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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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70000 Hits のキリ番を Get されたじゅんさんのリクです。
リクエストは「郁兄達が登場するお話しがいいなぁ、と。仲良さそうな兄妹なので、郁ちゃんが教官の前で自然に兄ちゃん達に甘えちゃってアホな嫉妬をしちゃうとか」。
郁ちゃんの兄様は、原作では大兄さま、コミックスでは大兄さまと中兄さまが登場していたんですが、どうにもイメージがつかめなくて、苦労しました。
正直、私自身、姉妹だったので、男兄弟のイメージが皆無なのです。
そんなこんなで書きましたので、あれ?って思うところがあっても、温かく見守ってくださいね。

じゅんさん、リクエストありがとうございました。

『Leave my sister alone.』
堂郁   危機と革命の間   いつまでもお前は俺の妹。


図書基地独身寮の共同ロビーがしんと静かになった。
ロビーにいた者の視線は、来客者用応接室に注がれている。

来客者用応接室、といっても個室ではなく、オープンスペースになっていて、共同ロビーに置かれたテーブルとソファより上等な応接セットが置かれている。

そこに座って談笑しているのは、図書基地特殊部隊の紅一点、笠原郁と郁より背の高い男性だった。
寮まで訪ねてくるのは、よほど隊員と親しく近しい人物である。

ロビーにいた者たちは、時折郁の頬を抓ったり、郁の肩を小突いたりする男性をじっと見ていた。


「ああら、あの子ったら、注目されてるのに気づいていないのかしら?」


遠巻きに耳を澄ます隊員たちの間をすり抜けて、やってきたのは、郁と同室の柴崎麻子だ。


「柴崎さんも見に来たの?」


応接室の手前で立ち止まった柴崎に声をかけたのは、小牧だ。
手にはプリンスビールの缶が二つ。
おそらく、これから堂上の部屋で一緒に飲むつもりで、自動販売機にビールを買いにきたのだろう。


「見に来たに違いはないんですけど、笠原に呼び出されたんですよ」

「笠原さん、来客中なのに?」

「ええ。来客中に呼び出したんですよ、あの子ったら」

「へえ……で、誰なの?彼?」


こそりと小牧がトーンを落として柴崎に訊ねる。
柴崎はふふと笑って、大きく首を振った。


「お兄さんですって」

「お兄さんかあ。笠原さん、末っ子だったよね」

「ええ」

「お兄さんがわざわざ寮まで、何の用事だろうね?」

「なんでも、今年のお正月にも帰省しなかった娘に御節を配達しにみえたそうです」

「えっ、今年も帰らなかったの?笠原さん」

「茨城県展でだいぶ距離は近くなったって本人は言ってましたけど、やっぱりまだ覚悟がいるみたいで……」

「そうかあ。母娘って、いろいろあるからなあ」


かわいい恋人とその母親を見ているからだろうか。
小牧は大きく頷いて、応接室を見つめた。


「で、帰ってこなかった娘に食べさせたかった御節をお兄さんに託した、らしいです」

「大事にされてるんだね、笠原さん」

「ええ、家族にも」


柴崎は意味深に微笑んだ。


「その御節の量が、とてもひとりで消費できる量じゃないらしくて、あの子から助けの要請が来たってわけです」

「どこの母親もそんなものらしいよ」


季節季節、寮の中で配られるさまざまなお国名物お家名物を見ていると、母親の子を思う気持ちは量で量れるのかもしれないと思うほど、母親からの荷物の量は半端なく多い。


「ちょうどよかった、小牧教官もご一緒にどうですか?」

「いやあ、俺よりさあ。さっきから、般若の面で見てるアイツを連れてってやってよ」


小牧はゆっくり視線を壁伝いに動かした。
その先にいたのは……。

堂上だった。
応接室からは柱の影になって死角となる場所で、じっと応接室の様子を見つめていた。


「あらあら、大変。あの様子だと、きっと誤解してますね」

「うん。十中八九、そうだと思うよ」


郁が堂上に恋していることは、周知の事実。
そして、堂上もまた郁に恋していることは周知の事実だ。
知らないのは、当の本人たちだけなのだ。

タイミング悪く、いや、タイミングよく、ちょうどビールを買いに来たところで、郁が応接室で男性と談笑しているのを見かけた堂上は、その場から動くこともできず、ただじっとその様子を見ていた。
相手の男性がいったい誰なのかなど、想像することもできないほど、じっと見ていたのだ。


