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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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ずいぶん秋の気配が……。

秋といえば結婚式が多い。
欧米では『June bride』が有名ですが、日本では『秋の結婚式』のほうが多いんじゃないかと思います。
お天気がいいとか、祝日が多くて休日が多いとか。

今はいろいろな結婚スタイルがあって楽しそうです。
楽しそうというのは、当人たち以外なんですけどね、笑。


『Guess How Much I Love You』
小毬  別冊Ⅰ  ずっと前から……。



それは先月のことだった。
長い夏休みも終わろうとする残暑の日、毬江が図書館を訪れた。
館内巡回中だった郁がその姿を見つけ、手を振る。
彼女はたたたと郁に駆け寄ると、すばやく携帯の画面を見せた。


『今日、勤務後にお時間ありますか?』


郁は頭の中のスケジュール帳をめくり、今日の予定を思い出す。


「なにもないから、あります」


ゆっくりと毬江にそう告げると、彼女は再び画面を見せた。


『もしできるなら、柴崎さんもご一緒にお願いしたことがあるんです』

「柴崎に聞いてみるね。小牧さんはいいの?」

『小牧さんには内緒です』


小首をかしげて、毬江はいたずらっ子のように笑った。

柴崎の予定も OK ということで、女子寮の部屋で話すことになった。
毬江ひとり増えただけで、雰囲気は立派な女子会となる。


「お願いって、なにかしら?」


柴崎の問いに毬江は答えた。


「結婚のお祝いって何がいいですか?」


毬江は郁と柴崎の顔を交互に見つめ、ぐっと体を乗り出して問いの答えを待った。
郁と柴崎はお互いの顔を見て首をかしげる。


「ちょっと笠原、あんたいつの間にそんな話になってたの?」


話を振られた郁は首がもげるほどぶんぶん首を振った。


「そんな話、ないない。ぜーったいない」

「あら?そうなの?お付き合い進んでるんでしょ?」

「でもでも、けっけっ…結婚なんてない」


えええ、と疑わしげな表情で柴崎が遊ぶ。
柴崎は郁と堂上の間がまだそこまで進んでいないことなど皆目承知だ。
けれど、最近ぐっときれいになり女性らしさを増した親友がおもしろくなかったのだ。


「しっ、しばさきはどうなのよお」


息も絶え絶えに郁が柴崎に反撃するが、到底郁が敵うわけもなく、きれいにその反撃はスルーされてしまった。


「あの!私の同級生なんです」


郁と柴崎の絶妙な会話のテンポに入るタイミングを逃していた毬江があわてて会話に参加した。
あわてると声のボリュームが大きくなってしまうのは仕方のないこと。
自分の声にも驚いた毬江に柴崎はにっこり微笑んで会話の続きを促した。


「それって、大学のお友達?」

「ええ、ゼミで一緒の。来月結婚するんです」

「学生のうちに?」

「はい。授かり婚なんです」


「授かり婚って?」と疑問符を浮かべた郁に柴崎が説明する。


「要するに出来ちゃった婚よ。少子化のご時勢に子供が増えることはいいことだって。子供は天の授かりものってことで、近頃はもっぱらそういうらしいわよ」

「へえ、ものは言い様」

「そういうこと」


大学の所属ゼミの同級生が結婚するというのだ。
新郎も新婦も同級生で、結婚式は卒業してから挙げるとのこと。
ただ、子供が生まれる前に入籍するというので、なにかお祝いをしてあげたいというのが毬江の希望だ。
そこで、先ほどの「お祝いにはなにがいいか」との問いになる。

加えて、その新郎は以前小牧がやきもちを焼いた男子とのこと。
小牧に内緒にするのもわかる気がすると、柴崎と郁は大きく頷いた。


「相手の負担にならない、でも、もらってうれしいものがいいんです」


それに、私の同級生で初めてなんです、結婚するの。
そう付け加えた毬江の声が羨ましそうに聞こえたのは、郁も柴崎も同じだった。


「そうねえ……負担にならずに、でもうれしいものね」

「図書館のみなさんはどうしてらっしゃるんですか?」

「慣例で決まってるのは金一封と図書館マスコット付祝電」

「お式に出れない館員は二次会で寄せ書きと花束贈呈かな」

「そうですか……」


極一般的な答えに毬江が少し残念そうに声を落とした。

そのとき、郁がぽんと手を打った。


「あれがあった!!!」


柴崎も頷いて「ああ、あれね」と微笑む。
毬江はわからずに小首をかしげた。


「あのね、これは女子寮に入ってた子にだけなんだけど、女子寮一同で本を贈るの」


女子寮に入寮していた子が結婚するとき、女子寮でちょっとしたお祝い会を催す。
業務部と防衛部、所属は違えど同じ釜の飯を食べた仲間だ。
共有してきた時間がある。

その会で結婚する子に本を手渡す。
その本は、絵本だったり詩集だったり。
過去には史書を希望した子もいたらしい。


「決まりがあるわけじゃないから、本をリクエストする子もいればお任せの子もいるわ」

「本ですか……いいですね」


彼氏の影響も過分にあるだろうが、毬江の本好きは筋金入りだ。
ただ、人に贈るとなると迷ってしまう。
おすすめの本はたくさんある。
けれど、それが必ずしも相手に好まれるとは限らない。
自分の好みを押し付けてしまうのではないかとの不安がよぎる。


