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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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巷でうわさの「身代わり伯爵の冒険」シリーズ。
遅れつつですが、全巻読んでいます。
その中のせりふに惹かれて書きたくて書きたくて、書いてしまいました。
定番ですものね~

『お出迎え』
堂郁   新婚時代   えっ?私、間違った?


満員の電車から吐き出されるように、堂上は立川駅で降りた。
駅構内は、帰宅を急ぐ人々で込み合っていて、むっとしていた。
その中を堂上は、図書隊員の性、というより、性格なのだろう、さかさかと人の何倍速かとスピードで人ごみの中を歩いていった。


「まったく、案外時間がかかっちまったな」


腕時計を視野の片隅で確認して、堂上はさらに歩くスピードを上げた。
今日は、玄田隊長の代理として、都心で開かれた全国図書隊連絡会議に出席した。

近頃堂上は玄田の代理としてちょくちょく使われている。
図書隊の今後に重大な影響を及ぼす決定事項がない限り、会議と名のつくものへの出席は堂上に振られることが多いのだ。
出席依頼が来るたびに、堂上は玄田に抗議するのだが、

「俺が出て行くと、丸くまとまるものもまとまらん」
とか
「会議資料だけ送れといったら、出席したものだけに配るといわれたから、資料だけもらってこい」
だとか

まあ、いろいろ理由を並べられ、結局堂上が出席せざるを得ないことになってしまうのだ。


「この次は、ぜったいに隊長に出てもらおう」


心に強く誓った堂上は家路を急いだ。


家路を急ぐのには、わけがある。

なにせ、堂上、新婚なのだ。

共働きだから、ドラマのように玄関のドアを開けると新妻が「おかえりなさ~い」と駆け寄ってくることはあまりない。
作業効率のよい堂上のほうが先に帰宅するか、一緒に帰宅することのほうが多い。
たまに郁が早く帰っていても、慣れない夕食の支度に右往左往していて、間違っても「篤さ~ん」と走ってくることはなかった。


「うん、新婚とはいっても、どこもそんなもんだろう」


誰に聞かせるわけでもなく、堂上は呟いた。

今日も会議で旧知の友人から新婚生活について、散々からかわれた。
夢見がちな独身の友人からは質問攻め、現実に疲れ始めた経験者からは愚痴を聞かされた。
大なり小なりあるものの、帰宅時のお出迎えには、十人十色、皆それぞれ思うところがあるらしかった。


「まあ、ロマン、ってほどじゃないけどな」


ほわりと脳内にピンクが広がり、微笑む郁がぽわんと浮かぶ。
自然に笑みがこぼれ、堂上はさらに帰宅の足を速めた。



「ただいま」


ドアの鍵を閉め、靴を脱ごうとしたときだった。
部屋のほうから、どどどっと走る音がした。
何事かと思うと、目の前にとんでもない格好の郁が立っていた。


「篤さん、おかえりなさい。お仕事お疲れ様でした。ご飯にする?お風呂にする?それとも……ア・タ・シ?」


ピンクのフリフリレースたっぷりのエプロン姿。
一瞬、裸エプロンかと思ってしまったほど、エプロンの下はタンクトップに短パン。

誰の脳内映像だ!!

堂上はそう叫びそうになるのを必死に堪えて、急いで靴をしまい、郁の前に立った。


「あれ?篤さん?」


自分の前に立ったまま、言葉を発しない堂上に、郁はだんだん不安げな表情になっていく。


「あれ?おかしいな。あたし、間違っちゃった?えっと、『おかえりなさい』で『お疲れ様』で『ご飯』で『お風呂』で『あたし』でしょう?あれ?」


指折り自分の台詞を繰り返す郁に、堂上は無言だった。


「ねえ、篤さん?困ったなあ。えっと、なにが足りないんだろう」


いよいよ困った郁を堂上はいきなり抱きしめた。


「俺は『お前』と答えれば、いいんだろう」


郁と鼻先をあわせて、にやりと堂上は笑った。
問いかけた答えの中のひとつを選ばれたのだから、問いかけた郁が文句をいう筋合いはないが、答えのシチュエーションにはなかったこの体勢に、郁は焦った。


