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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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みなさんは七夕飾りを飾りますか?
我が家は山ん中なので、笹はちょっとそこの山(知人の)で刈ってきます、笑。
ゴミの分別収集が厳しいので、飾りは可燃物だけで作成。
幼い頃を懐かしんで思わず熱中して作っちゃいます。

地元図書館は子供向けイベントとして七夕飾りを飾ります。
短冊も用意して、願い事を下げられるようにしてあります。
ちびっこの手の届く範囲は、下げるところを探すほうが大変な混雑振りです。
大人はなるべく隠れる場所を探して下げてます、笑。

武蔵野図書館でもきっと恒例行事で七夕飾りしてると思います。
そんなお話。


『七夕の願い事』
郁+α 危機~ あなたの願い事はなんですか?




「本日は、閉館後、七夕の笹を飾りつけする。手隙のものは図書館ロビーに集合」


七夕を数日後に迎えるある朝、朝礼の最後に、玄田から伝えられた。
恒例行事とあって、誰からも質問はなく、そのまま午前の業務へと各々が向かった。


「七夕飾り、武蔵野第一図書館のは大きいんですよね」


昨年、ロビーに飾られた七夕飾りを見て、感激の叫びを上げた郁はうっとりと昨年の情景を思い浮かべた。
図書館入り口の自動ドアが開くたびに、吹き込む風にそよそよと揺れる笹。
願い事が書かれた短冊がひらひらと、まるで願い事を空に届けるかのように舞い揺れる。


「綺麗だったよねー」


ぽかん。

いきなり、丸めた書類が頭に振り下ろされた。


「いったーい。なにすんですか」


頭を抱えて振り向けば、仁王立ちした堂上が眉間の皺を増やして立っていた。


「貴様、先ほどの隊長の話を聞いていなかったのか?」

「聞いてましたよ。業務後に手の空いた隊員は七夕の飾りをするって」

「そうだ。七夕の飾りは業務後だ。今じゃない。さっさと仕事しろ」

「はあい」


返事をした郁の顔は、誰が見ても頭の中では、別なことを考えているのは明確で、堂上は苦虫をつぶした苦い顔で郁の背中を見つめた。




堂上班も特殊部隊の先輩も、郁のことをわかっているようで、その日はさまざまな場面でフォローが入った。
そのたびに盛大に堂上から拳骨を食らうのだが、痛みが引くと同時に、郁の頭の中には七夕飾りが思い浮かぶのだった。




なんとかその日の業務が終了し、いつもは一番最後の日報提出も一番先に提出して、郁はロビーへと走っていった。


「張り切ってるね」


走り出て行く郁の背中を小牧は笑って見ていた。
堂上もその背中を見ながら、苦笑を浮かべた。


「ここ何日も業務部の七夕担当と一緒に、飾りを作っていたんだと」

「そうらしいね」

「って、お前どこからその話を…」

「……」


小牧は無言で、郁に先を越されて必死に日報を書き上げる後輩を指差した。


「苦手なのに、付き合わされたって、辟易してたよ」

「業務は起用にこなすのにな」

「苦手分野は誰にだってあるでしょ、班長」

堂上も手こずってたじゃない、新人のとき。


吹流し、網飾り、くさりかざり…
折り紙とはさみとのりで簡単にできる飾りを四苦八苦して作ったことを堂上は思い出し、眉間に皺を寄せた。


「よくそんなこと覚えてるな」

「ほら、弱みは常に握ってないと、ね」


食えない笑顔の小牧に堂上はかっと吠え付く真似をした。




図書館ロビーに出向くと、そこには業務が終わった図書館員たちが大勢集まっていた。
吹き抜けのロビーには、すでに大笹が立てられ、その周りには子供の背丈ほどの小笹は何本か立てられていた。


「堂上教官」


ダンボール箱を運んでいた郁が大きな声で声をかけた。
一緒にダンボールを運んでいる女子館員は小さなダンボールひとつをやっと運んでいるのに、郁がその倍はありそうな箱を二段重ねで運んでいる。
しかも、軽々と…

