図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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10月19日(10=どう、19=いく)の『堂郁の日』にはお祝いできなかったのですが、遅ればせながら今日お祝いさせていただきます。
堂郁の象徴はやっぱりカモミールだと思いまして、それをモチーフにしてみました。
危機の頃なので、ふたりとも自分の気持ちに気がつき始めてるんだけど「この気持ちなんなの?」な状態です。
『大地のリンゴ』
堂郁 危機 励めよ。
堂郁の象徴はやっぱりカモミールだと思いまして、それをモチーフにしてみました。
危機の頃なので、ふたりとも自分の気持ちに気がつき始めてるんだけど「この気持ちなんなの?」な状態です。
『大地のリンゴ』
堂郁 危機 励めよ。
ばたばた、と廊下を走る音が響く。
図書館というところは、静寂という言葉が似合うほど、基本的には静かなところだ。
それは、図書隊でも同じであるはずなのだが…
「すみません。遅れました」
ばたばた、と廊下を走る音が止まると、がたんと派手な音を立てて、特殊部隊事務室の扉が開いた。
勢いよく飛び込んできたのは、特殊部隊の新人、笠原郁だ。
「何度言ったらわかる。廊下は走るな」
「すみません。図書室の時計が遅れてたものですから」
事務室中央の壁にかかる時計を見て、頭を下げる。
どこの世界でも、隊と名のつくところでは基本中の基本、5分前集合の時間をわずかに過ぎていた。
「まあ公式じゃないから、いい。これから気をつけろ」
堂上は苦笑して、事務室の空いた机へと移動した。
今は昇任試験筆記直前だ。
郁は士長試験を受験する。
「ま、最初の昇任試験なんて筆記は図書手帳に書いてあること丸暗記できれば通るレベルだし…」
と軽く言ってくれる柴崎と手塚は、筆記試験に問題のかけらもない。
それとは逆に、郁にとって筆記試験は問題だらけなのだ。
もともと座学は苦手で、書いてあることを一度で暗記できる頭はない。
身体で覚えれば、一度で覚えられるのに…と何度も郁は口にした。
口にしたところで、図書手帳に書いてあることをどうすれば身体で覚えるのかわからない。
地道に根気強く、ひとつひとつ頭に叩き込んでいくしかないのだ。
「うちの班から新人一人だけ落とすような笑えることにはしないから安心しろ」
そう言って堂上は空き時間を見つけては郁の筆記試験を見てくれる。
今日も郁は堂上と筆記試験対策をする約束をしていたのだ。
その時間に遅れそうになって、郁は廊下を全力疾走したというわけだ。
「笠原、始めるぞ」
机上に、図書手帳と、穴あき問題が数枚乗せられる。
その日に確認する図書手帳の頁は予め堂上から予告されている。
郁はそれを予習してくる。
図書手帳の該当頁を堂上と一緒に読み合わせした後に、堂上が作成した穴あき問題を解く。
普通に考えれば、これだけで十分な筆記対策だ。
ところが、郁にはこれでも問題が残る。
予習もしている。
堂上との読み合わせもしている。
それなのに、いざ問題を解くと、間違いが多いのだ。
「お前なあ、その問題、三回目の間違いだぞ」
「ええ、違ってますか?」
小首を傾げて、図書手帳を捲る。
捲りすぎて、郁が手をかけるところは色が茶色く変っている。
うーんうーんと唸る郁を堂上は眉間に皺を寄せながら、楽しそうに眺めていた。
出来が悪い子ほど可愛い、とはこういうことなのかと、心の中で呟いていたなど、郁は知らないことだ。
回答を書いては、消しゴムで消す。
ペンを持ったままで消しゴムをかけるから、ペンの頭に付いたチャームが揺れて音を立てた。
「何つけてんだ?」
郁が正答を出すまで暇な堂上は、ついそのチャームに手を伸ばした。
それはビーズで作ってある、小さな花のようだった。
「カミツレです。この間、文房具屋で見つけたんです」
そうか、と堂上は頷いて、先日の郁との会話を思い出した。
「お花」が欲しいと分不相応な発言をした郁に盛大に拳骨を落としたのだ。
なぜカミツレが図書隊の意匠に入れられることになったのかを話した。
そして、花言葉も。
「あたしもいつか絶対取ります。カミツレ」
そう言いきった郁を眩しく見つめたことも。
「『苦難の中の力』、覚えてます」
ぽつりと呟いた郁は腕まくりをして、問題に向った。