「ちょっと待って、待って」

「待たない。お前にするって決めた」

「えっと、すごくがんばってご飯作ったから、それ食べよう」

「お前のほうがうまそうだ」

「えええ!!!そんな……あっ、今日は昼間暑かったから、先にお風呂どうぞ?」

「いい。後で一緒に入る」

「一緒に入ったら狭いよ、ってそんなことじゃなくて」

「ほお。自分でどれがいいと聞いておいて、それはないなあ」


堂上はぐいと郁を引き寄せて、ふーっと耳元に息を吹きかける。
それだけで、郁は立っていられなくなり、腰がぬけてしまいそうになる。


「ずるい」


ぽつりと郁が零す。
けれど、それは堂上の口内へと消えてしまう。


「どっちがだ」


そんな格好をして出迎えるなんて。
焦るじゃないか。
俺の頭の中をのぞかれたのかと。
そうさ、ロマンとでもなんとでも言ってくれ。


堂上は心の中で呟いて、そのまま郁を抱きしめた。




翌日、出勤した郁は堂上の視界から外れた物陰に連れ込まれた。
連れ込んだのは、あのエプロンを郁に渡し、いらぬ進言を呈してくれた先輩方だ。


「で、どうだった?笠原。首尾は?」


真っ赤になって俯いて「ええ……よかったです」とかなんとか。
もじもじと昨夜のことを思い出す新妻。

との予想に反して、郁は一番前にいた先輩の胸倉をぐっと掴んだ。


「どうもこうもないです。あんなことになるなんて」


口をぎゅっと一文字に摘むんで、だんだん涙目になっていく笠原に、先輩方は右往左往し始めた。


「言われたとおりにお出迎えしたら、ぎゅっとされて」

それはよかったんじゃないのか!

「でも、離してくれなくて。晩御飯、すごくがんばって作って、すごくおなかすいてるのに」

すごくよかったじゃないか!

「やっと離してくれたら」

おおお、ゴールか?

「1時間の膝詰めお説教ですよ」

えええ!!!堂上、そりゃあないぞ。
お前だって、男だろう?
新婚だろう?

「そんな格好でもし人が尋ねてきたらどうするって」

官舎にそんな時間に来るやつなんて……いそうだな。

「体調崩したらどうするって」

お前があたためてやれば済むだろう?

「俺だって腹が減ってるに決まってるだろうって」

笠原を前にしたら、そんなことはないぞ?

「もう、あれもこれも言われて……」

堂上の照れ隠しもあったんだろうな。

「ぜーったいに、あんな格好しません」

そうかそうか。
堂上、新婚時代は終わったな。

などと考えている先輩方を無視して、郁はさっさと自席に向かった。

堂上の新婚生活に茶々を入れたくて仕方のない特殊部隊の面々は大きくため息を吐くと、次の作戦でも考えるかと頭を寄せた瞬間。


「だってさあ、堂上」


物陰から小牧の軽やかな声が事務室に響いた。
頭を突き合わせていた隊員は真っ青になって声の方向に視線を向けると、そこには仁王立ちになった堂上がいた。
事務室に入ってすぐ拉致られた郁のあとをこっそり付けた小牧が堂上もこっそり物陰に呼んでいたのだ。


「先輩方のお心遣いには感謝いたします。御礼につきましては、後日改めてしっかりお返しにあがりますので、ご承知おきください」


堂上はぴしっと敬礼して踵を返した。


「ちょっと読みが浅かったですね、先輩」

俺は部外者ですけどね~。
大変ですね、先輩。


背筋が凍りそうな笑みを残して小牧も堂上の後を追った。


それから数日後、格闘技訓練が荒れに荒れたことは、特殊部隊の内密な話。


「今日の堂上教官、すごかったなあ。俺も一稽古つけてもらえばよかったかな?」

何も知らない、いや、気付かなかった手塚の呑気な一言に苦笑するのは、小牧ただ一人だった。



fin.

あとがき
身代わり伯爵ってご存知ですか?
角川ビーンズ文庫から出ている清家未森さんのお話です。
今、16冊出版されています。
で、郁ちゃんの台詞は14冊目に出てきます。
「新婚家庭で妻が夫を出迎えるときの一般的な台詞」なんですって。
うーん、今は死語のような気もしますけれど。

でも、この台詞を読んだ瞬間に、郁ちゃんに言わせて見たいと思ってしまい、書いてしまいました。
これって、盗作?になるんでしょうか……
もし、そうだったら、すぐに消しちゃおう。

郁ちゃんと堂上さんが結婚して、特殊部隊の先輩方はちょっかい出したくてうずうずしてると思います。
もうね、あれこれ指南したくて仕方ないんだよ。
堂上さんには足蹴にされて相手にしてもらえないことがよーくわかっているから、先輩たちのターゲットは当然郁ちゃん。
清らかな天然さんに、あることないこと、教える教える、笑。
で、素直な郁ちゃんはもちろん、すべて実行すべし。

堂上さんもほんとうはピンクエプロンの郁ちゃんにメロメロだったんですが、どうも裏を感じたんですね。
「あたし」をちょっとからかって、あとはお説教マシーンと化しました。

何年か経って、郁ちゃんがなにかへまして「なんでも言うこと聞く」なんてことを口にした日にゃ、堂上さん、にやり笑って「じゃあ、あのときの再現して」なんていっちゃうといいよ。
くすくす。

このネタで最初に書いたときは、しっとり新婚、って感じだったのに、特殊部隊の面々を書いたら収集つかなくなってしまって、こんなどたばたな終わり方になってしまいました。
おかしい……

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
感想などお気軽にお寄せいただけたらうれしいです。
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