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図書館戦争に愛を込めて☆熱く語らせていただきます。堂郁、手柴中心二次創作サイトです。
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六月一日……衣替えでしたね。
暑くないし、蒸さないので、未だに長袖着用です。

私が経験した衣替えは、長袖シャツが半袖シャツになるくらいでした。
冬服と夏服の両方があるがっこに結構憧れました。

夏服になるとなぜか気になるのが、胸元です。
開襟だし、クールビスになってから男性もノーネクタイで第一ボタンがばりんちょだし。

今回もR18でお願いします。
内容とそこからつながることがやっぱり大人な方にわかっていただきたいということで。

『Waffle Vol.2』 R18
郁+α   別冊Ⅰ   気をつけなくっちゃ!


「あっつぅ」


Tシャツの首を行儀悪く引っ張って、ぱたぱた風を送り込む。
汗でべたつく胸元に初夏の風が入り、郁は気持ちよさげに目を細めた。

いきなり、どんと首根っこを掴まれる。
背中には、汗が引いて冷えた温度から、生暖かな人の体温を感じる。
ついでに、ずしりとした重みが肩に圧し掛かった。


「有馬さん、重いです」


振り返りもせず、背中に圧し掛かる人物の確認もせず、郁はむっとして背中の人物に文句を告げた。


「なあんだ。ばれちゃった。面白くないの~」

「こんなことするの、有馬さんくらいしかいません」

「そう?堂上くんはしないの?」

「しません!」


くすくす笑いながら、有馬は郁の背中から離れた。
郁はその場からスタートダッシュで駆け出したかった。
しかし、背中から離れた有馬はがっしり郁の腕を掴んでいて、それは叶わなかった。


「お疲れ様でした」

「お疲れだったね~」


隣を歩く棚橋が微笑んだ。

今日は防衛部訓練所女子更衣室の清掃当番だ。
特殊部隊所属の郁には、特殊部隊に女子更衣室が別途用意されているが、時々防衛部と一緒に訓練するときには防衛部の女子更衣室も使うことがある。
だから、と時々手伝うことにしていた。

ちょっと動いただけでも、汗ばむ季節になった。
清掃前に着替えたTシャツは、じっとり汗で濡れていた。
今しがた掃除したばかりの更衣室で、郁たちは着替えた。

景気よくTシャツを脱いで、タオルで身体を拭く郁のうなじを有馬が、つん、とつついた。


「ひゃあ」


子猫の鳴き声のような、妙な悲鳴を郁が上げた。
有馬はその悲鳴を楽しむかのように郁のうなじを、つんつん、つついた。


「そろそろ気をつけなよ、笠原」

「はい。気をつけてるんですけどねえ」

「って、あんたが気をつけるって言うか、気をつけてもらうって言うか」

「気をつけてもらってもいるんですけど、あたしに集中しちゃうんですよ」

「?」
「?」


微妙にかみ合わない会話に、有馬と郁はお互いの顔を見合わせて小首をかしげた。
どこかおかしいと思いながらも、細かいことには無頓着のふたり。
そのまま会話を続けた。


「だからあ、あんたじゃなくて、堂上くんが気をつけるんだってば」

「教官も気を使ってくれるんですよ」

「夏服は結構胸元開いてるから」

「そうなんですよ」

「ほら、キスマーク!」
「虫刺され」


二人の声が重なった。
それまで黙ってふたりの会話を聞いていた棚橋は思い切り噴出した。
堂上と付き合いだして、恋人らしい付き合いもそれなりの郁だが、まだそちら方面には初心(うぶ)で『キスマーク』の単語だけで、真っ赤になってしまった。


