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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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自信なさげな呟きにあたたかなコメントをお寄せいただきありがとうございます。
自己満足だけじゃないって思ったら、勇気がでました。
コメントはなくても拍手をくださった方にも感謝です。

今年いらっしゃった冬将軍さまは厳しくて、毎日「寒いね」が合言葉になっています。
ここ二日ばかりは春の陽気でしたけど、今日はまた冬です。
さすがに車の外気温度計が『-6℃』を示すと、ため息すら吐きたくなくなります。
だって、口開けるだけで寒いんだもん。

洗濯物を干すと、凍(し)みるます。
洗濯物が干物みたいになるんです。
学生時代、寮のお風呂が休みのとき近所の銭湯に行って、帰りに使ったタオルをぶんぶん振り回して剣を作って、チャンバラしながら帰寮したことが懐かしい。
あのときは、今住んでるところより寒くて、窓辺にうっかり置いたマグカップにいれたワインが凍ったんですよ。
今あんなところに住んでたら、きっと体ごと凍ってる。

一年で一番寒さの厳しい今ですが、日差しは確実に春に近づいています。
そんな陽の中でのお話。


『Harumachi-komachi』
堂郁   恋人時代   春の陽の中、綻ぶ一輪の花を手折る。


一年で最も寒い季節、大寒。
ここ数年暖かな冬が続いたが、今年は大寒の名のとおりの寒さが続く。
寒いわりに過ごしやすいのは、からりと晴れ上がった天候のためだろう。
「洗濯物がよく乾いて、ありがたい」という声も多い。
しかし、乾燥しすぎは弊害も多かった。

郁もその弊害に悩まされていた。
唇の乾燥だ。
ぺりぺりと唇の皮がめくれてくる。
もともと、メイクには興味の薄い郁だが、あまりにがさがさの唇を見るとため息がこぼれた。


「ちょおっと、そんな辛気臭いため息、やめてよね」


ドレッサーに向かい、シートパック中の柴崎が振り向く。
乾燥するこの時期には欠かせないスキンケア、だそうだ。


「だってえ」

「語尾をのばすな」

「だってえ」


こたつに突っ伏して、郁は頬を膨らませた。


「そんなにこすったら、余計皮がむけるわよ」


何も言っていなくても、郁が何に悩んでいるかなんて、柴崎にはお見通しだ。
風呂から戻り、いつもとおりのスキンケアをした後、郁は手鏡を見つめて、ずっと唇を撫でているのだ。