「当たり障りがなくて、でも捨てられちゃわなくて大事にしてもらえて……」


ぶつぶつとつぶやいて、頭の書庫を漁っているであろう毬江の表情がかわいらしくて、郁と柴崎は楽しそうにしばらくそんな毬江を見ていた。
結婚が夢物語で薔薇色に輝いて見えているであろう毬江を羨ましんでいた。


「ああ、見つからないです」


しばらくして毬江はうなだれてしまった。
思い浮かぶ本はたくさんあった。
けれど、それが結婚のお祝いとしてどうなのか、判断がつかなかったのだ。


「おすすめ、ありませんか?」


考えても思いつかないので、毬江は膝を乗り出して二人に迫った。
柴崎は人差し指を頬の横に立てて、ちちんぷいとやりそうな表情をする。


「あたしたちが贈った本の中だったら、ここらかしら」


そう言って柴崎が本棚から数冊の絵本を取り出した。

THE Rabbits'Wedding』
『Guess How Much I Love You』
『100万回生きたねこ』
などなど。


うわっ、そこで原書出してきますか!

郁の心の声だ。


「原書はあたしの趣味」


郁の心の声に答えるように柴崎が本を毬江に差し出す。
丁寧に本を受け取った毬江はぱらりと開いた。


「それは邦題が『どんなにきみがすきだかあててごらん』よ。『しろいうさぎとくろいうさぎ』と並ぶうさぎ絵本のベストセラーね」

「やさしい絵だよね」

「ほっとするタッチでね」

「そう。でもって、結婚のお祝い本でもベストセラーよ」


丁寧にページを捲る毬江の手が止まった。
ゆっくり本を閉じると、毬江はハンカチを目元に当てた。


「毬江ちゃん、どうしたの?悲しかったの?」


悲しいお話じゃないはずなんだけど……
郁がおろおろすると、目元からハンカチを外して毬江が遠くを見つめた。


「私、この本、小牧さんにもらったんです、たぶんすごく小さい頃」


毬江の母親と小牧の母親が親しかったせいで、小牧は幼い頃から毬江の面倒を見ていた。
小牧は一人っ子だったし、毬江も一人娘だったから、お互い兄と妹のような感情でいた頃だ。

毬江は小牧に本を読んでもらうのが好きだった。
その中でも取り立ててお気に入りだったのが
『どんなにきみがすきだかあててごらん』
だった。

と、思い出した。
もともとは小牧の持っていた絵本だったが、あまりに毬江が気に入ったからと小牧が毬江に新しい本を買い与えた。
いつでも読めるように、と。

けれど、毬江が自分で本を選び少し背伸びしだした頃には、絵本はどこか幼さを感じて、本棚にしまいこんでしまった。


「大好きだったのに……どうして今まで忘れていたんでしょう」


ページを捲るたびに、毬江の今は聞こえない耳に懐かしい小牧の読み聞かせる声が聞える。
ゆっくり、優しく。


「だいすき」


小さく毬江がつぶやく。
柴崎と郁はただ毬江を優しく見守っていた。

静かで優しい時間が過ぎ、毬江が顔を上げた。


「これにします」

「うん」


毬江がにっこり微笑むと、待ってましたとばかりにテーブルの上にお菓子が用意された。


「相談も済んだから、おしゃべりしましょ」


年の差はあれど、女の子が三人集まれば姦しいのはいずこも同じ。
わいわい、きゃいきゃい、とおしゃべりが弾んだ。


それからしばらく経って、小牧が毬江の部屋を訪ねた。
本棚の一番見えるところに

『どんなにきみがすきだかあててごらん』

が飾ってあった。
懐かしくて一瞬手を伸ばした小牧は、けれど、本を手に取ることはなかった。
その代わりに、伸ばした手を毬江の頬に沿わせた。

まるで、毬江に問うように。


どんなにきみがすきだかあててごらん。




fin.

あとがき
読書に秋だなあと思ってふと書きました。
絵本は好きです。
読むというより観る。
本当は飾っておきたい。
スペース上の問題で本棚に入れっぱなしですが。
すごく残念。

結婚する子に絵本を贈る習慣は、実は勤めていた会社の習慣です。
寿退社がまだ主流だった頃に、花束と一緒に贈りました。
本文中の三冊が定番。
一番人気は「しろいうさぎとくろいうさぎ」。
今回取り上げた「どんなに……」はまだマイナーでした。

毬江ちゃんは郁ちゃんと柴崎と知り合ってから年齢相応になったと思っています。
それまでは背伸びしてたんじゃないかなって。
小牧さんに合わせようと、小牧さんの年齢に届こうと必死だったと思います。

読んでくださりありがとうございました。
感想などお待ちしています。
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