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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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昨日は成人の日でした。
しかし、15日=成人の日、というのが染み付いている古い世代なので、ぴんと来ませんでした。
15日は、今年はセンター試験なのですね。
これまた「共通一次」世代なのは秘密ですが、笑。
そして、思い出すのは、雪景色です。

そんな日のことを書きました。

「ホットミルク」
堂郁   戦争~冬   ほら、あったまれ。




センター試験の朝は、雪が積もっている。


前から囁かれている都市伝説。
センター試験は大学受験生にとって、最大にして最強の第一関門で、その日雪が積もると今までスケジュール通りに進んでいた時計もめちゃくちゃに狂ってしまう。
交通機関は信頼を失い、自分自身の足ですら自らの体をふわり雪の中に投げ込むのだ。

今年もその伝説は見事に現実となった。


「うわあ、まっしろ~」


かわいらしい声がまったく似合わない特殊部隊事務室に、かわいらしい元気な声が響きわたる。
声の主は、笠原郁。
特殊部隊の紅一点。


「笠原でも嬉しいのか?」


特殊部隊にぴったりの野太い声は、玄田隊長だ。


「そりゃあ、嬉しいですよ。きれいですもの」


うっとり寒い窓際から外を眺める。
省エネ仕様の二重窓は、曇ることなく、外の雪景色をフレーム付きで笠原に見せていた。


「でも、その『でも』ってのは余計です」


外を眺めたまま、笠原は玄田に一言釘を指すことを忘れない。
特殊部隊配属当時は、新人かつ女性一人の立場からか、なかなか先輩諸氏に口答えできなかった笠原だが(一人を除き)環境に慣れた現在では、先輩諸氏たじたじの口答えもできるようになっていた。


「今日は休日だし、こんな天気だ。来館者数も通常よりは少ないだろう。センター試験で受験生は来ないだろうから、「滑る」だの「転ぶ」だのの大盤振る舞いもOKだぞ、笠原」


受験シーズンを迎えて、図書館の閲覧室は受験生に占領されていた。
空調完備、静寂な空気、豊富な資料。
必要とあらば、学校の先生より詳しくわかりやすい説明をしてくれる図書館員。
自分の定位置を決め込んでいる受験生も少なくなかった。


「そんなに言ってませんよ。「落ちる」だの「滑る」だの」

「「落ちる」とは俺は言わなかったがな」

「あっ」


あわてて口を押さえたところを見ると、笠原には身に覚えがあるらしい。


「受験生がいないにせよ、この雪で館内を含め基地のあちこちが滑りやすく危険なことは事実だ。全員で雪かきしてこい」


「はあい」と元気よく返事をして、猪の一番に事務室を飛び出していったのは、誰を隠そう、笠原だった。


「若さってやつですかね」


苦笑を浮かべて、身支度を整えているのは、緒形だ。
防寒隊服に手袋、長靴と、完璧だ。

さっと玄田に敬礼すると、笠原の後を追うように事務室から出ていった。


「お前は、ちょっと待ってろ」


同じように身支度を整え事務室を出ていこうとする堂上を玄田は止めた。
怪訝な表情を浮かべる堂上に、玄田は含み笑いを浮かべた。


「お前には片づけてもらいたい書類があってな。それに、あの格好で飛び出していったお姫様の後始末も頼みたいしな」

「それですか・・・・・・」


せっかく着込んだ防寒隊服を脱ぎ、堂上は渋々玄田に渡された書類を机の上に積んだ。


雪の日は音が吸収されて、とても静かだ。
この時間ならすでに前の道の通行量も結構なものだと思うが、雪のためかほとんど車の通る音がしない。

そこへ突然「うわあ」という悲鳴に近い叫び声が聞こえた。

何事、と窓に堂上が駆け寄り外を見ると、そこには目を覆いたくなる光景が広がっていた。

悲鳴を上げたのは、特殊部隊の先輩のひとりだ。
まじめに仕事をこなすその先輩は、まじめに雪かきをしていたようだ。
そこにいきなり雪玉が飛んできたらしい。
訓練を積んでいても、雪かき途中の襲来までは意識していなかったらしい。
もろに雪玉を食らってしまった。

その雪玉を投げたのは、笠原だった。
ひとり防寒隊服を着ず、雪かきスコップでそこそこ集めた雪の山を前に、喜々として雪玉を作り、ある程度雪玉がたまると、標的を定め投げているのだ。


「アホか、アイツは」


大声を上げて、堂上は事務室を飛び出そうとした。
しかし、玄田がドアの前に立ちふさがってそれはかなわない。
玄田はにやにやして、窓の外の光景など予測済みだっと言わんばかりの顔をしていた。


