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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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夏です。
太陽の光に照らされて、何もかもが眩しい季節です。
何もかもが輝く季節です。
そんな夏の始まりのワンシーン…

といいつつ、未だ梅雨明けしない関東地方。
梅雨が明けたら、夏バテするのは必須なのに、やっぱり夏本番を待ってます。



『 shining summer 』
郁+α  内乱~  眩しいね、なにもかも。




「うっ、まぶしっ」


図書館入り口の自動ドアから出た途端、郁と手塚は目を閉じた。
紫外線防止ガラスを通過した日差しより、何倍も強い自然の太陽光が眩しい。
ぎらぎらとく照りつける盛夏の陽に、容赦なく、全身を射抜かれる。


「館外巡回の時は、帽子いるかもね」


手を翳して、郁は空を仰ぎ見た。
どこまでも青くて、どこまでも眩しかった。


「さっさと回って、館内に戻るぞ」


なるべく日陰を探して、けれど、規定通りに館外を巡視する。

図書館の敷地は、図書隊の警備のおかげで、そこいら辺の公園より安全、ということで、小さな子の遊び場として人気が高い。
特に夏場は、水場あり、木陰あり、いざとなったら冷房の効いた館内へ、何でもできると、連日大勢の利用者で混雑していた。
人が多いと言うことは、それだけ警備も強化しなければならないと言うことで。

郁と手塚は、暑さに茹だりながら、館外を一周し、館内へと戻っていった。



「うわあ、生き返る~」


館内でも一番涼しい、空調の噴出し口の直下で一息吐く。
ちょうど、カウンターから一歩離れた場所だ。

夏休み直前ということで、館内も利用者で混雑していた。
夏休みの課題対策なのか、レファレンスも多く、カウンターはいつになく混み合っている。


「手伝うか?」


するりと、手塚はカウンターへ出向き、誰が見てもスマートな仕草でレファレンスをこなす。
慣れてきた、といっても、やはり知識の絶対量が少ない郁には、その姿が羨ましくもあり、妬ましくもあった。


「あら~、笠原も手伝いなさいよ」


カウンターから、柴崎が郁に声をかけた。
ちょうど人波が途切れたのだ。


カウンターには何人もの図書館員が並んでいるが、常連者は、誰に何を頼むのが一番効率的かを見抜き、何を頼んでも卒なく迅速にこなす、柴崎のところに並ぶ。
だから、館内が混み合えば混み合うほど、柴崎の業務は忙しさを増す。


「お疲れ~。ネコの手よりましな程度のお手伝い、させていただいてます」


ぺこり頭を下げて、カウンターへ近づく。

時計の針は、3 時過ぎ。
これから閉館まで、学校帰りの学生で混み合うのが、夏休み前の常識だった。


とカウンターの方向へ話をしながらやってくる学生服の少年が二人。
手には、ぎっしりと書き込まれた一枚の紙。
図書館内ということで、小さな声で相談しながら歩いてきた。


どん。


カウンター前に立っていた郁に一人の少年がぶつかった。
お互いにとっさに謝る。


「すみません」


痛ってえ。
少年はそう呟きながら、ぺこり頭を下げた。


「大丈夫?」


直撃された腰をさすりながら、郁はゆっくり振り向いた。
そして、お互いの顔を見る。


「あああ!!!」


お互い、ここが図書館ということをまったく忘れての大声だった。


「大河」

「笠原さん」


同時の叫びだった。




学生服のふたりは、木村悠馬と吉川大河だった。
郁との出会いは、二人が中学生のときだ。
あれから、時は流れ、今二人は高校生になった。


「お久しぶりです」


律儀な挨拶は悠馬だ。


「お久しぶり~」


嬉しそうにぽんぽんと郁が肩を叩く。
その腕の上げ方に違和感を覚えて、郁が二人を交互に見つめた。


「笠原さん、なんかおかしい?」


右から左から、前から後ろから。
郁の舐めるような視線に、少年ふたりが赤くなった。


「笠原さん、なんか、俺たち変?」


少年二人は顔を見合わせ、ちょうど側に居合わせた手塚に目で助けを求めた。
二人からの SOS にすばやく反応した手塚が、郁の肩をそっと押した。


「笠原、それって一歩間違えると、セクハラ」


ひょえー、これでー


今度は注意しての小声で、郁は二人に向き直った。


「うーん、ちょっと気になることがあって…まあいいや。ところで、あんたたち、何しに来たの?」


「図書館に学生が何しに来た?と問われたのは初めてです」

と、悠馬が苦笑した。
大河が横から、手に持った紙切れを突き出した。


「夏休みの課題。普通に手に入るのじゃ物足りないから、図書館で探そうと思って」


ふーん、と郁は紙を見るが、今時の高校生はこんな難しい課題をこなすのかと、くらくらした。
さっと、紙を手塚に渡す。
手塚は、さらっと内容を確認すると、一番近い館内 PC でかちゃかちゃと検索を開始した。


