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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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『七夕の願い事』にいただいたコメントから思いついた SS です。
そうだよなあ、と思いました。
進藤一正に頑張ってもらいました。


『もうひとつの願い事』
堂郁  七夕の願い事の続き  願い事は叶いますか?




終業後の特殊部隊事務室は、賑々しい。
訓練と警備と哨戒と、それぞれの場所から戻ってきた隊員たちが、その日の日報を記し、翌日の予定を確認していく。
無駄口を叩くばかりではないが、やはり終業の安堵さから、口数は多くなる。


郁も今日の業務を終えて、日報を書いていた。
報告と反省と。
書くことは難しいことではないが、文章にまとめると言う点の難しさから、郁の日報に費やす時間は、他の隊員たちの倍はかかる。

うーんうーん、とうなりながら、日報と格闘する郁に向かって、「お疲れさん」と声をかけて帰宅していく隊員。

それは、いつもの光景なのだが、今日はそれに一言追加されていた。

「おい、ちゃんとお願い事、書いてこいよ」


うなりながら、郁は「はい」と返事を返す。
頭の中は日報のことでいっぱいなのだから、その返事は「生返事」である。
意味など考えずに、ただ「はい」とだけ返していた。


と、進藤が、郁の肩をぽんと叩き

「お疲れ。ちゃんと願い事は書いてこいよ」

と声をかけた。


ひょえ?

今まで「はい」と返事をしていた郁が急に素っ頓狂な声をあげて、顔をあげた。
その顔を見て、進藤はもう一度同じことを繰り返した。

「だから、ちゃんと願い事、書いてこいよ」


進藤とは、昼休みに七夕飾りの下で、会っている。
そのときに、進藤の目の前で、郁は願い事を短冊に認めていた。

「検閲がなくなりますように」

それを笹に下げて、郁は満足して七夕飾りを見上げたのだ。
その光景を進藤は、手塚と柴崎と一緒に見ている。

なのに、この言葉はいったい…

日報をそっちのけで、郁はしばらく考えた。


あたしの願い事って、他にあったっけ?


そして、ひとつの願いに行き着いた。


「えええ!そんなあああ!!!」



郁の叫びに、真っ先に反応したのは堂上だった。


「笠原、なんだ?」


「いえ、あの…なんでもないです」


我を取り戻して、郁は着席した。
そして、そっと進藤をうかがった。


「進藤一正、ご進言はありがたいんですが、あの七夕飾りって、一応図書館のもので、公共物扱いですよね。それに、私事(わたくしごと)を書くのは…あの…よくないって言うか、はばかられるっていうか…」


ごにょごにょと言葉を濁しながら、郁は真っ赤になりながら、小声で進藤に伝えた。

その様子を島ひとつ離れたところから見ていた堂上は、面白くなさそうに、郁と進藤の様子を窺った。
それに気づいた進藤は、一歩郁に近づき、腰をかがめて、そっと話す。


進藤一正、それは近づきすぎです!


そう叫びたいのを必死に堪えて、堂上はつかつかと郁のそばへと歩み寄った。


「どうしたんだ、笠原」


にやにやする進藤と真っ赤な郁。
どうにもこうにも、堂上は落ち着かなかった。
それを察している進藤のにやにや度は加速度を増す。


「いやな、笠原がロビーに飾ってある七夕飾りは公共物だから、自分のお願いは書けないと、な」


かわいそうだよな…

そう言外に忍ばせて、進藤は苦笑した。


「進藤一正、それ違いますって。あたし、ちゃんとお願い書いてきましたから」

「『検閲がなくなりますように』だろ。それは、図書隊全員の願いであって、お前の願いじゃないだろう」

「いや、あたしのお願いですって。本を守りたくってここにいるんですから」

「いやいや…」


進藤も郁も一歩も引かないやりとりがしばらく続いた。

進藤がふーと一息入れたのを機に、堂上が二人の間に割って入った。


「笠原、進藤一正がこうまで言ってくれるんだ。いいんだぞ、お前個人の願い事書いてきて」


その声に甘さが混じったのは、予想以上だった。
進藤は、自分の意図した展開に、心の中でほくそ笑んだ。





急かされるように日報を書き上げた郁は、半ば無理やり、ロビーの七夕飾りの下に連れていかれた。

誰に?
堂上にだ。


嗾けた進藤は、廊下を引きづられるように歩いていく郁の姿を満足気に見送った。


「一年に一度の七夕だ。お前の願い事だって、願っていいんだぞ」


「…でも…」


「いいから、書け」


堂上にそこまで言われたら、郁は書くしかない。
真っ赤になって、短冊を一枚取り、マジックで大きく書いた。


『王子様に会えますように』


じっと郁の手元を見詰めていた堂上が、いきなり一歩下がって後ろを向いた。
そして、郁が飾った一番高いところにある星を眺めて、深くため息を吐いた。

進藤一正…
やられた。


郁は、なるべく人目につかない、葉陰を探して、その短冊を下げた。
そして、やはり一番高いところに飾った星を見つめた。





「済んだか?」


沈黙が破られ、郁は小さく「はい」と返事をした。

二人並んで、七夕飾りを見上げた。
ぽんと堂上の手が郁の頭に置かれる。


「お前の願い事、叶うといいな」


それはあの日と同じ言葉。


郁はうれしくなって、「はい」と元気よく返事をした。



短冊は風もないのに、ひらひらと揺れた。


fin.


あとがき

『七夕の願い事』の続き、という形で書きました。
進藤一正に頑張ってもらいました。

きっと、お昼休みに郁が書いた短冊のことは特殊部隊に広まっていて、
「なんで、あいつ自分の願い事書かないんだ?」
「書けばいいのに…」
「いや、書いてくれ。早く王子様に会ってくれ」
てなわけで、事情に詳しい進藤さんがその役を背負わされた、というか、
進藤さん自ら買って出てくれたってわけです。
いい人だ、進藤さん。

郁の願い事は『王子様に会えますように』だと思いました、というコメントをいただいて、
そうか!と思ったのが始まりです。
郁にとって、このふたつのお願いは、どちらも大切だから、どちらも外せないかなと。

郁の願いが叶いますように。

堂上はなんて書いたのかな~?
「早く見つけろ」なんて書いてたら、小牧がからかいそうです。

感想などお待ちしています。
読んでくださりありがとうございました。
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