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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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三寒四温の毎日ですが、少しずつ春になっているんだなと感じます。
今朝は、一面真っ白な靄でした。
空気が水分を含んでまとわりついて、どこか土臭く青臭い春の匂いがしました。

おかえりなさいのコメントをありがとうございました。
待っていてくださる方がいるというのは、気持ちがあたたかくなるものですね。
嬉しかったです。
ありがとうございます。

SSを書きたいと思いつつ、思い浮かぶのが断片ばかりで、ちっともまとまらないのですが、
リハビリしなきゃだめと思い、書き散らしました。

『朝靄』
手柴   革命後早春   春の気まぐれよ、きっと。


三寒四温。
寒い日が三日ほど続くと、そのあと四日ほど温暖な日が続き、また寒くなる。
暦の上ではとっくに春の盛りなのに、実際の春にはまだ遠い。

柴崎はふと目を覚ました。
ベッドのカーテンを開けて、窓辺に目をやると、カーテンの隙間がうっすら明るい。
時計のアラームはまだ鳴る気配はない。


「やだ、こんな早起き。年寄りくさいわ」


同室の笠原は、昨夜から任務に出かけていていない。
しん、と静かな部屋にコチコチと時計の音が響いた。

当麻事件でメディア良化法が大きく変わったわけではない。
良化隊と図書隊の対立も以前とさほどの変化はない。
法の下での本狩りは相変わらずだ。

昨晩とて、図書隊特殊部隊は良化隊の奇襲に備えて出動している。
時に強引な手段で奇襲をかける良化隊に対応しきれない小さな図書館からの警備の依頼だ。
狙撃手としてレベルアップの著しい手塚と、いざというときに使い勝手のよい笠原は重宝がられ、その二人の所属する堂上班は特殊部隊の中でもダントツの出動回数となっていた。


柴崎はベッドの中で、ごろごろ寝返りを数回打つと、もそもそと布団から這い出る。
ベッドから出て大きく伸びを一度すると、デスクの上に置いたメガネをかけた。
そして、着替えるとコートを羽織って部屋を出た。

外は朝靄でどこもかしこも白かった。
昨日まで降った雨のせいだろうか、水蒸気をたっぷり含んだ空気が白く揺らいでいた。
もわりとした空気に身を包まれる。


「天然のスチームね。今日のお肌はぴっちぴち」


思ったより暖かな朝だった。
誰もいない敷地を柴崎はゆっくり歩いた。
手入れの行き届いた図書館の庭は、いつの間にか枯れ草色から若草色に変わろうとしていた。
柴崎は時々先を見つめて、けれどすぐに俯いて、歩いた。
目的があるとも、ただの散歩とも、ただ柴崎は歩いていた。

遠くで「ゴー」というトラックの音がした。
柴崎は音のするほうを向くと、小走りに走り出した。
レンガの小道を抜けると、そこは特殊部隊と防衛部の事務室に繋がる入り口だ。

入り口にはトラックとワゴン車が横付けされていた。
トラックから数人の隊員が降りると、持ち出した武器を下ろし始めた。
防護盾、ヘルメット、そして、いくつもの銃に銃弾。

それらを使用する理由をわかっていながら、柴崎は身震いした。
両腕で自分の身体を抱きしめるようにして、身震いを止めようとするがなかなか止まらない。

そのとき、がやがやと人の声がした。
片付けを済ませた笠原に手塚、特殊部隊の面々が事務室へ入っていこうとしていたのだ。
朝靄が先ほどより少し晴れて、数メートル先の彼らの顔がはっきり見えるようになる。

何事もなかったのだろう。
ほっとした横顔が見える。
笠原が手塚の背中を盛大に叩いている。
小牧に上戸が入っていて、堂上が苦虫を潰したような苦笑を浮かべている。
よく見かける堂上班の日常だ。


「あら、やだ、あたしったら」


柴崎はそっとメガネをはずした。
メガネをかけていることを忘れて、レンズに触れてしまったからだ。
流れる涙に気付かず、うっかりレンズに触れてしまったのだ。

茨城県展警備。
当麻事件。
そのどちらでも、近しい人の命が危険にさらされた。
特殊部隊の命が常に危険にさらされていることを承知していても、胸が痛み恐怖に襲われた。


「わかってるのよ、麻子」


自分自身に言い聞かせるように柴崎は呟いた。
わかっていても心のどこかで、心配でやりきれなくてもどかしい自分がいる。
わかっているのに。


「だからイヤなのよ、早起きって」


晴れてきた朝靄の中を、柴崎は小走りに寮へと戻った。

同室者が戻ってくる前に、もう一度眠りにつかなければならなかったから。
涙の後を消さなければならなかったから。







かさりと落ち葉を踏む音がした。
静かな朝靄の中、任務完了帰隊直後のせいで敏感だったのかもしれない。
ほんの小さな音に、手塚は振り向いた。

レンガの小道を走っていく後姿が見えた。
長い髪が揺れている。
いつもよりその揺れが小さいのは、湿気を含んだ朝靄のせいだろう。

ふわりと心があたたかくなった。
それはまるで春のひだまりのようで。

ポケットに入れた携帯を取り出そうとして、手塚はそれをやめた。

メールなどしたら、鼻でふふんと笑われそうだ。
いや、「睡眠時間を減らされて寝不足よ。今日のお肌の調子最悪」などと毒吐かれるかもしれない。
なにより、人違いだといわれること必須だろう。

走り去る後姿に「ありがとう」と呟いて、手塚は特殊部隊の事務室へ帰隊報告に向かった。



Fin.


あとがき
書きたかった風景だけが浮かんで、起承転結もなにもないお話です。

アニメオリに甲府の古本屋さんに本を取りに行くお話しがありました。
柴崎が何度も何度も携帯に連絡を入れるシーンは賛否両論ありました。
任務、しかも良化隊が絡んだ任務中に携帯に連絡するのはどうかと思いましたが、あのときの柴崎の気持ちは理解できます。
その気持ちは最初は郁だけに向けられていたのが、だんだん手塚に向けられていくと思います。
柴崎が自分でも気付かないところでそれは大きくなっていく。
それが、ふと現れた春の朝、という風景です。

ラストシーンは手塚視点にしたかった。
手塚には柴崎の気持ちに気付いていて欲しかったんです。

リハビリということで、いろいろありますが、
感想をお寄せいただけると嬉しいです。
読んでくださりありがとうございました。
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