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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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昨晩は十三夜。
後の月、と呼ばれ、満月よりちょっと若い月を愛でるのです。
十五夜を見たら、十三夜も。
十五夜だけを見ると「片見月」で縁起が悪いそうです。

金木犀の香りも最盛期を過ぎた頃。
きっとこんな会話をしたんじゃないかなって思いました。


『十三夜』
堂郁   革命~別冊Ⅰ   一緒に月を眺めよう。




日が暮れると、急に気温が下がる。
空はどこまでも深く蒼く広がっていた。
その晴れ渡った夜空にぽっかりと、月が浮かんでいた。

郁は、その月を見上げた。
視力 2.0 の郁には月の中で餅をつくうさぎもはっきりと見えた。
月の光を全身に浴びて、ゆっくり伸びをした。

堂上が復帰した。
同じ空気の中に一緒にいるというだけで、心が踊った。
同じ光景を見るというだけで、胸が高鳴った。

自然に頬がゆるゆると上がるのを感じて、郁はふふふと小さく微笑んだ。

業務中も自然に頬が緩んでしまって、顔を合わせる特殊部隊の連中に笑われた。
堂上と両思いになったことは、復帰当日の横断幕で周知の事実だ。
業務に支障を生じない限り、郁と堂上のことをとやかく言う連中ではない。
郁が堂上の後姿を、嬉しそうに見つめているのを微笑ましく見守っていてくれる。


「こんなに嬉しいんだ」


郁は月を見上げたまま、呟いた。

堂上と気持ちが繋がった。
病室を訪ねるときは、もう上司と部下の関係ではなく、恋人同士の関係になった。
ふたりで一緒にいるときの優しい柔らかな堂上は、彼氏の表情で、郁は嬉しくて恥ずかしかった。
ふたりきりでいることがとても大切だった。

けれど、堂上が図書隊に復帰して、一緒に働くようになると、病室でいるのとはまったく別な喜びを郁は感じたのだ。

追いかける背中が再び自分の前に見えるのだ。
追いつきたくて追い越したくてたまらない背中が自分の前にあるのだ。
恋人の表情は消え、上司の、特殊部隊前線の表情の堂上が眩しかった。


「やっぱり、いいよね、堂上教官」


ねえ、と月に同意を求めるように呟いた。


「そうか、それは嬉しいな」


突然聞こえたその声に、郁は絶叫した。
いや、絶叫するはずだった。
開いた口は堂上の手でふさがれて、郁の口からは「うーーー」という声しか出なかった。
アイコンタクトで、郁は堂上にもう大丈夫だと告げた。


「こんな暗がりでひとりで月なんか見てんな」


堂上は郁の口をふさいだ手をゆっくりと外した。
月に照らされた眉間の皺が深さを増した。

図書基地敷地は、樹木も多く、外灯も最低限。
図書館開館時間外に立ち入る外部者はいない、という前提があるからだ。
終業後にランニングやウォーキングする隊員も少なくないから、基地外の公園よりはよっぽど安全だ。


「だって、月がきれいなんですもの。それに、ここ基地内ですよ。ひとりでいたって大丈夫ですよ」


微笑んで答える郁に堂上は不機嫌な表情のままだった。


「基地内でも、女がひとりで暗がりにいたら危ないだろう」

「危ないって、なにがですか?」


きょとんとする郁に堂上はこれ以上言っても無駄だと、早々にあきらめた。
恋人としてのガードは鉄並みに強固なのに、女としてのガードは薄紙よりも薄くもろい。
「これからゆっくり教えていかなければならんな」と堂上が心の中で苦笑していたことを郁は知らない。


「まあ、いい」


そういって、堂上も月を見上げた。

冴え冴えと澄み渡る夜空に、煌々と月が光る。


「そういえば、今夜って十三夜だったな」


旧暦 9 月 13 日の月。
十五夜の月と並び称される名月。
名残の月。


「十五夜は病院でしたね」


ああ、と低く堂上が答えた。
十五夜の日、堂上はまだ入院中で、病室の窓から郁とふたりで眺めた。
そのときも郁は「きれいですね」とうっとりと月を見上げていた。


「今夜も月見、するか?」


堂上の手が郁の手をそっと包み込む。
手のぬくもりを感じて、郁はその手を握り返す。


「そうですね。十五夜の月見をしたら、十三夜の月見もしないと、片見月って縁起が悪いんですよね」

「そういうこと、よく知ってるな」


暗に、他の事は疎いのに・・・と言われて郁は頬を膨らませた。


「そういう年中行事にうるさかったんですよ、うち」

「いいうちだな」

「そうですかぁ、そうかな?面倒でしたけど」


繋いだ手をぶらぶら振って、一緒に歩く。
寮に続く道の距離などわかりきっている。
いつまでも続いて欲しくて、ふたりとも歩幅が小さくなる。


「体の調子はどうですか?」

「ああ、完全復調とはなかなかいかないな。咄嗟に足が踏み出せない」

「筋力が戻ればきっと大丈夫ですよ」

「そうだな。初心に戻って訓練だな」

「お付き合いしますよ」


にっこり微笑んで郁は堂上を見た。


「もう付き合ってるだろう」


にやりと堂上が微笑み返した。
郁は小首をかしげて、堂上の言葉の意味を考えた。

うーん、と唸った直後、ぼんと音がしそうな勢いで郁の顔は真っ赤になった。
真っ赤になった郁を堂上は満足げに見て、再び月を見上げた。


「これからは、毎年月見しような」

「はい」


ふたりは繋いだ手を引き寄せて、そっと唇を合わせた。




fin.


あとがき
一日遅れました…十三夜。
十五夜も美しいですが、十三夜も美しいです。
空の済み具合や暗さが十三夜の頃は、深いのです。

当麻事件後、堂上と郁が恋人になった直後のお話です。
堂上さんが復帰して、郁ちゃんは本当に嬉しかったと思います。
恋人同士になれたこととは、まったく別な次元で、堂上教官と一緒に図書隊にいることが郁にとってはとても大切なことだと思います。

読んでくださってありがとうございました。
感想をお聞かせくださいね。
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そうですねぇ、堂上が上官として復帰したことが郁はきっととてもとてもうれしかったのだと思います。
かわいいなぁ郁。
そして、しれっと「堂上教官いいよね」っていわれて「そうか、それは嬉しいな」なんて言えちゃうオトナな堂上も好きですv
みさぼ EDIT
at : 2008/10/13(Mon) 22:26:12
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亜生(あおい)
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関東の片田舎に住む。
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