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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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手柴祭第4弾です。

手柴祭に参加されてらっしゃるサイトマスターさん、読者のみなさん、本当に手柴が好きなんだなと感じています。
手柴への思いが、SSやコメントの端々にあふれてるます。

そんな中で私が参加させていただいててもいいのかしらとちょっと悩んでいます。
ほんとにいいのかしら……


『幸せな嫉妬』
手柴   革命後   嫉妬できるって幸せね。


晩夏の夕刻の涼風は心地よい。
肌に注がれる太陽の光もやわらかい。

もうすぐ 夏が終わる。


堂上から、来週あたり新宿の病院から立川の病院に転院できるらしいと聞き、見舞いに訪れた笠原と手塚と柴崎はほっとした。
回復が順調とはいえ、現場復帰に必要なリハビリはまだ軽いものしか許可されていない。
転院すれば本格的なリハビリを行うことが許可され、堂上の特殊部隊への復帰が見えてくる。
そのことがみな嬉しかった。


すっかり恋人らしくなった笠原と堂上を見て、柴崎はそっと病室を出た。
後から手塚が続き、静かにドアを閉めた。


「あーあ、やんなっちゃうわ」


病院の入り口を出るなり、柴崎がちょっと投げやりに呟いた。
言葉とは裏腹に嬉しそうに笑顔を見せる柴崎を手塚は不思議そうに眺めた。


「行くたびにどんどん近くなってるのよ、あのふたりの距離」

「帰ってくるとにやけた顔で報告してくんのよ、あの子」

「特殊部隊の明日の話題提供に、写メってやればよかった」


親友の心の声のダダ漏れを日頃煩がるのに、今日に限っては柴崎のダダ漏れのほうがはるかに煩いと手塚は思った。

不意に手塚が柴崎に問いかけた。


「お前、いいのか?」


突然の問いに柴崎はきょとんとして手塚を見つめた。


「いいのかってなにが?」

「堂上教官のこと」


━━ ああ、こいつ、あの頃のこと覚えてるんだ。

柴崎は懐かしくなって小さく笑いをこぼした。



図書隊に入隊した頃から、柴崎は堂上のファンだと憚らず公言していた。
同期女子の間では、一番人気は手塚で、堂上は上位にランクインしてはいるものの高倍率ではなかった。

女子のやっかみを自然回避するくせのついた柴崎だから、堂上を選んだのだろうか?

否。

同室で、自分とは真逆な笠原への嫉妬がそうさせたのだと、柴崎は今でも思っている。

天真爛漫。
素直。
まっすぐで真っ白としか言いようのない彼女に、曲がりくねって真っ黒な自分は憧れ、嫉妬した。

入隊してすぐの情報収集で、堂上が笠原憧れの王子様であることを知った。
堂上が笠原の教育係になったいきさつについても、若干知り得ていた。

余計嫉妬した。

嫉妬の気持ちを抱きながら、けれど、笠原にあこがれた。



「やだ、いつの話よ、それ」


だから軽く茶化してこの話は終わりにしようと思った。
ところが、手塚はそうはさせてくれなかった。


「入隊した頃。お前、ずっと堂上教官のこと追いかけてただろう?」

「笠原があれやこれや言うから、ちょっと興味あっただけよ」

「そうか。結構本気っぽかったけどな……」


あの頃の自分が他人からそんな風に見えていたことに、柴崎は自分に腹を立てた。
今まで苦労して回避してきたことなのに、と。

悔しかったから、手塚に意趣返ししたくなった。


「あんただって、大好きな堂上教官が、アホ呼ばわりしてた笠原といちゃいちゃしていいわけ?」


即答で「いいわけないだろう」と返ってくると、柴崎は思っていた。
ところが、隣で「むう」と唸っている。


「いいわけないんだけど、あの二人を見ちゃうと納得せざるを得ないんだよな」


アホで無鉄砲で物知らずで。
一緒に特殊部隊に配属になったときはその存在をなかったものにしたいほど嫌悪した。
一時は付き合ってみるのも手かと思ったが、それは大きな間違いだったと、正直今は後悔の気持ちがないわけでもない。

兄に裏切られ頑なに人を拒み始めていた自分を邪険に扱うことなく認めてくれた堂上にあこがれた。
憧れの堂上に育てられる笠原に嫉妬した。


「あそこまで人に嫉妬心抱かせておいて、あっさり覆せちまうって、ある意味笠原って最強だよな」

「そうね、最強ね」


柴崎はくすりと笑った。
手塚もそんな嫉妬をするんだと安心した。
コンプレックスの塊で決して自分の本心を見せようとしない手塚は、どこか自分と似ていて、嫉妬していることも隠してしまうんじゃないかと思っていたのに。


「あーあ。あたしたちふたりとも、笠原には嫉妬しっぱなしねえ」

「させられっぱなしだよ」

「そうね、させられっぱなしね。きっとこれからも」

「ああ、きっとこれからも、あいつはかわらねえ」


くすくすと笑って柴崎は空を見上げた。
夏の終わりの夕焼けは、やけにさわやかだった。


「めし食って帰るか?」


駅への曲がり角で手塚が言う。


「そうね、笠原がいないと残り物食べてくれる人いなくて困るのよ」

「そうだな。お前、ひとりだとほとんど食わないからな」

「まあ、手塚と一緒に食堂だと余計いろいろやっかまれて食べた気しないし」

「はいはい。ああ、俺、本気で笠原に嫉妬しそうだ」

「やだ、今までだって本気で嫉妬してたじゃない?」

「いや、あれは嫉妬じゃない。邪険にしてただけだ」

「どっちにしても、かわいそうな笠原」

「いいだろ、今幸せ真っ最中なんだから」

「ま、そうね」


━━ ほんとにそうね。

柴崎は微笑んだ。
こんな風に嫉妬できることが、幸せに思えてならなかった。
そして、隣で自分のことをわかってくれる人がもう一人いることにこの上なく幸せを感じていた。





fin.

あとがき
手柴祭第四弾です。

嫉妬ってすごく奥深いです。
あまり深いと自分まで落っこちてしまうので、手柴では軽い嫉妬にとどめました。

柴崎も手塚も、笠原への嫉妬心を持っていると思いました。
ただ、憎むまでは行かないと思います。
特に柴崎は人に嫉妬されないように生きてきたから。

手塚は柴崎のことに関していろいろ鋭い。
柴崎の行動は無意識にチェックしてると思う。
入隊直後の評判なんかもしっかりチェックしてて、でもそれが恋や愛につながるとは思わないんだよね。
そこが手塚である所以。
彼の恋愛遍歴丸見えってところです。

手塚も柴崎も、笠原を通してもっと人らしく(うーん表現の仕方がわからないけど、もっと感情を表に出すとかプラスの意味です)なっていくと思います。

あっ、最後に手をつながせたかったなあ。
でも、まだこの頃、そういった気持ちはお互い気づかないからなあ。
自然に並んで歩くのが精一杯の夏の夕暮れ。

感想お待ち申し上げます。
読んでくださりありがとうございました。

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