堂上はさっと郁に駆け寄り、ダンボール箱をひとつ持った。


「教官、大丈夫ですよ。中身は飾りなんで、すっごく軽いんですよ」


抗議の声を郁があげる。
しかし、堂上はそれには答えずに、ダンボール箱を運んだ。

大笹の周辺に、飾りの入ったダンボールが置かれ、郁と堂上もそこに箱を下ろした。


「大丈夫だって言ったのに…ありがとうございました」


不服の声と一緒にしぶしぶといった感謝の言葉が出る。
堂上は郁をじっと見て、一言言った。


「こういうときはひとつにしとけ」

「だって、持てるのに…」

「持てても、ひとつにしとけ」


言い捨てるように、堂上はさっさと別な場所に行ってしまった。
するりと隣にやってきたのは、柴崎だった。


「よかったわね、堂上教官来てくれて」

「いや、別に大変じゃないし。だって、重くないんだよ、中身は飾りで、全部紙だし」

「『お手伝いしましょうか?』って声掛けたがってるのが、うじゃうじゃいる中で、気が気じゃなかったんでしょ」


へっ?と郁は素っ頓狂な声を上げて、柴崎があごで指し示す方向を見る。
郁の視線が向くと、そそくさとなにやら作業をしだす男性職員がちらほら見えた。


「そっ、あいつら、笠原ファンクラブ」

「ファンクラブって、なんだ、それ?」


痴漢事件で惜しげもなくさらされた郁の美脚を、幸運にも見た男性職員の中で密かに結成されたらしい。
同じ敷地内勤務でも、特殊部隊と図書館員では、よほどでないと一緒になることはない。
今日は、その「よほど」のことで、郁に声をかけようと目論むものが少なくなかったのだ。

まるきし自覚のない郁は「なんだそんなつまんないことで」と、自分の仕事を横取りされて不機嫌いっぱいだった。
柴崎は「まあ、あんたはそれでいいのよね」とひとり納得して、郁と一緒に大笹の飾りつけ場所へと向かった。