「そうですね。誤解を解いたほうが、よさそうですね」

「頼むね」

「かしこまりました」


にっこり微笑んで、柴崎はつかつかと堂上の隣に立った。


「こんばんは。堂上教官」


男性隊員憧れの柴崎極上の微笑みで挨拶をしているのに、堂上はまったく気づく様子はない。
柴崎は、思い切り堂上の足を踏んだ。


「っつう。気をつけて歩け、って、柴崎か」


踏まれた足の痛みで堂上はようやく柴崎に気づいた。
柴崎は、涼しい顔で堂上に微笑んだ。


「笠原に呼び出されたんで、今からご一緒しません?」


柴崎の言葉に堂上はいぶかしんだ。
いったい柴崎は何をしようというのだろうかと。


「あら?そんな難しい顔しないでくださいよ」

「難しい顔などしとらん」

「さっき、笠原から『応接室に来て』って頼まれたんですよ」

「なら、柴崎お前だけ行けばいいだろう」

「うーん、そうなんですけど。実は、お兄さんが御節を持ってきてくれたんですが、量が多くて一人じゃ食べきれないらしいんです」


兄という言葉を聞いて、堂上の緊張が解けるのがわかる。
柴崎はくっと奥歯で笑いをかみ締めた。
堂上はそれには気づかず、ほっとした口調で柴崎に言った。

「なら、食ってやればいいだろう?」

「そうなんですけど。あたし、あの子みたいに大喰らいじゃないし」

「そうだな」


郁と食事を取ることが多い柴崎とは、食堂で一緒になることが多い。
郁の食に比べて、柴崎の食は細い。
一般女性としてどうなのか、そこまで堂上は知りえない。
堂上の女性の基準が郁になりつつある今では、郁と比べることしか堂上にはできないからだ。


「まあ、仕方ないな」


仕方ないと自分に言い訳がましい言葉を口にして、堂上は柴崎の後をついていった。
柴崎は心の中でくすりと笑いをこぼした。


「柴崎ー!あっ、堂上教官も」


柴崎と堂上の姿を見つけた郁はうれしそうに立ち上がった。
立ち上がるとき、テーブルに膝をぶつけてしまい、テーブルの上のカップが倒れそうになった。
さっと、男性は手を伸ばし、カップが倒れるのを防ぐ。
そして、立ち上がった郁のおしりをぺちりと叩いた。

一瞬、堂上に殺気が立ち上った。

―― 俺だって触ったことがないのにー!

おしりを叩かれた郁は振り向いてべーっと舌を出した。
叩かれたこと自体は大して気にしていない。
そのことが堂上を再びいらっとさせた。

―― 尻を触られたら、少しは怒れ!いくら兄妹でも、大の大人だぞ。

堂上の気持ちなどおかまいなしに、郁は柴崎と堂上に座を勧めた。
気持ちを抑えつつ、堂上は座った。


「柴崎、助かるよー。堂上教官もありがとうございます」


郁が苦笑を浮かべて見る先は、黒塗りの重箱が三つ並んでいた。
重箱には、ぎっしりと料理が彩りよく詰められていた。


「そうだ、紹介します。一番下の兄です」

「初めまして。郁がお世話になっています」


柴崎は極上の微笑みで挨拶をし、堂上は安堵した表情で挨拶をした。
茨城県展のときに郁の大兄は見かけていたが、この兄は初めて見た。
冷静に見れば、郁と似ている。


「だいたい、お前が帰ってこないから、こんなことになるんだろうが」


挨拶が済むと、郁の兄は先ほどの続きらしい小言を言い始めた。


「だってえ。県展のときに大兄ちゃんと話してちょっとは近くなったけど、やっぱりお母さんはまだ遠いよお。大兄ちゃんも帰ってこなくてもいいって言ってくれたよ」

「まったく。大兄はお前に甘いからなあ」

「中兄ちゃんもいいって言った」

「ええ、中兄もかよ」

「うん。ぐだぐだ言うのは、小(ちい)兄ちゃんだけ」

「親父は?」

「お父さんは帰ってきて欲しいけど、お前の気持ちを大事にするって」

「ひでえ。親父、裏切った。暮れに親父はお袋に「帰ってくるように言う」なんて言ってたんだぞ」

「知らないもん」

「もん、言うな」


郁の兄は、そう言うと郁の頬を両側から引っ張った。
うにょーんと伸びた郁の顔を見て、がははと笑った。

―― 兄って、こんなに妹にべたべたするもんか?

