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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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紫陽花の学名です。
日本原産のガクアジサイが原種で、栽培種の西洋アジサイは品種改良で生まれました。
シーボルトが「オタクサ」として植物図鑑に記したのはあまりにも有名なお話。

花言葉はたくさんあって、「移り気」「高慢」「辛抱強い愛情」「元気な女性」「あなたは美しいが冷淡だ」「無情」「浮気」「自慢家」「変節」「あなたは冷たい」などなど。
色が七変化することから、あまりいい意味の花言葉をつけてもらえなかったのかな?

紫陽花って梅雨の花のイメージが強いです。
六月って感じ。
密かに日参させていただいている日々乃さまのサイトの郁ちゃんのジューンブライドがすっごく綺麗だったので、降りてきた手柴です。


『 Hydrangea 』
手柴  郁結婚直前  咲き誇る紫陽花が美しい




雨が降りだした。
梅雨空を見上げて、俺はしばし考えた。

あいにく、置き傘がない。

寮まで走るか?
どうせ、今日も一日館内警備で動き回って、ワイシャツは汗だくだ。
洗濯するなら、濡れても一緒だ。

そう考えて、濡れて困る携帯と図書手帳をハンカチで包み、胸に抱えて走り出した。


「待ちなさいよ」


ダッシュ一歩目で、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「帰るんでしょ。入れてってあげる」


振り向けば、傘をぐるぐる振り回す、未来の女性司令が立っていた。


「いいのかよ。俺なんかと相合傘で」

「いいのよ、別に」


そっけなく返された答えに、俺は断れずに、一緒に帰ることにした。
無言で、手を差し出せば、柴崎も無言で傘を差し出してきた。


「あんたのほうが背が高いんだから」


ここで「俺が持たなきゃ、また女性の扱いが、とか言うだろう」という言葉は飲み込むことにする。
一言言えば、倍、いやそれ以上になって返ってくるのが柴崎だから。


降り始めより、いくぶん落ち着いた降りの雨は、静かに傘を叩く。
業務で並んで歩く同僚よりも頭ひとつ小さい彼女が濡れないように、傘を彼女のほうに傾けて歩く。

寮までの道の両側には、自然な雰囲気を大切にした花壇がある。
公の場での茂みは、犯罪の温床になるということで、植え込みの木々は低木に限られている。

その中に、紫陽花の植え込みがあった。
日本原産のその花の最古の色は青色だと言われている。
今は品種改良されて、花の色も濃い青から白、濃いピンクまで、ガクの形もさまざまな種類がある。

一株ごとに種類が違うのだろう。
咲く花の色が微妙に違う。
異なる紫陽花の花を愛でるように、柴崎の速度が遅くなった。


ふと立ち止まる。


じっと紫陽花を見つめている。
俺の遥か下にある、肩がほんの少し揺れた。


「紫陽花の花の色って、その土地の pH に左右されるんだったかしら?」


ああ、そんなことを昔、化学の時間に習ったな。


「酸性度が高いと、青色が強く出て、アルカリ度が高いとピンクになるんだったかな」

それだけじゃないけどな。


「そうだったわね。それに、つぼみの頃は緑で、それが開くにつれて白から水色に移ろって、終わり頃になればなるほど色が濃くなるのよね」

「今は品種改良されて、あまり色も変わらないらしいし、土壌の影響も少なくなったらしいな」

「そう…」


そう、と答えて、再び沈黙が訪れる。
しばらくして、柴崎はくすりと小さな笑いをこぼした。


「ねえ、紫陽花ってあのこみたいね」


それは、もうすぐ結婚して、同じ部屋から嫁いでいく、笠原のことだろう。
憧れの王子様の背中を追いかけて、追いかけて。
今でも追いかけて、その王子様に振り向いてもらったお姫様。

図書隊に入ったときから一緒で、笠原をそばで見てきた柴崎は、ずっと笠原の恋の行方を心配していた。
自分のことのように。
自分のこと以上に。

その笠原が結婚することになったとき、柴崎は喜んで、ばかみたいに騒いで、ひとり泣いた。

「うれしいのよ。笑ってるのよ」

そういいながら、彼女は泣いていた。


「堂上教官に出会って、堂上教官の色に染まっていったのね」


染まった…そういう言い方もあるな。
彼女の王子様が別な男だったら、今の笠原郁はいなかっただろう。
どんな色になっていたか、それを想像するのは…俺には無理だ。


「きっと相手が誰でも、あのこ綺麗に咲いたと思うわ。あたしが咲かせてあげられたと思うわ」


咲かせてあげた。
それは決しておごりや願望ではなく事実だ。

純粋な笠原を、汚さぬように綺麗なままで、堂上教官との恋を成就できたのは、柴崎の尽力が大きいことは、恋に無粋と言われた俺でもわかる。

だから、寂しいのだとわかった。
笠原が嫁いで行くことがうれしいのに、悲しいのだとわかった。


「きっとこれからも、お前の手入れがないと、あいつ、だめだと思うけどな」


空いた手で柴崎の肩をそっと包み込めば、わずかな体重がかけられて、静かな頷きが返された。


「小牧教官も同じ気持ちなんだと思うの。そうね、きっと小姑って感じ?」


図書大からの親友である小牧教官が堂上教官を心配するのも、柴崎を見ていると容易に想像できる。


しかし。
しかし、だ。
小姑発言は、止めておいたほうがいいと思うぞ。


体重をかけたまま、ゆっくりと俺を見上げて、柴崎が微笑んだ。


「紫陽花って花はあんなに綺麗なのに、花言葉がすごいのよ」

「移り気、高慢、あなたは美しいが冷淡だ、無情、浮気、自慢家、変節、あなたは冷たい」


「まるでお前のための花言葉だな」


「ふふふ。そうでしょう。すごくお似合いでしょう」


自嘲の笑いを浮かべて、柴崎は肩に回した俺の手をそっと外した。


「きっと、あのこ、これからも綺麗に咲き誇るでしょうね」

それがうらやましくて、ちょっと憎らしいけど。


そう笑って、「さあ、帰りましょう」と柴崎は一歩を踏み出した。


六月の花嫁は、自分がどれほど美しく咲いているのかなどまったく知らずに、人生最良の日を迎えるだろう。



それを見て、柴崎はまた泣くんだろうな。

「うれしいのよ。笑ってるのよ」

そういいながら…



fin.



あとがき

紫陽花なんてナマモノを使ってしまったから、時期を逃すと up できないので、up しました。
いろいろ不都合な部分はこっそりかやさしく目をつぶってくださいませ。

郁ちゃんの結婚を感慨深く思っているのは柴崎だと思います。
自分のことみたいに、幸せでうれしくて。
でも、素直じゃないから、そんなことは一切外には出さない。
手塚はそばにいて、それをなんとなく感じてくれればいいと思います。
別冊Ⅱで手柴の関係がどうなるかわからないので、現時点での手柴の距離はそんな距離。

「オタクサ」の話は有名だったので、学名に使われているのかと思っていました。
ところが、「オタクサ」はまったくどこにもありませんでした。
Hydrangea (ハイドランジア)とは「水の容器」という意味だそうです。
梅雨にぴったりなのね。
花言葉があまりいい意味でないのも不思議です。
きっと七色に変化する花色に嫉妬した人がつけたのね。

感想をお寄せくださるとうれしいです。
読んでくださりありがとうございました。
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