作業部隊は主に三班に分けられている。
大笹の飾りつけ。
小笹の飾りつけ。
短冊と短冊を書くための机およびマジックの用意。

郁は大笹担当に、業務部の担当者を拝み倒して入れてもらっていた。
どうしても大笹に飾りたいものがあったからだ。




「今年の飾り、凝ってるね」


やはり、大笹班の小牧が堂上にひらひらと飾りを見せる。
小さな星が連なった、星飾りだ。


「細かいな…手先の器用なやつがいるんだな」


大笹の上部の飾りつけは、二階のエントランスから行う。
星飾りを斜め掛けするように飾る。
それはまるで、天の川のようだ。


「これもすごいよ」


次に小牧が持ち出したのは、吹流しのついた星だ。
ご丁寧に吹流しの先にはさらに細かい星がついている。


「折り紙が趣味のやつでもいるのか?」


流れ星のように、大笹のところどころにバランスよく配置していく。

そのほかにも、丁寧に切込みを入れ、開くと美しく広がる網飾りが何色も用意されていた。




「ありがとうございます。タスクフォースのみなさんに高いところをお願いすると、安心です」


そう声をかけてきたのは、業務部の七夕担当者だった。


「いや、俺たちも楽しんで飾ってますから」


堂上が返す。
小牧が「今年の飾りは、例年以上に凝ってますね」と付け加える。

すると、担当者は階下で飾り付けをする郁を指差して「彼女のおかげです」と言った。


「笠原、ですか?」


業務のうっかりぶりは例を見ず、フォローの絶えない部下を堂上と小牧はいぶかしげに見た。


「ええ。彼女器用だし、飾りのこと詳しくて、すごく助かったんです」

「お役に立ててよかったです」


思わぬところで部下の評価を聞き、堂上は思わず頬を緩めた。


「ついでに目じりも下がってるけど?」


小突かれて、堂上は「いいだろ、めったにないことだから」と開き直った。




飾りも終わりに近づき、ロビーの掃除が始まる頃、小さな悲鳴がロビーに響いた。
堂上と小牧は、それが郁のものだと瞬時に理解して、悲鳴の方向に走り出した。

悲鳴は、階段上部から聞こえた。
階段を駆け上がると、手塚に片足をつかまれて、二階ロビーの柵の下部に必死につかまる郁が見えた。


「笠原!」


堂上は駆け寄り、郁の腰に手をかけて、せいのっ、と手塚と一緒に郁を引き上げた。


「なにやってんだ、このドアホが」


ぺたりと座り込む郁の頭上に雷を落とす。


「すみませんでした!」

「すみませんじゃないだろう。いくら訓練しているからって、二階から落ちたら、骨の一本も折れる」

「…すみません」


すみませんと言うわりに、郁は頬を膨らませて不満顔だ。


「その顔、少しも反省していないだろう、このバカもんがー」


堂上がふたたび怒鳴りつけると、郁はすっくと立ち上がり、「今度は落ちません」と言って、柵に手をかけた。

その手を掴んだのは、手塚だった。


「これつけるの!離してよ」

「危ないから、止めとけ」

「平気だったら」

「また落ちるぞ」

「落ちない」


ふたりの押し問答は、堂上の罵声で止まった。


「このアホが。笠原、いい加減にしろ」


堂上の突き放した言い方に、郁はびくんと震え、俯いた。


まずい、また怒らせてしまった……
そんなつもりはまったくないのに、心配かけて……

泣くな、あたし。


「…すみませんでした」


やっとの思いで言葉を伝える。

手にした飾りの星をぎゅっと握り締めた。


とそのときだった。
堂上は郁の手を引いて、二階ロビーの端に歩み寄った。


「堂上、教官?」


堂上の行動の意味がわからず、郁は慌てた。
たった今、自分の行動を厳しく注意されたばかりだったから。

もう一度自分の手を引く人の名を呼んだ。


「堂上教官」


堂上は柵から身を乗り出し、大笹の一枝を掴むと、ぐいと大笹全体をこちらへと引き寄せた。
大笹は土台は元より、幹も枝も、あちこちロープで固定されている。
それを大きく動かすのだから、ぎしぎしと不気味な音がロビーに響いた。
一階で事故のないように警備している特殊部隊の先輩から堂上に激が飛んだ。


「すみません。飾りをひとつ付け忘れました」


片手を上げて先輩に謝罪の合図を送る。
そして、そのままの姿勢で、後ろに立つ郁に「早くしろ」と言う。
郁はすばやく、大笹のてっぺんに、握り締めて少しつぶれかけた大きな星を取り付けた。
星が付いたことを確認した堂上は、ゆっくりと大笹の枝を離し、階下の先輩隊員に「終了しました」と大声で告げた。


大笹のてっぺんに飾られた大星を満足げに眺める郁の頭に「ぽん」と堂上の手が下ろされた。


「無茶するな。寿命が縮んだ」

「すみません。でも、どうしてもあの星をつけたかったんです」


頭に堂上の手を載せたまま、郁は頭を下げた。


「怪我もなかったし、今後は注意するって事で……ね、班長」


小牧の一言で、その場は収まった。




ロビーの掃除も終り、図書隊員たちは帰宅の途につく中、堂上班と柴崎は七夕飾りを眺めていた。


「頑張ったかい、あったじゃない、笠原」


柴崎が郁をねぎらう。

七夕飾りを作るという話を聞いてから昨晩まで、郁は暇を見つけては飾りを作っていた。
それも、単純な飾りだけでなく、凝った飾りを楽しげに作るのだった。


「だって、七夕飾りするの、すんごく久しぶりだったから、はりきっちゃった」


てへっ、と舌を出して郁は照れた。


「笠原さん、器用なんだね。業務部の人、褒めてたよ」


小牧に褒められて、郁は真っ赤になって「そんなこと」と呟いた。
その様子がとてもかわいらしく、堂上は小牧相手にやきもちを焼く羽目になった。

堂上のその様子にいち早く気づいた柴崎は、郁に


「ねえ、どうして笹のてっぺんに星を飾りたかったの?」


と、昨夜も聞いた話を持ち出した。
昨夜も話したのに、変な柴崎、と思うも、あまり深く考えずに郁は堂上班の前でも同じ説明をすることにした。


「あたしが小さかった頃、まだ兄たちも一緒に七夕飾りをしていた頃なんですけど、七夕飾りの一番高いところに星を飾った子の願い事が一番最初に叶うって一番上の兄が言ったんです。で、その頃一番大きかったのは当然一番上の兄で、あたしは一番チビだったんで、七夕飾りの一番上に星を飾ることはずっとできなかったんです。あたしが一番高いところに星を飾れるようになった頃には、もう七夕飾りをすることもなくなって、ずっと忘れていたんです。でも、図書隊に入ってこの大きな七夕飾りを見たら、そのことを思い出して、どうしても一番上に星を飾りたかったんです」


