「そうそう、笠原さんがいないから静かなんだよ。なのに、堂上ったら、それに気づかないんだもん」


涙目で、小牧が堂上を見る。


「仕方がないだろう。同じ班なんだから、いつもいるのが常だから、な」


ぷっと膨れて書類に視線を落とす。

しかし、堂上の耳がほんの少し色づいたことを見逃すほど、小牧も先輩隊員も抜けてはいなかった。


「大切なお姫様だからな」

「どこが、お姫様ですか、あいつの!」


堂上はふてくされた声で返事をする。

すかさず、事務室の奥から、別な隊員の声が飛んだ。


「王子様の大切な姫じゃないか」


特殊部隊内で、笠原の王子様が堂上だということは、周知の事実である。
堂上の強固な緘口令のおかげで、笠原の耳には入隊からこれまで、その事実が伝えられたことはない。

笠原はなにも知らぬまま、王子様に会える日を夢見て、毎日必死に励んでいる。
そのけなげな様子は、先輩隊員たちにも微笑ましく映り、陰ながら笠原を応援している者も少なくない。

ただ、その応援の仕方が、笠原にとっては非常に好ましい方法であったとしても、王子様本人の堂上にとっては、時に針のむしろ状態になることも多々ある。


「大切な姫を守るための試練ってとこかな?」


己の思いなど一切口にしない堂上に、聡い友人はそんなことを言う。



試練ねえ…ありがたくねえ。



ありがたくてもありがたくなくても、守りたい存在に違いはない。
理想の姿に美化されて、いつか会える日を夢見ている笠原に自ら王子様であることを明かすつもりはない。
明かしたときの笠原の落胆振りが想像できて、いやになることはあるが…

そのときまで、大切に守って育ててやりたいと、堂上は心から思っていた。




ばたばたばた…

急に、廊下が騒がしくなって、がたんと事務室の扉が開いた。


「堂上教官!」


飛び込んできたのは、笠原だった。
やや遅れて、手塚が息を切らせて飛び込んできた。


「笠原、ただいま、防衛部との合同訓練から戻りました!」


息を弾ませて敬礼付で帰所報告をする。
手塚も無言で敬礼する。


「む。ご苦労」


いきなり、事務室が賑やかになる。
モノクロの空気がパステルへと変わる。


「騒がしいやつだな。あれだけ廊下は走るなと言っただろう」


ぽんと軽く笠原の頭に拳骨を落とす。

いったー、と頭を押さえて、笠原は小さくなりながら「すみません」と謝った。
手塚からは「だから、走るなって、俺は止めた」と重ねて注意が入り、笠原はさらに小さくなった。



「堂上、落ち着くか?」


先輩隊員がにやにやしながら堂上の肩を叩く。
笠原は、ふにゃ?と不思議そうに堂上を見上げる。
小牧は軽く上戸が入って、いすをくるりと後ろを向ける。



ここで、俺はなんて返事をすればいいんだ!
落ち着きます!って言えっていうのか!


堂上は心の中で盛大に叫び、踵を返して自分の机に着いて、再び書類を格闘することにした。


それから終業まで、堂上は事あるごとに、にやついた先輩隊員に小突かれ、仕舞いには「いい加減仕事してください」と叫ぶ羽目になってしまった。

それを見ていた笠原が不思議そうな表情で堂上を見つめ、そのことがさらに特殊部隊事務室をにぎわすことになろうとは、当の笠原には思いも寄らないことだった。



そんな穏やかな日もある。



fin.



あとがき

どうして今日はこんなに静かなんだろう?
ひとりも好きだし、静かなのも好きです。
でも、妙に落ち着かなく感じるときもあります。

そんな堂上を書いてみました。
最初、堂上のモノローグで書き始めたんですけど、堂上の独り言って難しい!
図書館戦争のせりふが、軍隊調のものが多いからかしら?
一人称なんだか、三人称なんだか、ごちゃまぜになってしまいました。

時間軸は、郁が特殊部隊に配属されて、しばらくしてからのこと。
新人ということで防衛部と合同で訓練もあるだろうと設定。
堂上はそうなんですが、他の特殊部隊隊員も郁がいないと静かで寂しいと思うといいと思います。
特殊部隊のムードメーカーになるんです、郁ちゃん。

思いついて書いたんで、寝かせてありません。
(いつもは最低一週間寝るんですよ、うちの SS は)
誤字脱字、意味不明な表現は見逃すか、こっそり教えてくださるとうれしいです。

感想をお聞かせいただけたらうれしいです。
読んでくださり、ありがとうございました。
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