「ちゃんとリップクリームつけてるのに」

「そうね」


勤務中だって、ポケットにはリップクリームを常備している。
日に何回も塗っているのだ。
それなのに、がさがさは収まらない。

今までだったら、大して気にならないこのがさがさも、堂上と唇を合わせるようになった郁には、大きな問題だった。


「あんたの使ってるリップクリームってどれ?」

「これ」


郁が見せたのは、ドラッグストアに並ぶ、普通のリップクリームだ。


「それ、メントール入ってるでしょ」


表記を確認して、郁がうなづく。


「だめよ。メントールって乾燥するのよ」

「えええ!だって、すっきりするし、香りも甘くなくていいと思って」

「十代だったら、それも可。でも、あんたの年でそれはだめ」


「って、あんただっていっしょじゃん」と言う反論を飲み込んで、郁はおとなしく柴崎の言うことに耳を傾けた。


「唇って皮膚は薄いし、皮脂腺もないから乾燥するのよ。いつも空気にさらされてるし。あんたは特に外に出ることも多いからね」


うんうん、と頷いて、思わずすがるように郁は柴崎を見た。


「ちゃんと手入れすれば、ぷるっぷるの唇になるわよ」


パック中ということで、無表情のままだが、柴崎がくすりと笑うのがわかる。
スキンケア一式の中から、小さな缶を取り出し、郁に手渡す。


「薄くのばして、ラップでパック。しばらく続けてみ」


郁は柴崎に言われたように、クリームを薄くのばしラップでパックした。
それから、毎晩、郁は真剣にケアを続けた。
その様子を柴崎が『恋する乙女ねえ』とからかった。


数日後、郁の唇のがさがさはすっかりなくなり、柴崎の言う「ぷるっぷる」の唇へと変身を遂げた。


冬将軍もお休みしたような、暖かな日だった。
郁は堂上と組んで、館外警備に従事した。

唇のがさがさが発端となり、近頃、堂上との関係がどことなくギクシャクしていた郁だったが、唇のがさがさが解決した今は、勤務中とはいえ、堂上とぽかぽかの日差しの中を歩くことはうれしいことだった。
その空気は、堂上に自然に伝わり、隣を歩く郁の機嫌がいいことに堂上も気をよくしていた。


「今日はあったかいですね」


まぶしげに空を見上げて、郁は堂上に微笑みかけた。
ぷるっぷるの唇には、柴崎見立ての春色のリップグロスが塗られている。
陽春の光を反射して、キラキラ光っていた。
まるで、春一番に咲き綻んだ、一輪の花のように。


「きれいだな」


ぽつりこぼれた堂上の呟きを郁が拾う。


「きれいですね。空、真っ青ですよ」


郁の返答に堂上は我に帰った。
堂上は、堂上の主語は郁で、郁の主語が冬空であることに気づく。
しかし、郁はまったくそのことに気づく様子はない。
降り注ぐ陽春を思う存分浴びていた。

ゆっくり顔を下ろす郁の唇に堂上が指を這わせた。
グロスの助けもあって、堂上の指がするりと郁の唇を滑る。

郁が唇の荒れを気にしていたことには気づいていた。
そのせいで、口付けを拒んでいたことも。

郁は突然のことに、顔を真っ赤にして突っ立っていた。
堂上はふふふと微笑んで、郁の耳に囁いた。


「つまんでもいいか?」


こくりとただ頷けばいいものを、郁は「えええ!!!」と悲鳴に近い大声を上げ、堂上に手のひらで口を覆われ、窒息しかける。


「あほか、貴様」

「だって、教官がー」


堂上の振り上げられた手に、郁は首をすくめて頭上に落ちてくる拳骨を覚悟した。
けれど、下ろされたのは、柔らかなポンだった。
そっと目を上げると、堂上は春の陽のようなあたたかなまなざしで郁を見つめていた。


「勤務中にそんなことする奴いるか」

「だって、雰囲気が」

「あほか。俺にだって理性はある」

「はい」


しゅんとなった郁にもう一度頭ポンをして、堂上は一歩歩き出した。
郁も遅れまいと一歩踏み出すと、どんと堂上の背中にぶつかった。
ぶつかったまま、堂上が宣言する。


「今夜つまむからな」


郁は真っ赤になりながら、「はい」と返事を返した。


春の陽は暑くなったふたりの温度にかまうことなく、陽の光を注ぎ続けた。


fin.

あとがき
2010年、初書きでございます。
気温は低いけれど、太陽の陽は暖かく、春の予感を感じます。

そんな堂郁の一コマです。
甘いといいのですが。

冬場の唇の乾燥には毎年悩まされます。
いろいろ試すんですが、なかなかコレといったものにめぐり合いません。
今は某メーカーのリップクリームに落ち着いています。
もともと化粧品に関しては無香料のものしか使わないので、リップクリームも同様に無香料です。
おいしい香りのだと、食べちゃいそうですし。

女の子にとって、唇のがさがさって、すごい悩みになると思いました。
キスする相手がいるなら、なおさらに。
キスすると、余計乾燥するし(笑)。
今までだったら「しかたないね」で済ませるだろうがさがさも、今年の郁ちゃんにとっては大問題に違いないと。
さりげなく、堂上さんもそのことに気づいているといいなあという、希望的観測も盛り込みました。
今夜の官舎裏は盛り上がってるんだろうな、ははは。

タイトルは最初『春待小町』でしたが、なんとなく変えました。
陽春の中、堂上さんにとっての小町は郁ちゃんです。

読んでいただきありがとうございました。
乾燥、いえ、感想をお待ちしています。

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