「よかった、手塚さんがいて。柴崎さんの列がすごく長くて、どうしようか困ってたんだ」


ほっと胸を撫で下ろしたのは、大河だ。


「それ、どういう意味?あたしもいるのに…」


当てにされても困るけど、まったく当てにされないのもなんだかなあ。

とぶつぶつごちると、悠馬が慌てた。


「いえ、あの、笠原さんでもよかったんですが、あの…」


どう言葉をつなげようか、必死な様子がおかしくて、郁はくすくす笑い始めた。
ちょうど手塚の検索も終わったので、説明がてら話そうと、談話室へと移動した。



「ここまでで、本屋に並んでる資料よりは詳しく調べられる。貸し出し可能なものだから、早めに予約したほうがいい。で、ここからは、かなりマニアックな資料になるし、貸し出し禁止だから、夏休み中ここで仕上げるつもりで」


的確な手塚の説明に、当事者の二人となぜか郁もこくこくと頷いた。


「さすが手塚だね。よかったね、見つかって」

「はい。ありがとうございました」


手塚に渡されたレファレンスカードを見ながら、悠馬と大河は相談を始めた。
中学生の時のような幼さは影を潜め、すっかり少年と大人の間(はざま)の顔つきになっている。
そんな二人の横顔を見つめていて、郁は先ほどの違和感の答えに気づいた。


「ねえねえ」


大河の肩を郁が思い切り揺さぶった。
首ががくがくするほどに。
手塚が焦って郁を止めた。


「だから、一般人への力加減をいい加減覚えろ」


手塚の忠告などお構いなしに、郁は大河の肩を掴んだまま、立ち上がった。
自然、肩を掴まれた大河も立ち上がる。


郁に正面を向かされ、大河は視線のやり場に困ってしまった。


あの『考える会』の一件で、大河の中に芽生えたほのかな気持ち。
それを恋と呼んでいいのか、憧れと言うべきなのか。
それは本人も自覚していないのだからわからない。
ただ、その事件以降、図書館へ来て郁の姿を見ると、心のどこかが温かくなった。

郁の視線が常に一人の人物を追っていることは、大河自身も気づいていたし、常に行動を共にする親友も気づいていた。
親友は郁の視線を「自覚なしって怖いね」などと、大人ぶって揶揄していた。
でも、大河は、その視線の熱さに、苦々しいものを感じていた。

笠原さんが誰見てたって、関係ないじゃん。

自覚のない、嫉妬だった。
横に立つ悠馬だけが、その苦々しいものの正体に気づいていた。


これ以上、向かい合っているのは、無理だ…

と大河が俯きかけたとき、郁がぽんと手を打った。


「そっかあ。あんた、でかくなったんだ」


そうかそうかと、郁は嬉しそうに楽しそうに何度も大河の肩を叩いた。
その度に、手塚が止めろと、笑った。


「大河、あんた、背伸びたでしょ。前に会ったときは、あたしのこんくらいだったよね」


こんくらい、と郁は自分の頭の横に手を当てた。

確かに、大河の背は伸びた。
一端はなだらかになった成長線が、この春頃から、ぐんと急カーブを描き始めていた。


「そうだったかな?ここのところ伸びてるみたいなのは知ってたけど…」


ふーんと頭を傾げて大河は覚えがないという顔をしていた。
隣で、悠馬が立ち上がって、大河の頭をぽかんと殴る。


「そうだよ。ついこの間まで、同じくらいだったのに、このごろ大河のこと、ちょっと見上げるみたいになっちゃって…つまらない」

「そうだよね~つまんないよね~」

悠馬の発言に郁も悪乗りして、ねえ、とふたりで顔を見合わせた。
手塚は、大河の肩に手を置き、「お前も大変だな」と意味不明な労りの言葉をかけた。




それから、学校の話や夏休みの話を少しして、二人は帰っていった。
郁は手塚とともに、ふたりの背中を見送った。


「子供ってすぐに大きくなっちゃうんだね」


特殊部隊で子ども扱いされることが多い郁の発言に、手塚は小牧のように上戸が入った。
くつくつと肩を震わせて、手塚は腰を折り曲げて笑った。
笑われる理由にとんと見当のつかない郁は、ばしっといい音を立てて、手塚の背中を叩いた。