堂上にも妹がいる。
しかし、尻を叩いたり、頬を引っ張ったり、そんなスキンシップはあまりしない。
肩を小突いたり、何かと触れ合う笠原兄妹を見て、堂上は眉間の皺を深くしていった。


「一緒に食べていただけますか?堂上教官」


堂上が思いに耽っていると、郁が割り箸を差し出してきた。


「重箱を送リ返すのも面倒なんで」


寮の部屋には、簡易キッチンも冷蔵庫もある。
その気になれば、簡単な調理もできる。
重箱に詰められたものはどれも冷蔵庫で保存すれば、二、三日は持つだろう。
しかし、そうすると、重箱を実家に送り返さねばならなくなる。
近況報告のはがき一枚書くのに何日も悩んだ経験のある郁は、それは避けたかった。
重箱だけを送り返すなどできるわけもなく、当然のように、送り状を書かなければならない。
その文句を考えると、頭が痛くなってくる。
だから、柴崎に助けを求めたのだ。


「お前の好きなものばっか、お袋詰めたんだぞ」


小兄は重箱から伊達巻を取ると、郁の口へと運んだ。
郁はうれしそうに伊達巻にパクつく。
もぐもぐすると、小兄の指ごとぱくりと噛んだ。


「いってえ。お前なあ」


「さっきのお返し」と笑う郁の首を小兄はがっと抱え込むと、ぎゅうぎゅうと締め付けた。
幼い子供がよくやるケンカだ。

図体の大きな大人がやると、一種異様な雰囲気となる。
当の本人たちは幼い頃と同じ感覚でいるから仕方ないのだが。


「お兄さん、離してやってください」


堂上はがたっと立ち上がり、小兄の腕を掴んで止めに入った。
堂上の下では、郁がはあはあと涙目になっていた。

―― うわっ、こいつってこんな顔になるんだ。俺が締め付けたときとぜんぜん顔が違うじゃないか!

本気で組んでいるわけではないから、あっさりと腕は外され、郁はばたりと床に転がった。


「うわあ、悔しい。小兄ちゃんに勝てないなんて!」

「あほか。一度だって勝てたことないだろう」

「いや、ある。あるはず!」

「ないね。俺に勝とうなんて十年早ええ」


小兄が郁のおでこをぴんと弾く。
その行為すら、堂上にはむかむかいらつく原因にしかならなかった。

柴崎は、郁と兄が絡むたびに眉間の皺を増やしどんどん表情を硬くする堂上を面白おかしく眺めていた。

恋する乙女、ならぬ、恋する男子の恋心を。


笠原兄妹の面白おかしい会話を聞きながら、四人で郁の母親特製の御節をいただいた。
重箱から料理を取り郁の口へ運ぶ小兄は、さながら親鳥のようで、運ばれる料理に口を開ける郁は雛のようだ。
楽しそうにうれしそうに兄に運ばれる料理を食む郁を見て、堂上は小兄の場所に立ちたい衝動に駆られていた。

―― いや、兄になりたいんじゃなくて。俺もああやって、笠原の口に…
―― って、俺はいったい何を考えてるんだー!


郁の兄が持ってきた料理は食べきれるわけもなく、柴崎が用意してくれた保存容器に移し入れられた。
綺麗に洗った重箱は、持ってきたときと同じように風呂敷に包まれた。


「郁、今度は帰って来いよ」


小兄は郁の頭をかいぐりかいぐりして、帰っていった。
郁は小兄にやられてくしゃくしゃになった髪のまま、大きく手を振って小兄を見送った。


「よかったわね。お母さん、あんたのこと大好きじゃない」


柴崎が郁の肩にやさしく手を置くと、郁はうんと小さく頷いた。


「よかったな。笠原」


堂上はくしゃくしゃになった郁の髪をゆっくり梳きながら、頭を撫でた。
郁は無言で頷いた。

足元には小さなしずくが落ちていた。

堂上は郁の頭をぽんとした。


fin.

あとがき
70000Hits リクエストにお答えしての SS でした。
タイトルは「妹に手を出すな」、小兄(ちいにい)の気持ちです。
きっと一番下のお兄さんは郁ちゃんを一番手離したくないと思っていると思います。
年が一番近いから、小さい頃は一緒にころころしていたんだろうな。
小兄は一目で堂上が郁ちゃんの憧れの人だって気づきます。
スキンシップが多いのはデフォルトだけど、堂上さん登場後は必要以上に郁ちゃんに絡みます。
べったべたにね、笑。
そのたびに堂上さんは嫉妬嫉妬のアラシに見舞われます。
楽しんでいるのは、柴崎とこっそり見ている小牧さんです。

茨城県展直後のお正月明けの設定です。
茨城県展で少し近づいた母娘ですが、まだ帰省する勇気が郁ちゃんにはありません。
お母さんも自分から会いに行くのは戸惑います。
だから、御節にかこつけるんです。
兄さんたちに「持ってって」って頼むんですけど、結局、小兄ちゃんが行くことになります。

裏設定がありすぎて、本文が不透明は感じに仕上がってしまいました。
リクエストのご希望に沿ったかどうか不安ですが、ご笑納ください。
兄の存在に憧れていたので、兄像を書けて楽しかったです。

読んでくださりありがとうございました。
感想をお聞かせください。
↓ に拍手を置いてみましたのでお気軽にパチしていただけるとうれしいです。

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