「だって、ここ。赤くなってるよ。髪で見えるか見えないかのラインで。どう考えたって、キスマークにしか見えないって」

「昨日の書庫整理で、虫に刺されたんです。今シーズン初虫刺されなんですよ。痒いんです」

「ええ、怪しいなあ。ほんとに?」

「本当です」

「ふーん。堂上くんとそういうお付き合いしてるんでしょ?」


堂上と郁が『恋人』として付き合っていることは、特殊部隊のみならず防衛部でも、図書基地公認の事実だ。
いまさらごまかすわけにはいかなかった。


「そりゃ、まあ。それなりに……です」


しどろもどろになりつつ郁は頷いた。


「なら、キスマークのひとつやふたつ、あるでしょ?」


有馬の突っ込みに郁はうーんと考え込んだ。

何度か胸にうっ血が散ったことはある。
けれど、それはごくたまにで。
本当にごくごくたまにだった。


「ありますけど、でも、めったにありませんよ」


ちょっと泣きそうな表情で郁が答えると、棚橋が助け舟を出した。


「有馬ぁ、あんたの彼氏が付けすぎるんだって」


そして、有馬の胸のうっすら赤みの残りをとんと押した。
棚橋の指先に視線を移した郁は、有馬の胸に咲く花びらを何枚も見た。

鎖骨の下あたりに、何枚もの花びらが舞っている。
鎖骨の枝に咲く花のようだ。


「体質にもよるんだよね。あたし、うっ血しやすいから、残りやすいんだ」

「そうなんですか……」

「うん。きっと、笠原はキスマークが残りにくい体質なんだよ」


フォローなのかそうでないのかがよくわからないフォローを有馬が郁にする。
考えなければキスマークがあったかどうかわからないほど、きっと郁の身体はキスマークを残しにくいのだろう。


「有馬の身体から、キスマーク消えたことないよね」

「そうそう。付きやすくて消えにくい。最悪だよ」

「で、あんたはつけ返さないの?」


助け舟のついでに、棚橋が有馬に矛先を向ける。
親友だから、こういったことの突っ込みに容赦はない。


「アイツの身体ってさあ、吸い付いたって残んないんだよ」

「男の人の肌って、女の人の肌より硬いからね」

「うん。酸欠になるくらい吸ったのに、ちょっぴり赤くなる程度」

「わかるなあ」


恋人のいる棚橋も有馬と同じ経験をしたらしい。


「悔しかったから、噛み付いてやった」


有馬の台詞に郁はごほっと息を吐いた。
無意識とはいえ、初体験で堂上の肩に歯形を残した郁だ。
自分の行動を見透かされたようで、焦った。
有馬にも棚橋にも、郁の咳き込みは笑い過ぎに映っていた。


「うわあ、痛そう」

「くっきり歯型を残してやりましたのよ」

「効果は?」

「なかった!そのときはすごく痛がったし『敵取ったり』って思ったんだけど、その次のとき大変だった」

「私、そのときのこと覚えてるかもしれないなあ。大変だったとき、お風呂も入れなかったよね」

「だって、胸一面キスマークだよ。いくらタオルで隠そうとしたって隠し切れない面積で」

「そうそう。あたしの背中にへばりつくみたいにして入浴時間ぎりぎりに入ったよね」


昔話に花を咲かせる先輩二人をよそに、郁は制服に着替えた。
制服は衣替えをして、夏用の開襟半袖になっている。
鏡の前で、シャツの襟を正すと、ちょうど襟の合わせ目が胸の窪みに合わさった。
指一本襟を下に下げると、鎖骨が現れた。

ふと、郁は思い出した。
春、桜の頃、ちょうどここに花が散っていたことを。


『桜より、ずっと綺麗だ』


堂上が胸に散る花びらをひとつひとつ撫でながらそう呟いていた。


「かーさはら、そんな微妙なところに指置いて物思いに耽ってると、まるで『ここにキスマーク付けられたんです』って言ってるみたいよ」


ずしりと有馬が背中に圧し掛かり、つんと郁の胸の窪みを押した。


「気をつけるのよ」


恋の先輩なりのアドバイスなのだろう。

衣替えの直後、女子トイレはキスマークの話題に事欠かない。
思いのほか、制服の開襟の開きが深く、見えてしまう。
ファンデーションで隠す方法だの、絆創膏を貼るだの、対処方法の交換会となるのだ。


「虫刺されもね。『虫刺され』って、キスマークの言い訳によく使われるから、そんなこと言っても誰も信じないからさ」


いつの間にか着替えた有馬と棚橋はそう言い残し、ひらひら手を振って更衣室を出て行った。
郁は「はい」と返事をして、もう一度鏡を見た。


「うん、気をつけなくちゃ。ってか、気をつけてもらわなくちゃ」


そう呟いたものの、このことをどうやって堂上に告げたらいいのか、それからしばらく郁は悩むこととなる。


fin.

あとがき
Waffle 第二弾です。
『Waffle』は、おしゃべりという意味です。

衣替え直後って、胸元気になりませんか?
キスマーク云々ではなく、お手入れって部分で。
胸にボリュームがない子はそれに加えてシャツとかの浮き具合が非常に気になる、笑。

郁ちゃんってキスマーク残りやすいかな、と思いました。
知らないうちにあざ作ってるし(訓練中だから当然かもしれないけど)。
あざができやすいほうがキスマークも残りやすいそうだし。
堂上さん、郁ちゃんのことむさぼってそうだし、爆。

このお話、書いたときは桜吹雪のころでした。
桜の花びらが車(白)のボディに張り付いて綺麗だったから。

みなさんも露出度の増す夏にはご用心を♪

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関東の片田舎に住む。
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