「痛ってえ。だから、お前、力の加減を覚えろって」


腹筋と背筋を同時に酷使して、手塚は息も絶え絶えに涙目で抗議した。
そんな手塚を思い切り笑って、郁はすぐに真顔に戻った。


「夏休みの課題なんていいながら、自分の進路のこともしっかり考えてた」

「なんだ、お前、気づいてたのか?」


背筋をしゃんと伸ばして、手塚は郁を見た。


「うん。あの紙に書いてあったのって、夏休みの課題だけじゃなかった。たぶん、悠馬のほうかな?すごくいろいろ調べようとしてたね」


手塚は大きく頷いた。

レファレンスのために預かった紙には、一見夏休みの課題に見える、実は課題とは無関係の事柄がいくつも書かれていた。
几帳面に並べられたその文字は、おそらく悠馬のものだろう。
ところどころ、消しゴムで消された後に、考え悩んだ跡が見えていた。


「高校生か…これから先、自分が何をしていくのか、考えるときだよね」

「そうだな」

「眩しいね、あの背中」


郁は二人の後姿を見ながら呟いた。

館から遠ざかる二人の背に夕日があたる。
夏場のこの時間の日差しは、夕方といえど、強い。
その日を浴びて、ふたりの白いワイシャツが白く光っていた。

眩しい…
夢があって、希望があって、それに向かう気持ちが漲っていて。

いつの間に、そんな力をつけたのだろう。
夏だからだろうか。
夏は、そんな力まで連れてやってくるのだろうか。


「見つかると、いいね」

「そうだな」

「あと、悠馬も背が伸びるといいね」

「えっ、それは個人差で、無理かも…」

「ええ、それはかわいそうだよ」

「かわいそうと言われてもなあ」

「あたし、はたちくらいまで、背、伸びたから、悠馬だって」

「だから、それは個人差で…」


「そうだ、それは個人差だ」


突然の第三者の介入に、ふたりはびくっと飛び上がった。
恐る恐る振り向くと、そこには、眉間に皺を寄せた堂上と、堂上の後ろで上戸が入って肩を震わせる小牧が立っていた。


「お前ら、いつまでここで油売ってるつもりだ。さっさと巡回に戻れ」


敬礼つきの返事で、郁と手塚はそそくさと、館内巡回へと戻った。


ふたりの後姿を見つめ、堂上はため息をひとつ吐いた。
ようやく上戸の止まった小牧も二人の後姿を見つめた。


「成長したのは、あのふたりも一緒だね」

「ああ」

「追い抜かれそうだよ、俺」

「俺もだ」


眩しいのは、夏の陽だけではない。
目標を見つめ、ただひたすらに、その目標に近づこうと努力する姿も眩しい。


今も俺の背中は眩しいのだろうか。


ふと不安になる堂上の背を小牧はぽんと押した。


「班長の背中、眩しすぎるよ」


手を翳して小牧は堂上におどけて見せた。
堂上は小牧の頭をぽかりと殴って、すたすたと巡回のルートへ戻っていった。



その背中見つめて、小牧はもう一度、

「堂上、お前の背中は今も眩しいよ」

と呟くのだった。




眩しい夏の始まり。
輝く季節が始まった。



fin.


あとがき

今回のキーワードは「まぶしい」です。
夏はなんでもかんでも「眩しい」です。
夏にはそんな力があると思います。
子供もぐんと成長するしね。

悠馬と大河に登場願いました。
身長は大河のほうが大きいと思います。ふたりとも細身タイプ。
ふたりとも郁が初恋♪(すごい設定だ)
悠馬はすぐに郁の恋心に気づく小牧タイプ。
大河はそっち方面鈍感さんの堂上タイプ。
密かに私的設定してみました。賛否両論あると思いますが、そこは目をつぶってくださいませ。

郁も手塚も追う背中は同じ。
一生懸命に追いかけてる最中です。
追われるほうも大変です。追いつかれないように、でも見失わせないように。

夏のキラキラした季節の中で、自分の進む道を見つめることを書きたかったんです。
頑張ろうって気持ちになれるように。

感想をお聞かせいただけたらうれしいです。
読んでくださいましてありがとうございました
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