「お見通しだったんですね、隊長」

「当たり前だろう。この雪に、笠原。こうならんわけがないだろう」


楽しそうに微笑む玄田は、堂上の肩をぽんと叩き、その体の向きを事務室の中へと向けた。


「近頃、良化隊の襲撃も落ち着いていたし、ちょうどいい運動だ。あの程度の雪玉、避けられんようでは特殊部隊の名が廃る」


それはちょっと見当違いじゃないか、と堂上は心の中で思ったが、言い出したら聞く耳を持たない玄田に何を言っても無駄と口をつぐみ、再び積まれた書類と格闘することとした。


小一時間も立っただろうか。
外の騒ぎも静かになり、事務室には堂上と玄田がめくる紙の音が響いた。


突然、事務室のドアががらりと開き、髪まで濡れた笠原が入ってきた。
頬は真っ赤に上気している。


「熱っい。けど、冷たい。痛いけど、楽しい」


にっこりほほえんだ瞬間、笠原の頭上には堂上の拳骨が降り下ろされていた。
拳骨の後には、ふわりと乾いてふかふかのタオルがかぶせられた。


「アホか、貴様は。雪かきをしろと言われなかったか。いったい何をしていた」


拳骨が当たった場所をタオルの上からさすりながら、笠原は答えた。


「雪かきしてましたよ。歩くところばかりか、庭のほうだってちゃんと」


ここまで言ったところで、再び笠原の頭上に堂上の拳骨が降り下ろされた。


「ばっかもん。その後だ。その雪をどうした」

「えっと、有効活用、かな」

「どこが有効活用だ。先輩方に投げつけて、どこが有効活用だ」

「当たるかな~って思って投げたら、当たっちゃって。そしたら、反撃されて」

「当たるわ、アホ。まじめに雪かきしていたら」


ドアの前でふたりがぎゃあぎゃあやり合っていると、緒形が入ってきた。


「堂上、それくらいにして、早く笠原を着替えさせてやれ。長靴も履かんで、手袋もつけんで応戦していたんだから」

「緒形副隊長」


緒形の一言で、堂上と笠原のいざこざはひとまず終了となった。


「着替えあるな?」

堂上の問いに笠原は頷き、堂上が笠原の背を更衣室のほうへと押してやった瞬間、わらわらと特殊部隊の先輩諸氏が現れた。
どうも、事務室のドアの死角からふたりのやりとりを最初から観戦していたらしい。


「堂上、緒形副隊長の言葉、聞いてなかったのか?」

「はっ?」

「笠原を早く着替えさせてやれって言われただろう?」

「だから、早く更衣室へ行けと」


堂上が答えると、先輩はちっちっちっと指を振って、にやにやと笑った。


「緒形副隊長は『着替えさせてやれ』って言っただろう」

「ちょおおおおお」


堂上より早く叫んだのは、笠原だった。
堂上にかけられたタオルをひっつかむと、真っ赤になって更衣室へと猛ダッシュしたのだった。


「ちっ、はずしたか」

「ははは、俺の勝ちだな」


走り去る笠原の背中を見ながら、先輩たちはくすくす笑いをこぼしていた。


「あんたら、賭けてたんですか?」


堂上の氷点下の問いかけに、特殊部隊の諸氏たちは口笛を吹き「寒かったなあ」と堂上の横をすり抜けて、事務室の一番暖かな場所へと入っていった。

最後に緒形が堂上の肩をぽんと叩き入っていった。


「悪ふざけだ。まあ、今日の悪ふざけは笠原が口火を切ったんだから、許してやれ」


緒形さん、あんたまで片棒担いでたんですか・・・・・・

と口まで出かかった言葉を飲み込んで、堂上は事務室のドアを静かに閉めた。

そして、「寒い」「寒い」「あったけえコーヒー飲みてえ」と言う先輩たちの声には耳を塞ぎ、冷蔵庫から牛乳を出して、レンジにかけた。


今度あのドアを開ける笠原のために。


fin.

あとがき
2011年お年賀SSです。
寒い寒いとは思いましたが、なかなか雪の降らない年末年始でした。
みなさまはいかがお過ごしになられましたか?

受験シーズン到来で、受験生の心配は自身の学力でしょうけど、まわりは受験生の体調とお天気が気がかりです。
雪でも降ったら、大変です。
私は雪国育ちなので、雪が降ろうが路面凍結しようが、あまり気になりません。
ただ、交通網の乱れだけはどうにもできません。
首都圏を受験する友人たちは、歩いても余裕で間に合う宿を確保していました。

そんな都下の雪景色の一こまを。

堂上さんも本当は一緒に行きたかったんですよ、郁ちゃんと。
だけど玄田さんが許してくれなかった、笑。
堂上班の残り二人は目立たないように働いてます。
だって、雪と郁ちゃんが合わさったら、どんな状況になるかなんてお見通しですもの。
緒形さん同様に完全装備です。
郁ちゃんの目に入らないところを雪かきしてきました。

お楽しみいただけたら嬉しいです。
感想をお待ちしています。

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