夢見る乙女の面持ちで、郁は目の前の大笹を見上げた。
つられて堂上も大笹を見上げた。


「お前の願い事、叶うといいな」


郁の頭にぽんと手を置き、堂上は呟いた。


後ろに立つ小牧と柴崎は、この光景を見て、顔を見合わせた。


「笠原は乙女だと知ってましたけど、堂上教官も結構乙女路線走ってるんですね」

「知らなかった?堂上がロマンチストだって」

「笠原以上だとは、知りませんでしたけど?」


ふふふ、とふたり忍び笑いを浮かべた。




翌日から、願い事を書いた短冊が山ほど下げられるようになった。
利用者はもちろん、図書隊員たちも、時間を見つけて、短冊を下げにやってきた。


「あっ、進藤一正」


昼食を終えた郁と柴崎、手塚の同期三人組がロビーにやってくると、大笹の枝に短冊を下げている進藤に会った。


「進藤一正は何をお願いしたんですか?」


郁が聞くと、手塚が「そんなこと聞くのは失礼だぞ」と郁の腕を引っ張った。
進藤は手塚に「気にするな」と言い、郁にこう告げた。


「笠原の射撃の腕が上がりますように」


それを聞いた郁は目を大きく開いて、口をへの字に曲げた。
そして、口を尖らせて進藤に抗議した。


「それってあたしの願い事で、進藤一正の願い事じゃないじゃないですか!」


すると進藤は、ははは、と高らかに笑い、郁の肩をぽんと叩いた。


「お前の射撃の腕が上がれば、特殊部隊全体の射撃レベルが上がって、万々歳というわけだ」

「よかったな、お前の願い事、ひとつ進藤一正が書いてくれたぞ」


手塚にも肩をぽんと叩かれて、郁はますます口をへの字に曲げた。
隣では柴崎が口を押さえて、肩を震わせて、必死に声をこらえて笑っていた。


「いいです。願い事は自分で願いますから」


口をへの字に曲げたまま、郁は一枚の短冊を手に取り、さらりと願い事を書いた。




「検閲がなくなりますように」



郁は大笹のてっぺんの星を見上げ、短冊を大笹の一枝に下げた。
ちょうど図書館の入り口のドアが開き、夏色の風が吹き込んだ。

短冊は空に向かって舞うごとく、ひらひらと揺れた。



fin.


あとがき

消化不良な終わり方で不本意なんですが、これ以上続けるとだんだん七夕から離れていってしまいそうなので終えてしまいました。
郁ちゃんのほかの願い事のこととか、堂上教官の願い事とか、柴崎の願い事とか、手塚の願い事とか、もうたくさん書きたいんですが…

短冊に書いてご利益のある願い事は芸事だそうです。
だから、進藤一正の願い事はきっと叶うんですよ、笑。
よかったね、郁ちゃん。

笹を用意したのは、特殊部隊です。
奥多摩に訓練に行った班が調達。これも毎年恒例です。

堂上教官も短冊下げにくるのかな?
アニメ状況○九の時みたいに、夜中にこっそりと。
小牧教官は毬江ちゃんが図書館に来たときに一緒に仲良く下げそうです。
柴崎は「あたしが書いた短冊ってオークションにかけられちゃうから」って言いそう。
手塚は郁に「願い事もないなんてつまんない人生ね」とかなんとか煽られて勢いで書きそう。

読んだあと、そんなことを想像していただけたらうれしいです。
感想などお待ちしています。
読んでくださりありがとうございました。
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初めまして、真美と申します。毎日お伺いしています。エピソードがとっても素敵です。七夕のお話、やさしい気持ちになれました。ありがとうございました。
真美 EDIT
at : 2008/06/29(Sun) 19:51:30
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亜生(あおい)
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関東の片田舎に住む。
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