堂上はそんな郁の頭にぽんと手を置いた。
郁は顔をあげて、ふにゃりと笑った。
「教官、どうしよう…これじゃ、あたし、昇任試験落ちます。せっかく教官が教えてくれてるのに…どうしよう」
いつも前を真っ直ぐ見て、力強く進む部下の情けない顔を見て、堂上はその頭を撫でた。
「大丈夫だ。まだ時間がある。弱音を吐くな」
「はい」
空元気に返事をして、郁は再び問題に向った。
文字を書くたびにしゃらしゃらとカミツレが揺れる。
その度に、堂上は郁を見つめた。
「できました」
満面の笑みで郁が解答用紙を堂上に差し出す。
さらりと見て、堂上は眉間の皺を深くする。
「アホか貴様!まだ違ってるわ」
「えええ、そうなんですか」
ふにゃりと顔を歪ませて、郁は大きくため息を吐いた。
「カミツレまで行かないかもしれません…教官」
「そんなのやってみなけりゃわからんだろう。やる前からあきらめるな」
「でも~~~」
「アホウ」
堂上は郁の頭を拳でぐりぐりと押した。
郁は「痛~い」といいながら、意気消沈していた。
「俺がついてるから、大丈夫だ」
どう考えても理論的でないはない言葉に、郁は頬を染めて小さく「はい」と返事をした。
それからも、正答率の低さに堂上が唸りながら、郁の筆記対策が続いた。
その日の分を終えて、郁は堂上に礼を言った。
堂上は次の分を予告して、自席へと戻っていった。
郁が大きく息を吐き、いすに座ったまま伸びをすると、いきなりその腕を掴まれた。
「うひゃあああ」
突然のことに、大声を上げると、次はいきなり口を塞がれた。
もごもごして、後ろを振り向くと、笑顔の柴崎がいた。
「いい雰囲気だったわねえ、堂上教官と」
ウィンクする柴崎は、明らかに揶揄モードだ。
「そんなんじゃないわよ。筆記試験対策で見てもらってんの」
「いいわねえ。あたしもお願いしようかしら」
「そんな必要ないでしょう」
「まあね。試験対策は必要ないけど、教官の個人授業なら、ぜひお願いしたいわあ」
柴崎がハートマークつきで投げキッスを堂上に送った。
自席に戻ったものの、郁が気になる堂上はこちらを見ていて、その投げキッスも見てしまった。
柴崎を瞬殺した堂上は音を立てていすに座り、書類に目を通し始めた。
「ああら、無視されちゃったわ。まったく堂上教官たら~」
手のひらを上に向けて肩をすくめる柴崎に、郁はほっとしたように微笑んだ。
「笠原、頑張んなさいよ」
「うん、わかってる」
郁は大きく頷いて、堂上を見つめた。
いつか絶対にカミツレを取ると堂上に告げた。
今度の昇任試験はその第一歩なのだ。
そして、それは堂上に追いつく第一歩でもあるのだ。
図書手帳と問題用紙をまとめて、机の上でとんとすると、しゃらしゃらペンのカミツレが揺れた。
「『苦難の中の力』」
郁はもう一度カミツレの花言葉を呟いて、席を立った。
「笠原、あしたもがんばりまっす」
郁の隣で柴崎が微笑んで、郁の肩をぽんと叩いた。
それは優しい友の応援だった。
fin.
あとがき
昇任試験直前対策ゼミ中のひとコマです、笑。
堂上教官は、それこそ自分のときよりも真剣に一生懸命で筆記試験対策をしたと思います。
ひとえに、郁ちゃんのために。
場所は特殊部隊事務室の空き机。
そんなところで個人授業なんて、と思うのは下世話なおじさんズだけで、本人たちはまったく気付いていません。
「おい、やってんな」
「頑張ってるな、笠原」
「堂上も相当頑張ってるな」
「ああ、出来が悪い子ほど可愛いって言うしな」
「ああ、笠原は可愛い」
「あっ、堂上、笠原の頭に手を置いたぞ」
「笠原嬉しそうだな」
「あっ、堂上、笠原の頭殴ったぞ」
「せっかく覚えたことが零れ落ちたらどうする」
そんなひそひそ話もふたりには聞こえてません、笑。
暖かく見守ってくれてるんですよ。
大好きです、特殊部隊の先輩方。
堂郁の日が定着するといいと思います。
いっそ公式になってくれたらスバラシイと。
感想をお待ちしています。
読んでくださりありがとうございました。
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プロフィール
HN:
亜生(あおい)
性別:
女性
自己紹介:
関東の片田舎に住む。
典型的 O 型人間。
せっかちなのにのんびりや。
好物はハチミツと梅酒。
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